飛行機のファーストクラスで提供されているワイン――。そう聞くだけで「きっとおいしいけれど、お高いワインなんだろうな」と想像してしまう。
「ファーストクラスで提供されているワインを飲んでみたい」。そう思っても、見た目も高級感が漂うワインを目の当たりにして、なんとなく遠くから眺めるだけになってしまった経験をお持ちの方もいるかもしれない。
しかし、数あるワインの中には「ファーストクラスで提供されているワイン」=「おいしいけどお高い」という常識を、打ち破ってくれるものもある。
その1つが、キャセイパシフィック航空のファーストクラスで提供されたことがある赤ワイン「エステ(ESTE)」だ。
エステの価格は1000円前後。プチプライスの上、太り気味の馬が描かれている親しみやすいラベルが特徴だ。今回のコラムでは、エステのことを紹介したいと思う。
テーブルワインに分類されるエステ
エステは、スペイン南東部のアンダルシア州にあるワイナリー「ボデガス・アルト・アルマンゾーラ」がつくっているワインだ。
ボデガス・アルト・アルマンゾーラはアンダルシア州でも東側、東アンダルシア地方のアルメリアにある。
アンダルシアと言えば、西アンダルシア地方のヘレスでつくられているシェリーが有名だ。一方、エステがつくられている東アンダルシア地方は、西アンダルシア地方のように代表的なワインがない。
さらに東アンダルシア地方には、ワインの原産地呼称を認定された地域がない。そのため、同地で生産されたワインはすべてテーブルワインに分類されてしまうのだ。
もちろんエステも例外ではない。ラベルを見ると原産地呼称を示す表記はされていない。
テーブルワインなのにパーカーポイント90点を獲得!
テーブルワインに分類されるエステだが、その中身は非常に丁寧につくられている。
東アンダルシア地方は、スペインの中でも気候が穏やか。標高の高いところでぶどうを栽培して、夏と冬の温度差が大きくなるようにしている。夏の気温は40度を超えることがある一方、冬は氷点下になることもある。
ぶどうの収穫は、その年の気候によって時期を前後させているという。熟成には、フレンチオーク樽とアメリカンオーク樽を使用。熟成後、少なくとも5カ月間は瓶熟成させている。
こうした丁寧なワインづくりは、2006年に日の目を見ることになった。ワイン業界に大きな影響力を持つワイン評論家のロバート・パーカー氏が、エステに90点を付けたのだ。これを機に、エステには強い追い風が吹くようになる。
アメリカの経済誌「Forbes」のスペインワイン特集では、「絶対に買うべきスペインワイン15本」のうちの1本に選ばれ、「どうしてこれほどスパイシーで華麗なワインをこの価格でつくることができるのか」と絶賛された。
さらに、世界で最も予約が困難と言われるレストラン「エル・ブリ」のシニアソムリエが絶賛。そして冒頭でも取り上げたように、キャセイパシフィック航空のファーストクラスでも提供されるようになったのだ。
エステに使用されているぶどう種は、年によって割合が異なる。基本的な比率は、モナストレル(47%)、テンプラニーリョ(26%)、シラー(11%)、ガルナッチャ(6%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(5%)、メルロー(5%)だ。
香りは非常に濃厚で、とても香り立ちが良い。濃縮感があり、果実味とスパイシーさ、渋味のバランスが取れた味わいとなっている。
赤ワインの他にも白ワインの「エステ・ブランコ」、ロゼワインの「エステ・ロゼ」がある。
高級な味わいをプチプライスで楽しめるエステ。親しみやすいラベルと価格なので、白ワイン、ロゼワインもあわせて楽しんでみてはいかがだろうか。