2018年2月に帝国ホテルで開催された「NAGANO WINE FES in 東京」。同イベントに参加した長野県のワイン関係者をいくつか紹介していきたい。
今回紹介するのは、児玉邸。かつては大型養蚕農家を営んでいたという児玉邸は、児玉夫妻が夫方の実家である国の登録有形文化財「児玉家住宅」を守る手段として、ぶどうづくりをスタートしたことからワインの世界に足を踏み入れた。千曲川ワインバレーの「シルクからワインへ」の流れを体現したヴィンヤードだ。
今回は、手塩にかけたファーストヴィンテージを持っての出展となった。
来場者の満足度が高かった1本
明るくてパワフルなご夫婦が提供してくれたのは、児玉邸敷地内の畑でつくられたメルローの2016年ヴィンテージ(4000円/税別)。醸造は千曲川ワインアカデミーに携わるワイナリー、アルカンヴィーニュが手掛けた。児玉邸の児玉俊一さんは、千曲川ワインアカデミーの第1期生でもある。
筆者が児玉邸のブースに足を運んだのは、1部の終盤で来場者の方に「一番おいしかったワインはどこか」と聞いたところ、複数の方が児玉邸の名前を挙げたからだ。
ブースを訪れた際には、残念ながらすでに品切れとなっていたが、来場した人からは「果実味が魅力」だとの声を聞くことができた。
長雨の影響に苦しんだ初収穫
児玉邸にとって初のぶどう収穫となった2016年の収量は537kg。長雨の影響で病果が多く、ここまで収量を増やせたのには、お母様と奥様の協力があったからだという。夕方の暗い中でぶどうを収穫し、お母様と奥様が徹夜で病果を取り除いてくれたのだ。
翌年は病果の発生を防止するために房の数を減らしたところ、収量が398kgに。病果がほとんどなかったため、収穫はあっという間に終わったそうだ。
その年の天候に左右されるぶどうづくりの大変さを実感したという。
ぶどうへの愛情が感じられた
「いろいろなお客様との出会いがとても楽しかったです」とNAGANO WINE FES in 東京を振り返る児玉俊一さん。
これほどワインを飲んでもらえたということ、そして高く評価してもらえたことは想定外だったそうだ。奥様の恵仁(えに)さんが「これでこの子(ワイン)たちも浮かばれる」と言っていたのが印象的だった。
2016年のヴィンテージが高評価を受けたことで、2017年以降のヴィンテージへのプレッシャーを感じているそうだ。しかし、愛情を込めて手間を惜しまないぶどうづくりをする児玉邸なら、今後のヴィンテージも楽しみにしてよさそうだ。