ワインを飲む人は、なんとなくスマートに見える――。そんな先入観を勝手に持っている人もいるかもしれないが、実は「ワインを飲む人」=「スマート(賢い)」という図式はあながち間違いとも言い切れないようなのだ。
ワインを味わうと、数学の問題を解くよりも脳が刺激される。そう主張する論文を発表したのは、イエール大学・医学大学院の神経科学者ゴードン・シェファード教授だ。
ワインのポリフェノールには、抗酸化作用などのさまざまな効果があるとする研究が登場してきているが、シェファード教授の主張は赤ワインや白ワインに関わらず“ワインを味わう”ことが脳を刺激するのだという。
ワインを味わう=脳がワインの味わいをつくり出す
ゴードン・シェファード教授は、2016年11月に発売された著書『Neuroenology: How the Brain Creates the Taste of Wine(ニューロエノロジー:いかに脳がワインの味わいをつくり出しているか)』内で、ワインを味わうときの複雑な神経の働きについて解説した。
ワインのグラスを口に持っていき、飲み込む。それだけで、脳を刺激できるわけではないとシェファード教授は言う。
ワインをテイスティングするときには、まずボトルのラベルからワインの情報を収集し、グラスに注がれたワインの色や粘度などを観察する。口の中に運んだ後は、そのまま飲み込むのではなく、舌やアゴ、横隔膜やノドを複雑に動かして、酸素や唾液と混ざり合ったワインの味・香りがどのように変化するのかを読み取ろうとするはずだ。
この時、口の中に含まれたワインは、味覚だけではなく嗅覚も刺激することになる。味覚や嗅覚からもたらされた情報を脳が解読し、ワインの味わいをつくり上げる。シェファード教授によると、そのプロセスこそが、音楽を聴いたり数学の問題を解いたりするよりも、ワインを味わう方が脳を刺激するのだという。ワインに隠された味わいを読み取り、感じようとする行為こそが、非常に効果的な“脳トレ”になるようだ。
ちなみに2016年8月、『Frontiers in Human Neuroscience journal』で発表された論文では、ソムリエとしての最高資格である「マスター・ソムリエ」(MS)を持つ人は、そうでない人と比べて感覚を処理する脳のエリアに厚みがあると報告されている。
今度ワインを楽しむときには、脳を刺激するつもりでじっくりとワインを味わってみてはいかがだろうか。
<関連リンク>
Neuroenology – How the Brain Creates the Taste of Wine
Structural and Functional MRI Differences in Master Sommeliers: A Pilot Study on Expertise in the Brain