フランスでは「スパークリングワイン」と一口に言っても、実は多くの種類があることを皆さんはよくご存じかと思う。
スパークリングワインに慣れていないころ、よくやらかしてしまう失敗は「辛口だと思っていたら甘口だった」「しっかりとした泡立ちを期待していたら微発泡だった」といったこと。せっかくキンキンに冷やし、夏の夕方の楽しみに用意しておいたワインが期待と違う味わいだった――そんな残念なことにならないように、ここで1度、スパークリングワインの発泡度と味わいの用語をおさらいしておこう。
スパークリングワインの味わいが分かる「ブリュット」「セック」
まずは、味わいについての用語からチェックしていこう。
ブリュット
セック
ブリュットとはシャンパンやスパークリングワインの甘みの表示段階の1つ。「辛口」を意味している。一方の「セック」は、どちらかといえば「さっぱりした」という意味だ。
極辛口が「エクストラ・ブリュット」、辛口が「ブリュット」、中間が「セック」、少々甘いのが「ドゥミ・セック」という順番になるので覚えておこう。
発泡度の違いを示す「ムスー」「クレマン」「ペティヤン」
次に、発泡の度合いに使われる言葉だ。
ムスー
「ヴァン・ムスー」という言葉があるが、これはスパークリングワインそのもののことだ。シャンパンも含めた全体を指すが、ご存じのようにシャンパンだけは別格に扱われる。
一方、「ヴァン」の付かない「ムスー」は、瓶内のガス圧の違いによって区分した分類規格の1つ。ガス圧5〜6気圧程度のものの呼称だ。
有名なものに、「アンジュー・ムスー」「ソミュール・ムスー」などがある。
クレマン
ムスーよりも若干弱めのガス圧、3〜3.5気圧程度のものを「クレマン」と呼ぶ。シャンパンよりはやや気圧は弱めという覚え方をしておくといい。
クレマンの製法は、シャンパンをつくる伝統的な製法と同じやり方でつくられるものが大半を占める。
代表的なものに、「クレマン・ド・ブルゴーニュ」「クレマン・ド・アルザス」などがある。
ペティヤン
微発泡という言葉にぴったりなのが「ペティヤン」。ガス圧2.5気圧以下のものを指す。
ペティヤンはあくまで微発泡のため、スティルワインのリストに含まれることが多い。
フランスでは良質なペティヤンが多くつくられ、ロワール地方を中心としてフランス全土で醸造されている。
ムスー、クレマン、ペティヤンはガス圧の違いということはお分かりいただけただろう。では、これ以外で聞く「ブランケット」という用語についてご存じだろうか?
ブランケット
ブランケットとは、実はバスク語で「炭酸ガスの入ったもの」という意味。フランス語の「ムスー」と同義語であり、リムー地区でしか使われない。
「ブランケット・ド・リムー」の生産されるリムー地区は南仏のラングドック地方にある。世に言われるドン・ペリニヨン修道士がシャンパーニュを発明する数十年前に、世界で初めて発泡しているワインが見つかったとされ、世界最古の発泡ワイン醸造が始まった場所と言われている。
今回はフランスのスパークリングワインに関する用語を中心に説明したが、イタリアでもスパークリングワインの呼び方はさまざま。大きく分けると「スプマンテ」だが、微発泡のものについては「フリッツァンテ」と違った呼び方をする。
また、「ランブルスコ」や「プロセッコ」など、ぶどうの名前がそのままスパークリングワインの名前になっているものもあり、バラエティ豊かだ。
こうした用語からスパークリングワインの違いを判断し、シーンに最適なワインを選ぶのに役立ててもらえたらうれしく思う。