サントリーは2024年5月14日、TKPガーデンシティPREMIUM京橋(東京都中央区)において、2024年の日本ワイン方針・戦略についての説明会を開催した。
当日は、同社常務執行役員ワイン本部長の吉雄敬子氏、サントリー登美の丘ワイナリー(以下、登美の丘ワイナリー)栽培技師長の大山弘平氏が登壇。世界と肩を並べる日本ワインをつくるための取り組み、日本らしさを大事にした持続可能なワインづくりなどについて話があった。
第1回となる本記事では、2022年のブランド大刷新から約1年半の振り返りと、ブランドが掲げる「全ては畑から」のコンセプトの下に同社が取り組んできたものづくりの成果として、国内外でのコンクール受賞やワイナリー来場者の増加について紹介する。
2023年、2024年前半の販売実績
同社ワインの2023年販売実績(岩の原葡萄園とファインズを含む国内合計)は、前年比102%の444億円で、ワイン市場全体(前年比100%、同社推計)を上回った。2024年1~4月も前年比101%の135億円と好調に推移している(金額ベース、同社推計)。
吉雄氏によると、まだ新型コロナウイルス感染症の流行以前の状態に戻ったとは言えないものの、業務用が回復してきているそうだ。
つくり手の意識を変えたブランドコンセプト「FROM FARM」
同社は2022年9月、日本ワインのブランドを大刷新し、「FROM FARM(全ては畑から)――水と、土と、人と」を打ち出した。
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100年以上にわたって日本ワインをつくってきた同社では、畑で育ったぶどうからワインをつくることは自明の理だ。しかし、ユーザーや一部社員の中には、同社のワインに対して、工場で大量生産しているというイメージを持っていた人も少なくないという。そのため「FROM FARM」には、ワインは自然の恵みから人間がつくり出すもの、という思いが込められている。
そして、ブランド刷新から約1年半。「つくり手自身の意識が変わってきた」と、吉雄氏は語る。
コンセプトの言葉が示す通り、自然はもちろん、人=つくり手も大事であること、また、しっかりと「ものづくり」に取り組んでいるという意識が高まり、ワインの品質が確実に上がってきているという。ものづくりの成果は、例えば国内外のコンクールでの受賞やワイナリー来場者の増加などに表れ始めている。
国内外のコンクールで高評価
2023年、同社の日本ワインは国内外のワインコンクールで高く評価された。国際コンクールでは、「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards:DWWA)2023」にて、「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2021」が最高位のプラチナ賞を獲得。「同 ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち 2021」は、金賞を受賞した。
また、「日本ワインコンクール(Japan Wine Competition)2023」では、「SUNTORY FROM FARM 塩尻マスカット・ベーリーA 2019」が国内改良等品種 赤部門の最高賞を、「同 津軽シャルドネ&ピノ・ノワールスパークリング 2020 グリーンエティケット」がスパークリングワイン部門の最高賞を受賞している。
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ワインづくりの現場をより身近に
ユーザーへの訴求にも、積極的に取り組んだ。ワインがどんな風につくられるのかを知ってもらうため、「春のロゼワインまつり」「収穫感謝祭」「FROM FARMワインフェス」など数々のイベントを開催した。
また、定型的なワイナリーツアーではなく、つくり手が来場者を畑に案内して丁寧に説明したり、つくり手やマーケティング担当者が来場者からの質問を受けて対話するなど、ワインづくりをより身近に感じられるような工夫も試みた。
これらの取り組みが実を結び、2023年は3万6000人が登美の丘ワイナリーを訪れ、前年比151%と大きく増加した。吉雄氏の「売り上げの伸びに手応えを感じている」という言葉が示すように、ユーザーのブランドへの理解や新商品への関心向上にも大いに役立っているようだ。
次回の記事では、同社の2024年の日本ワイン戦略のうち、ワインを進化させるための、日本固有のぶどう品種「甲州」強化の取り組みについて紹介する。