チリの名門ワイナリーを紹介する本シリーズ。今回は、ボルドーで第1級シャトーのシャトー・ムートン・ロスチャイルドを所有するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドとチリワインを代表するワインメーカー、コンチャ・イ・トロがタッグを組むことで生まれた「アルマヴィーヴァ」について、ご紹介していこう。
アルマヴィーヴァのエピソード
アルマヴィーヴァは、ボルドー5大シャトーの1つを有するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドとチリ最大で最高のワイナリーと評されるコンチャ・イ・トロとの共同出資により設立されたワイナリー。
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドは、コンチャ・イ・トロとのコラボ以前に、アメリカのロバート・モンダヴィ氏と協同。ロバート・モンダヴィ氏とともに、カリフォルニアの最高級プレイアムワインと評され、入手が非常に困難な「オーパス・ワン」を誕生させている。そして、コンチャ・イ・トロとのコラボでも、チリのオーパス・ワンとも言われるプレミアムワイン「アルマヴィーヴァ」を誕生させた。
「格付け制度のないチリでも、世界トップクラスのワインをつくろう」という志を持ち、徹底した品質管理と最新設備を使ってつくり出されたアルマヴィーヴァ。ファーストヴィンテージから高い評価を獲得し続けていて、世界最高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンの1つと評されている。年間生産量が3500ケースという希少性もあり、今では非常に入手しにくいワインとなっている。
アルマヴィーヴァの歴史
先に記したように、アルマヴィーヴァは、第1級シャトーを所有し、高い技術を持つバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドとチリ最大のワイナリーであるコンチャ・イ・トロとの共同出資により1998年に設立された。バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドとコンチャ・イ・トロの出資比率は50%ずつ。
ワイナリーは、ボルドー品種が盛んに栽培されているマイポ・ヴァレーのプエンテ・アルト地区に位置する。85haの畑のすぐ隣には、コンチャ・イ・トロの最高級ワイン「ドン・メルチョー」に使用するぶどうの栽培地がある。
アルマヴィーヴァのファーストヴィンテージは1997年。1998年に発売したところ、「チリのオーパス・ワン」などと称され、瞬く間に人気のワインとなった。
「アルマヴィーヴァ」という名前は、ポーマルシェの名作で、モーツァルトによってオペラ化されたフランスの古典文学「フィガロの結婚」に出てくる「アルマヴィーヴァ伯爵」から付けられた。ラベルの「almaviva」の字体は、ポーマルシェの筆跡だという。また、ラベルに描かれているモチーフは、チリの先住民族マプチェ族の祭礼用太鼓に付けられるマークで、十字架は東西南北、4つの点は四季、半円は風を表している。
アルマヴィーヴァのワインづくり
チリのテロワールとフランスの技術の融合
アルマヴィーヴァでは、 ぶどうに適したテロワールを持つチリの畑でぶどうを栽培し、ムートン・ロスチャイルドが培ったフランスの技術を融合させて、プレミアムワイン「アルマヴィーヴァ」をつくっている。
プエンテ・アルト地区にあるアルマヴィーヴァの畑は、アンデス山脈からの堆積物が長い年月をかけて蓄積し形成されたもので、プエンテ・アルトの中でも特に古い。火山質、粘土質などの土質や、石、砂利が入り混じって存在している複雑な土壌となっている。気候は地中海性気候で昼夜の気温差が20℃もあり、寒暖の差が激しい。アルマヴィーヴァの畑はアンデス山脈から吹きこむ冷風により気温が特に下がるため、その冷たい空気と乾燥した気候によってぶどうの樹が病気になりにくい。
このようにぶどう栽培に恵まれたテロワールを持つ畑で、フランス流の徹底した品質管理の下、ぶどうを栽培している。そして、そのぶどうを使い、フランスの技術と伝統を受け継いだ有能なテクニカル・チームが、充実した醸造施設でアルマヴィーヴァを産しているのだ。
マイクロゾーンの導入
アルマヴィーヴァは、設立当初から、常に改良を重ねて高品質の「アルマヴィーヴァ」を産出し続けてきたが、2005年に大きな転機が訪れた。栽培から醸造まで細かな区画ごとに管理する「マイクロゾーン」と呼ばれる手法を導入したのだ。その結果、ワインのスタイルがパワフルなスタイルからアロマティックなスタイルへと変貌した。
また、区画ごとの適正をより的確に把握できるようになったため栽培品種も増え、メルロやプティ・ヴェルドの栽培が強化された。近年、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のアルマヴィーヴァにこれらの品種が少量ブレンドされるようになり、ワインにより深みと複雑さが備わった。
アルマヴィーヴァは、有名なワイン評論家パーカー氏のパーカーポイントで、リリース以来、連続して90点以上を獲得している。アルマヴィーヴァは、いまや世界最高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンの1つとして確固たる地位を築いたと言える。
アルマヴィーヴァの当たり年
アルマヴィーヴァのスタイルはボルドータイプ。70%程度のカベルネ・ソーヴィニヨンに、20%ほどのカルメネール、そのほかに数%だけメルロやプティ・ヴェルドがブレンドされている。
ブラックベリーなどの黒果実の濃く甘い香りに、甘草やスパイス、バニラやナッツなどのニュアンスがある。フレッシュな果実味に適度な酸が心地よく、タンニンはしっかりとしていながらもしなやかさが感じられるため、リリース直後でも楽しめるワインとなっている。ヴィンテージによっては、数年寝かせた方がいいとされており、優れたヴィンテージのものは10~20年の熟成を重ねることで、さらに味に複雑さと奥行きが生まれるという。
アルマヴィーヴァは、毎年、非常に質の高い「アルマヴィーヴァ」を産出しているが、その中でもあえて当たり年を挙げるとすれば、2011年と2013年になる。コンチャ・イ・トロの資料には、2013年ヴィンテージはパーカーポイントで94点を獲得するなど、特に評価が高かったと記されている。
さらに、コンチャ・イ・トロの資料には載っていないが、2015年も当たり年と言える。2015年ヴィンテージのアルマヴィーヴァは、世界的なワイン評論家ジェームス・サックリング氏らが選ぶ「トップワイン・オブ・2017」で100点満点を獲得し、世界1位のワインとなっている。デキャンター誌でも「素晴らしく凝縮しているが固さはなく、非常に愛らしく、美しいバランスを備えている」と、大いに褒め称えている。