コラム

幻のシャンパン「サロン」 ~ 100年で37回しかつくられなかったこだわりの高級シャンパン

   

希少性が高い物のことを「幻の○○」と呼ぶことがある。シャンパンにも「幻のシャンパン」と呼ばれる銘柄があるようだ。

今回は、そんな「幻のシャンパン」と呼ばれる1本について書こうと思う。

こだわりだらけ! 幻のシャンパン「サロン」

「幻のシャンパン」と言われているのは、「サロン」。シャンパン愛好家が愛してやまないという。それというのもサロンは、こだわりの詰まった最高品質のシャンパンだからだ。

サロンを生産しているのは、毛皮商であったウジェーヌ・エメ・サロン氏が創設したサロン。サロン氏は、シャンパン好きが高じて、自らシャンパンをつくるようになった。

1996 Salon Champagne at Troquet

自分の手でシャンパンをつくるほどのシャンパン好きであるから、「最高のシャンパンをつくる」という確固たる信念があったのだろう。シャンパン界の常識にとらわれず、自分のこだわりを貫いたシャンパンをつくり出した。

複数の畑(クリュ)から収穫したぶどうを使い、さまざまなぶどう品種(セパージュ)を組み合わせる(アッサンブラージュ)のが、シャンパンづくりの常識とされている。しかしサロンは、単一畑から同一年に収穫した単一品種を使ってつくられるシャンパンなのだ。

サロンに使用するぶどうは、シャルドネ。シャルドネの聖地とされるコート・ド・ブランでグラン・クリュに格付けされているメニル・シュール・オジェで栽培されたものだけを使用する。たとえメニル・シュール・オジェで栽培されたシャルドネでも、最高品質のぶどうができた年にしか使用しない。従って、ぶどうの出来が悪い年は生産せず、その年のヴィンテージは存在しない。20世紀の100年間で、サロンがつくられた年は37年しかないほどだ。

さらに、若飲みでも楽しめるようにするマロラクティック発酵は行わず、最低でも8年間瓶熟成させてから世に送り出している。最終的にはぶどうの収穫から出荷まで、10年の月日を要することになる。

希少性と品質が非常に高いサロン

特定の畑で栽培した最高品質のぶどうしか使用していないため、サロンの生産量は非常に少ない。1回の生産量は6~8万本程度だ。このほとんどが、高級レストランに提供されるため、個人消費者が手にすることができるのはおよそ7000本と言われている。

前述のとおり、毎年生産されるとも限らず、生産されないヴィンテージもある。サロンの希少性がますます高くなることは、容易に想像できるだろう。

品質はというと、最高の畑で栽培した最高のぶどうを使い、手間暇かけてつくり上げていることからも分かるとおり、非常に高品質だ。フランスで最も権威があると言われるワイン評価本『レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス』で最高の3ツ星を獲得した実績もある。しっかりとしたフルーツの味わいと、フルーツやナッツなどの香りを持つ繊細でエレガントなシャンパンに仕上がっている。

幻のシャンパン・サロンは、価格も非常に高くなる。サロンを扱っている通販サイトをざっと確認しても、5万円は超えてくる。もちろん、それだけの価格に値するシャンパンなので、許されるのならば1度は飲んでみたいと思う人は多いだろう。

それでも「さすがに5万円を超えるシャンパンには手を出せない」という人は、サロンと同じ村でつくられている「ドゥラモット」のシャンパンを試してみてほしい。ドゥラモットは「サロンのセカンドワイン」とも言われ、価格は5000円前後。サロンの原料として使うほどのレベルには至らなかったシャルドネはドゥラモットに利用され、サロンを思い出させる高貴なシャンパーニュへと姿を変えている。

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