コラム

“極端な天候”に襲われた2016年のブルゴーニュ。ワインの出来栄えはどうなった?

   

ブルゴーニュワインのノウハウや伝統の継承などを目的とするブルゴーニュワイン委員会(BIVB)が、ワインの出来栄えを左右する2016年のブルゴーニュの気候について2016年12月12日付のプレスリリースで公表した。

ぶどう栽培にとっては悪天候の1年となり、ぶどうの収穫量は「過去20年で最も少ない収穫量の年のひとつ」になったというが、品質の高さでは自信をのぞかせている。

2016年のブルゴーニュはどのような天候になったのか、ブルゴーニュの地区ごとにワインの出来栄えはどのようになったのか、詳しく紹介していこう。

Sur la route des vins de Bourgogne

冬と春には日照不足に

ぶどうの木が眠る冬。2015年12月~2016年2月の3カ月間は例年よりも気温が高く、1900年以来、最も気温の高い年となった。さらに降雨量も多く、日照時間が短い地区が多かった。

降雨量と日照時間の影響が特に大きかった地域として、ブルゴーニュワイン委員会は次のようなデータを紹介している。

《1月の降雨量》
・ボーヌ:例年比+92%
・リュリー:+53%
・マコン:+72%

《2月の日照時間》
・ボーヌ:例年比-41%
・マコン:-33%
・オーセール:-27%

《4月の降雨量》
・ボーヌ:+100%以上
・ディジョン:+100%以上
・マコン:+68%
・リュリー:+50%

《5月の降雨量》
・シャブリ:+214%
・サン・ブリ:+173%

Réparation des piquets, fils....

春には霜と雹の影響も

記録的な暖冬から始まったブルゴーニュの2016年も、3月を過ぎると例年よりも気温が低下。ヨンヌでは例年の20%以上も気温が下がった。ただし3月末の気温は例年を上回り、ぶどうの発芽は4月初めごろから始まった。発芽の中間期は4月中旬となり、過去10年の平均と近いタイミングとなった。

しかし、ぶどうの木が休眠から覚めたところを襲ったのが、4~5月にやってきた雹や霜だ。4月13日には、マコネ南部の一部の畑が雹の被害を受けた。5月13日にはヨンヌを、5月27日にはシャブリ、グラン・オーセロワ、マコネを雹混じりの雷雨が襲い、大きな被害を与えることになった。

影響を受けた地域は、グラン・オーセロワからコート・シャロネーズ北部までの数千haに及んでいる。「複数の気象要因が重なったことが被害を大きくし、100%に近い湿度と凍てつくような風によって芽は急速に凍結しました。翌朝に太陽が出たことにより、放射冷却で凍結はさらにひどくなりました」と説明している。

La vigne en hiver, à Thésée-la-Romaine (Loir-et-Cher).

太陽と温かさを取り戻した夏

6月21日以降の天候は回復し、7月からの夏の気温は例年並み、もしくはわずかに高い水準になった。ぶどうの最初の開花は6月中旬とここ数年で最も遅かったものの、全体的には早く開花が進んだという。

夏場の降雨量は、7月にサン・ブリ・ル・ヴィニューで-68%、8月には各地で-31~71%となった。9月に入っても雨不足は継続。ブルゴーニュ全域で気温は例年より10%ほど高くなり、暑い夏となった。

一方、夏の日照時間については、7月のコート・ドールを除き、例年を大きく上回ることとなった。

《8月の日照時間》
・ヨンヌ:+24%
・コート・ドール:+24%
・ソーヌ・エ・ロワール:+29%

《9月の日照時間》
・ヨンヌ:+15%
・コート・ドール:+19%
・ソーヌ・エ・ロワール:+24%

日差しと温かさに恵まれた天候は10月末まで続き、ぶどうの成熟は好条件の中で進んだという。

Beaune, Bourgogne

つくり手の個性を感じられる品質の高いワインに

ブルゴーニュワイン委員会は、2016年の天候について「両極端」と評価し、「ブルゴーニュの造り手と畑を試す1年になったと言えるかもしれません」と表現している。

この天候はブルゴーニュワインに与えたのは、悪い影響ばかりではないようだ。ブルゴーニュワイン委員会は、ワインメーカーの個性がいつになく現れる、高い品質の出来のワインができたと自信を覗かせている。

ブルゴーニュワイン委員会がYouTubeに投稿した動画では、各地域のワインの出来を以下のように説明している。

●ブルゴーニュ北部(シャブリ、グラン・オーセロワ)
十分な糖分があり、味が濃縮されたワイン

●ボーヌ
赤ワインはアロマを感じるクリーンな味わい。スムーズでまろやかなタンニンを持つ。白ワインは芳醇でフルーティー

●コート・シャロネーズ
ストロベリーやチェリーのアロマが豊かで、シルキーなタンニンの赤ワイン

●マコネ
成熟して濃縮されており、バランスの良い酸味のワイン

珍しい天候が2016年のワインにどんな影響を与えたのか、興味がわくデータとなった。

<関連リンク>
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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ