コラム

ライクス|ピノタージュにこだわる若手つくり手たちが醸すワイン ~「DISCOVER SOUTH AFRICA TOKYO 2024」レポート④

WOSA JAPAN(Wines of South Africa、南アフリカワイン協会)は2024年10月22日、年に一度の南アフリカワインの大試飲会「DISCOVER SOUTH AFRICA TOKYO 2024」を開催した。

今回は、出展されたワイナリーの中から、来日していたタイガー・ドリトン氏から聞いた内容を中心に、ライクス(Rijk’s)とそのワインを紹介する。

ライクスとは

1996年創業のライクスは、ワインの銘醸地として知られるスワートランドに隣接した内陸に位置する、タルバッハ(Tulbegh)にある家族経営のワイナリーだ。タイガー氏は、自身のワイナリーについて、「周囲を2000m級の山々に囲まれています。冬には雪が降りますが、ぶどうの生育期には気温が30~35℃に達することも多いので、早熟な品種であるシュナン・ブランとピノタージュに絞って栽培をしています」と説明してくれた。

来日していたタイガー氏は、創業者ネヴィル・ドリントン氏の息子であり、2020年1月から2代目として栽培や醸造、併設するホテルの経営まで、業務全般にわたってライクスを支えている。まだ20代だが、子どものころから父の仕事を手伝っていたそうで、輸入元のラフィネは「栽培から醸造、 営業、マーケティング、経営に至るまで豊富な知識を持ち、ホテル経営に至るすべての責任者としてその敏腕ぶりを遺憾なく発揮しています」とタイガー氏のことを紹介している。

2021年に栽培責任者のダニエル氏(写真右)、2022年にワインメーカーのアドリアーン・ヤコブス氏(写真左)が参加し、次世代のライクスを支えている。

ライクスのワイン3本

今回のワインについてタイガー氏は、「赤身の肉やジビエ料理と相性がいい」と説明してくれた。いずれも凝縮感や満足感はあるが、飲み飽きないエレガントなつくりのワインだと感じられた。

輸入元のラフィネは、「全てのワインを自社セラーでじっくり瓶熟成させてからリリースしているため、ケープタウンの高級レストランや各国のソムリエから絶大な支持を得ています」と紹介している。
(【テイスティングノート】は、いずれもラフィネの商品紹介より)

ピノタージュ・タッチ 2022

会場でテイスティングをした際にはまだ価格が確定しておらず、後から参考上代が4000円になったと聞いて驚いたワイン。筆者自身が購入したいと思える、コストパフォーマンスのよい1本だ。発酵が終了する前に、雑味が出ないように果皮を優しくプレスして、樽にて酸味を和らげるマロラクティック発酵(MLF)を採用。フレンチオークの古樽で20カ月間、熟成している。

【テイスティングノート】
アロマには、熟したブルーベリーやプラムの香りがブラックペッパーと微かなココアパウダーのニュアンスと共に感じられる。パレットはリッチで華やか。タンニンはしなやかさとしっかりとした骨格が共存し、豊富な酸と芳醇なフルーツ感が全体を包み込む。

品種:ピノタージュ100%
アルコール分:14.5%
生産地:タルバッハ
参考上代:4000円(税別)

ピノタージュ プライヴェート・セラー

会場では2019ヴィンテージが出されていたが、今回発売になるのは2021ヴィンテージ。会場でテイスティングしたワインも酸味と果実味のバランスが良いきれいなワインだったが、2021ヴィンテージは「最も繊細」と表現されているので驚きがありそうだ。発酵前に色と果実味を抽出するため、48時間の低温浸漬をしている。発酵が終了する前に雑味が出ないように果皮を優しくプレスして、樽にてMLFを行う。40%に新樽を使用し、60%をフレンチオーク樽、40%をアメリカンオーク樽にて22カ月間熟成させて完成する。

【テイスティングノート】
深紅の色合いで、アロマにはサクランボ、イチゴ、クランベリーなどの赤系のフルーツが豊富に香り、クリーミーでリッチなパレットへ余韻となってつながる。タンニンはシルキーさと凝縮感が見事に共存し、素晴らしいバランスをワインに与えてくれる。プライベート・セラー史上、最も繊細なピノタージュ。

品種:ピノタージュ
アルコール分:14.5%
生産地:タルバッハ
参考上代:6800円(税別)

ピノタージュ リザーブ 2019

ライクスの果実と職人技の頂点に立つワイン。発酵前に色と果実味を抽出するために48時間の低温浸漬を行う。発酵が終了する前に雑味が出ないように果皮を優しくプレスして、樽でMLFをした後、フレンチオーク樽(新樽60%、2年樽40%)にて22カ月間熟成し、厳選した20樽をブレンドする。

【テイスティングノート】
重層的で非常に凝縮感のあるワイン。アロマにはバラ、レッドチェリーやブラックチェリー、そして微かにリコリスを感じることができる。口に含むとカシス、プラムなどのより濃いフルーツ感に包まれ、タンニンはシルクのようにスムーズで妥協のないフィネスとエレガンスが見事に調和し、長い余韻に浸らせてくれる。

品種:ピノタージュ
アルコール分:14.5%
生産地:タルバッハ
参考上代:11500円(税別)


【関連記事】「DISCOVER SOUTH AFRICA TOKYO 2024」レポート
スティーンバーグ|南アフリカワインの歴史と共に歩むワイナリー
ハッシャー|ヘメルアンアードに惚れこんで移住! 農場を愛する一家が生み出すワイン
デルハイム|南アのワイン業界に多くの伝説を残すワイナリー

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ