ワインのことを「スティルワイン」と呼ぶことがある。
スティルワインとは、醸造方法によって分類したワインの種類のこと。発泡が心地よい「スパークリングワイン」、アルコール度数が高い「フォーティファイドワイン」、スパイスやハーブなどを加えた「フレーバードワイン」に対して、スティルワインにはそれらに該当しない非発泡性ワインが含まれる。赤、白、ロゼといった“普通のワイン”を意味する言葉だと考えてもいいだろう。
それではスティルワインにはどんな意味があり、どのような条件を満たすとスティルワインと名乗れるのだろうか。詳しく取り上げてみよう。
スティルワインの意味・定義とは?
スティルワインを英語で記載すると「Still Wine」となる。学校の英語で「still」=「いまだに」と習った人も多いと思うが、stillには「静か」「動きがない」「平穏」といった意味があり、「泡立たない」「炭酸が入っていない」といった意味でも使われる。
スティルワインのアルコール度数は9~15%ほど。20℃のときのガス圧が一定以下(ヨーロッパでは1気圧未満、日本では0.5気圧未満)のワインがスティルワインに当たる。
スティルワインはさらに、圧搾方法や使用するぶどう品種などによって、赤ワイン、白ワイン、ロゼワインといった種類に分類できる。
赤ワインの製法・製造工程
赤、白、ロゼといったワインは、同じぶどうからつくるのに、どうして色が違うのだろうか。どんな製法で、どのような製造工程を経てつくられるのか、それぞれ紹介していこう。
まずは赤ワイン。赤ワインづくりに必要なぶどうを収穫したら一般的に、まずは「梗」と呼ばれるぶどうの実がついている細い茎を取り除く。これを「除梗(エグラパージュ)」と言う。ここまでは赤、白、ロゼで共通の作業だ。
除梗後、ぶどうを軽く潰して、果皮・種・果汁を一緒に漬け込んだまま発酵させる。そうしていると、ぶどう内の糖分がアルコールへと変化(発酵)して、果皮からは赤い色素のアントシアニンが染み出し、果汁は鮮やかな赤色に。種などからはタンニンが出て、赤ワイン特有の渋味が生み出される。このように、果皮などを果汁に漬け込んでおく製造工程を「醸し(マセラシオン)」と呼ぶ。
発酵が終わると、「圧搾(プレシュラージュ)」という製造工程に移る。果皮や種に残っている果汁を搾り取るために圧搾機に通して、それから樽やタンクで熟成させるのだ。熟成が終わると、不純物を取り除き、瓶詰めされることになる。
つまり赤ワインが赤色になるのは、果皮や種を果汁と一緒に漬け込む「醸し」の製造工程があるからだ
白ワインの製法・製造工程
白ワインの製法は、ほとんど赤ワインと同じだ。ただし、大きな違いが1つある。それは、圧搾する順番だ。
赤ワインは醸しの後に圧搾するが、白ワインは発酵前に圧搾する。発酵前に圧搾するので、発酵時には果汁だけの状態に。そのため、果皮などからアントシアニン、種などからタンニンが入り込まず、赤ワインのような濃い色や渋味が生まれないのだ。
ロゼワインの製法・製造工程
ピンク色をしたロゼワインは、色だけでなく製法においても、赤ワインと白ワイン、両方の製法を取り入れた数種類の方法がある。
主な製法としては、赤ワインのように醸造して果汁が程良く色付いたところで果皮と種子を取り出して果汁のみ発酵を続ける「セニエ(マセラシオン)法」、黒ぶどうを使って白ワインのような製造工程を経る「直接圧搾法」、黒ぶどうと白ぶどうを併用してセニエ法と同様に途中から果汁だけを発酵させる「混醸法」といった製法が代表的なものとしてある。
ロゼワインの製法・製造工程は、こちらの記事で詳しく取り上げているので、ぜひ参照してもらいたい。
ロゼワインはどうやって作る? 意外と知られていない3つのロゼワイン醸造方法
少しの製法の違いが、大きな特徴の違いにつながるスティルワイン。お店の人に、製法と特徴を聞きながらワイン選びをすると、新たな発見があるかもしれない。