「日本でいちばんワインを造っている県は?」。答えが二つあるのは、比べているワインの範囲が違うからです。国税庁の調査から、数字の中身とラベルの見方を整理しました。
ワインの産地と聞くと、山梨のぶどう畑が浮かびます。ところが国税庁の資料を開くと、国内で造ったワインの製成数量は神奈川県がトップ。山梨県の2倍以上あります。
「神奈川でそんなに?」とページを見直しました。読み進めると、別の欄では山梨県が1位です。間違いではありません。比べているのは「国内で造ったワイン」と、その中に含まれる「日本ワイン」。まずは二つの数字を並べてみます。
国内で造ったワインの製成数量
1位・神奈川県 20,862kL
国産ぶどうだけで造る「日本ワイン」の製成数量
1位・山梨県 3,762kL
同じ表で、首位が入れ替わる
国税庁の「令和7年酒類業実態調査」にある都道府県別の製成数量を、4道県で比べました。対象は2024年4月から2025年3月まで。単位のkLは1,000リットルです。

神奈川県は国内で造ったワイン全体で20,862kL。一方、日本ワインは8kLです。山梨県は全体が8,918kL、日本ワインが3,762kL。長野県と北海道も、日本ワインでは山梨に続く大きな産地です。
ここで大切なのは、神奈川県の残りの量が「すべて輸入ぶどう由来」とまでは、この表だけでは分からないこと。表が教えてくれるのは、国産ぶどうだけを使う「日本ワイン」に当たる量と、それ以外を含む国内製造ワイン全体の量です。
「国内製造」と「日本ワイン」
日本ワインは、国内で収穫したぶどうだけを原料に、日本国内で造ったワイン。国内製造ワインはもっと広く、海外から持ち込んだ濃縮果汁や原料ワインを使って国内で造るものも含みます。どこで造ったかと、ぶどうがどこで育ったかは、別の話なのです。
神奈川県にはメルシャンの藤沢工場があります。同社は、海外で選んだワイン原料を使い、藤沢工場で手ごろな国内製造ワインを造っていると紹介しています。ただし、国税庁の県全体の数字から、特定の工場が何kLを占めるかまでは読み取れません。
ワイナリーの数を見ると、景色はまた変わります。調査で数えた全国519場のうち、山梨県は85場、長野県は81場、北海道は69場。この3道県で全国の約45%です。「ワインを造る場所が多い県」と「造る量が多い県」が同じとは限らない、ということも見えてきます。
売り場ではラベルをひと目
国産ぶどうで造った一本を飲んでみたい日には、ラベルの「日本ワイン」を探してみてください。この表示は、条件を満たしたワインに付けるものです。国内製造ワインでも、濃縮果汁や輸入ワインを使った商品には、その使用が分かる表示があります。
手ごろで親しみやすい一本を選ぶ日も、地元のぶどうを味わいたい日もあります。裏の製造者住所だけを見てぶどうの産地を決めつけず、まず原料の表示を見る。それだけで、棚に並んだワインの違いが少し分かりやすくなります。
調査について:製成数量は2024年4月1日〜2025年3月31日の有効回答を集計したもので、未回答の事業者を含む全国の確定総量ではありません。ワイナリー数は、2024年中にワインの生産または出荷実績があった製造場の数です。








