ワイン「新興勢力」、アメリカの赤ワイン
世界各国の赤ワイン事情をまとめていくこのシリーズ、今回はフランス、イタリア、スペインに次ぐ、ワインの「新興勢力」と言われているアメリカを取り上げる。
ちなみにヨーロッパ以外のワイン「新興国」のことは、「第3世界」または「ニューワールド」と呼ばれている。
アメリカ国内での生産量は、カリフォルニア州が90%を占める。それ以外に生産が盛んな州は、オレゴン州、ワシントン州、アイダホ州、ニューヨーク州が挙げられる。
アメリカ各州の赤ワインの特徴
カリフォルニア州
カリフォルニア州の赤ワインには、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワールといった品種のぶどうが主に使用される。
気温が高いことから、糖度が高く、酸味の少ない、重厚な赤ワインが出来上がる。
中でも、ピノ・ノワール種はジャムのように豊潤で、濃厚な味わいを醸し出す。
カリフォルニア州のワイン産地としてはナパ・バレーが有名。だが、実際の生産量はそれほど多くなく、カリフォルニア州の中で4%程度を占めるにすぎない。
ナパ・バレーで生産されるワインの中には、もちろん高品質なものがあるが、価格過剰気味のものもある。
ワシントン州
ワシントン州は、北部がカナダ国境と接するアメリカ西海岸に位置する。夏季の平均日照時間は17時間におよび、冷涼な気候と合わせて、ぶどうの生育には最適な環境が揃っている。
ワシントン州でつくられるワインは、ぶどうを複数品種ブレンドすることで、味に幅を持たせている。言うならば、フランス産とオーストラリア産の赤ワインを掛け合わせたような味とでも言おうか。
また、ワシントン州のレッドマウンテン地区では、カベルネ・ソーヴィニヨン種による赤ワインが生産されている。重厚な味わいと長いストラクチャーが特徴の赤ワインだ。
同地区のテロワール(土壌)はアメリカの中でも随一と評価されている。
オレゴン州
オレゴン州は、カリフォルニア州とワシントン州に挟まれたアメリカ西海岸に位置する。小規模なワイナリーが多く、高品質なワインの生産に手間を惜しまない。
ヨーロッパの同品種で醸造される赤ワインよりも、重厚かつフルーティである。近い将来、品質においてフランスを凌ぐ日が来るかもしれない。
アイダホ州
アイダホ州はロッキー山脈にある州で、北はカナダ国境に接する。赤ワインは酸味がしっかりした凝縮した風味が特徴だ。アイダホ産の赤ワインにこれまで注目してこなかったワイン愛好家も、ひとたび口にすれば、その認識は変わるだろう。
ニューヨーク州
ニューヨーク州は大西洋に突き出るロングアイランドから、西は5大湖のオンタリオ湖、エリー湖まで広がる広大な州だ。
それでもニューヨーク州でのワイン生産量の国内比率は、カリフォルニア州の90%に対し5%にとどまっている。
ロングアイランドは、質の高いメルローが生産され、気候の特徴から「ニューヨークのボルドー」とも呼ばれ、近年注目されている。
ただし、カリフォルニア赤ワインのような重厚なスタイルとは違い、比較的若くてエレガントなスタイルが特徴だ。