コラム

世界ワイン市場は今後どうなる? 伸びるイタリア・スペインに対して、フランスは――|Sopexa「WINE TRADE MONITOR 2018」

動向調査を中心に、世界のワイン市場についてリサーチを行っているSopexa。このほど、アメリカや日本をはじめとする主要6市場をターゲットにした「WINE TRADE MONITOR(ワイントレードモニター) 2018」を発表した。

この調査は、アメリカ、日本、中国、香港、ベルギー、カナダの主要6市場の輸入業者、卸売業者、小売業者を含む781の専門家を調査対象としたもので、2018年10月9日に発表。今後2年間の市場展開と傾向を予測している。

今回は、調査結果の中から、「人気ワインと生産国」「今後の売上推移」にポイントを絞ってご紹介しよう。

人気ワインと生産国

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取り扱うワインの生産国数について調査したところ、調査を行った6市場とも平均で8カ国のワインを販売しているという結果になった。この結果から、どの市場でも、ある特定の国のワインに特化しているわけではなく、さまざまな生産地のワインを扱っていること、それぞれの生産地の取扱量にそれほど大きな差は見られないということが示された。つまりワイン市場には、新しい生産地が参入できる可能性がまだ残っており、今後も成長の余地があることが明らかになった。

ただし、ワインの“オールドワールド”と呼ばれる、フランス、イタリア、スペイン、ドイツなどのワインは、やはり根強い人気を誇る。今回の調査でも、最も人気のあるワイン生産国として、調査対象者の92%がフランスを挙げている。次いで76%がイタリア、71%がスペインと回答した。

その一方で、“ニューワールド”を代表する、アメリカ、オーストラリア、チリなども、近年その存在感を増している。現在、45~56%の業者がこれらの国々のワインが人気だと回答している。

今回の調査では、中国や香港の動向にも注意が払われている。ワインの消費量は、人口の多い国々で大きな伸びを示している。経済状況があまり良くないブラジルでも、大きなワイン市場が確立されており、また、インドも今後の成長が期待されている。そして、古くからワインの生産国でもある中国も、消費量・生産量ともに大きな伸びを示している。特に、1980年代の改革開放以降、社会的なステータスの証としてエリート層の間でワインが飲まれるようになるなど、消費が増加した。その結果、2017年には中国のワイン消費量はドイツに続く世界第5位にまでなっている。中国の人口を考えると、今後さらなる拡大が期待できるため、中国の動向に注視する必要がある。

しかし、その中国では、ワインの商品数が減少している傾向にあり、販売するワインは平均で4.8生産国にとどまっている。これは、調査した6市場の中で最低の数字となる。取扱量はフランスワインが第1位、オーストラリアワインが第2位、イタリアワインが第3位、チリワインが第4位で、ニューワールドのワインが善戦していることがうかがえる。一方、香港市場は、平均7.4生産国のワインの取り扱いがあり、中国に比べてよりオープンな競争環境となっていることが分かった。

今後の売上推移

イタリアワインの人気が上昇

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今後、売り上げの伸長が予想されるワインとして、調査対象者の41%がイタリアワインを挙げている。今後2年間でイタリアワインの売り上げが伸びて人気ワインになるとの見解を示している。

イタリアワインの人気が最も高いのは、カナダ市場だ。専門家の約67%が、2017年にイタリアワインが同国の売上高ランキングでトップ3入りしたと回答している。また、56%の専門家が、今後2年間はイタリアワインの売り上げが大幅に伸び、他国のワインと比較してもトップクラスの伸び率になると予測している。

また、中国でも調査対象者の43%が、2017年にイタリアワインが同国の売上高ランキングでトップ3にランクインしたと回答している。さらに、回答者の42%が今後2年間は売上増加が見込まれる上位3生産国にイタリアが含まれるとしており、中国でもイタリアワインの人気が高まっていると考えられる。

イタリアのワインディレクター、Andrea Ferrero(アンドレア・フェレロ)氏は、中国やカナダでイタリアワインの人気が高い理由として、「多種多様なぶどう品種」「優れたコスト・パフォーマンス」「イタリアワインの知名度上昇」の3つを挙げている。

堅調な伸びを見せるスペインワイン

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その他に、売上高トップクラスのワインの1つとして、調査対象者の39%がスペインワインを挙げている。特に日本市場では、スペインワインの売り上げが著しく伸びている。専門家によると、日本市場ではチリワインの販売量が落ち込み、売上高が4位に転落したことが、スペインワインの売り上げが上昇した大きな要因との見解を示している。日本でのスペインワインの見通しは今後も明るく、専門家の30%が今後2年間は売上高トップ3に入ると予測している。さらに、専門家の48%が今後2年間にわたって、カナダやアメリカでもスペインワインの販売は好調との展望を示している。

勢いに陰りの見えるフランスワイン

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全世界における2017年の売り上げを見ると、フランスワインが他を大きくリードして、世界第1位の座についている。2018~2019年の売上予測でも、業者のおよそ半数が同様の見解を示している。こうした状況は、アメリカ、香港、ベルギー市場で特に顕著だ。しかしながら、中国やカナダでは、フランスワインとイタリアワインの競争がますます激化すると各業者は予測。世界トップに君臨するフランスワインの勢いに、多少なりとも陰りが見え始めたとも考えられている。

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