コラム

桔梗ヶ原ワインバレーでつくられるワインの特徴とは ~ 解説:信州ワインバレー

先日、信州ワインバレー構想について解説する記事を掲載した。今回は信州ワインバレーを構成する4地域の1つ、「桔梗ヶ原ワインバレー」のことを取り上げてみたい。

桔梗ヶ原ワインバレーの気候・風土

長野県に4つあるワインバレーのうち、松本盆地の南、長野県のほぼ中央に位置しているのが桔梗ヶ原ワインバレーだ。塩尻市を流れる奈良井川と、その支流の田川に挟まれた約8平方kmの地域が桔梗ヶ原だ。

標高は700mを超え、年間降雨量は少なめ。9~10月にかけて昼夜の寒暖差があり、火山灰質の水はけのよい土壌が広がるなど、ワイン用ぶどうの栽培に適していることから、明治初期からぶどう栽培が進められている。

毎年5月には、エリア内のワイナリーを循環バスで巡る「塩尻ワイナリーフェスタ」が開催され、全国から多くの観光客が訪れている。

昭和10年代から寿屋(現サントリー)、大黒葡萄酒(現メルシャン)の工場が立地し、生産量・歴史の両面で長野ワインを牽引する地域でもある。

桔梗ヶ原ワインバレーのワインの特徴

もともとは寒冷地に適したコンコードやナイアガラといったアメリカ系ぶどう品種を中心に栽培・醸造されていた。

一方、寒冷地での栽培は難しいとされていたメルローやシャルドネなどの欧州系品種の栽培にも着手。1989年には第35回リュブリアーナ国際ワインコンクールで「桔梗ヶ原メルロー」が大金賞を受賞。現在ではメルローの栽培地としても広く知られている。

甘味と適度な酸味を兼ね備えた個性的な風味のあるぶどうが栽培されている。

桔梗ヶ原ワインバレーの代表的な生産者

明治時代からぶどう栽培が始められていた桔梗ヶ原ワインバレーでは、老舗のワイナリーが多い。「林農園/五一わいん」もその1つだ。

創業者である林五一氏は、1911(明治44)年から桔梗ヶ原でぶどうやりんごなどの果樹栽培を手掛けていた。長い年月をかけて桔梗ヶ原に根付かせたメルローは、後に高い評価を受けることとなる。

また、世界的に珍しいシャルドネ種の貴腐ワインを同社では醸造している。

価格帯は1000円台のリーズナブルなものが多い。一方で、5000円台の貴腐ワインや長期熟成ワインの「ロイヤル」、最高級品のみを使った「桔梗ヶ原メルロ」などもある。

老舗ワイナリーのほかにも、2012年からは自家醸造のワインをリリースしている「ヴォータノワイン」や、2004年に立ち上がった「Kidoワイナリー」といった小さな新規参入ワイナリーもある。

桔梗ヶ原ワインバレーのエピソード

この地域には、酒類の製造免許を持った「塩尻志学館高等学校」がある。生徒たちは学校の授業で、ワインづくりを学んでいる。

醸造免許が下されたのは、1943(昭和18)年と言われ、ワイン醸造時に出る「酒石酸」をとるためだったという。戦時中は酒石酸採取のため、政府によってぶどう酒づくりが奨励されていた。

生徒たちがつくるワインは、国産ワインコンクールで入賞するほど。品質・味共に高く評価されている。

残念ながら生産量は多くはなく、購入のチャンスは11月の新酒の季節と7月の学園祭のみだ。

代表的なワイン

林農園/五一わいん:限定醸造「エステート」シリーズ、貴腐
アルプス:「ミュゼドゥヴァン」シリーズ
井筒ワイン:シャトーイヅツ、「果報」シリーズ
信濃ワイン:信濃樽熟メルロー、信濃桔梗ヶ原メルロー・バリック
塩尻志学館高等学校:KIKYOワイン(赤・白・ロゼ)

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ