ボルドーワイン委員会が、2018年ヴィンテージについて、11月時点の状況について発表した。
今年は春から初夏にかけての気象条件に恵まれず、ボルドーの生産者にとって、ぶどう畑での作業は手作業、機械作業を問わず、非常に困難だったという。
雹(ひょう)とウドンコ病の被害
2018年当初、ボルドー地方の冬の気候は、比較的穏やかだった。しかし、3月になると雨が非常に多く、降水量は平年の74%増の113mmを記録した。
5月になると一転して、降水量が極端に減り、平年と比べて40%減となった。月末の5月21日と26日は雹混じりの嵐に見舞われ、多くの畑に壊滅的な被害をもたらした。ブライ&ブール地区では被害を受けた5500haの畑のうち、80%以上の被害にあった畑が3000haにのぼった。メドック地区では1200haが被害にあい、そのうち400haでぶどうの80%以上が被害にあった。アントル・ドゥ・メール(東部)地区では400haが被害を受けた。
7月は暑く、1945年以降で4番目に暑い月となったのだが、平年と比べると雨が多く、降水量は平年比25%増となった。雨だけでなく雹にも悩まされた。7月15日には、ランゴンとソーテルヌ地区で1000ha、メドック地区南部で1000haと、合わせて2,000 haのぶどう畑が雹の被害を受けた。
雹害に加えてウドンコ病にも悩まされた。ウドンコ病は、かびによる病害で、ぶどうの枝や葉、果実が白い粉状のもので覆われてしまう。果実に付くと、表皮の成長を妨げてしまうため、成長を続ける果肉が表皮を破ってしまうのだ。そのため、収穫量に著しい影響を与えることがある。2018年は春の温かさと多雨がウドンコ病にとっての好条件となり、特に猛威を振るった。生産者ができる限りの対策をしたにもかかわらず、ほとんどの区画が被害を受けたという。
理想的な夏
春から初夏にかけては、雨や雹、ウドンコ病に悩まされたが、7月中旬に入ると状況が一変した。盛夏を迎えると、時には酷暑となるほど日中は暑く、夜間は涼しいというぶどう栽培に適した気候となり、ぶどう畑が元気な姿を取り戻した。
8月は、ぶどう栽培に理想的な環境となった。気温は平年を2度も上回り、日照時間も平年より25%多かった。さらに、雨がほとんど降らず、降水量は平年の56mmに対し2018年は19mmだった。
9月も8月と同様に理想的な環境だった。引き続き気温が高く、雨も、平年の降水量84mmに対し2018年は3mmと記録的に少なかった。ぶどうを収穫するまでの数週間、日中は暑く、夜は涼しいという状態が続き、ぶどうの成熟がうまく促進された。その結果、ぶどうの状態は極めて良好で、予定よりも数日早く、収穫に取りかかることができたという。
2018年ヴィンテージ:ワインタイプ別のぶどう収穫時期と味わい
2018年のボルドー地方は、7月中旬からぶどう収穫期まで、日中は非常に暑く、夜間は気温が下がり涼しいという気候が続いた。そのため、日中の暑さでぶどうの熟成が進むと同時に、ぶどうのベジタル香が減少し、夜の涼しさでアントシアニンと香りの形成が促進されたという。
クレマンとロゼ
クレマンとロゼに使用するぶどうの収穫は8月20日頃に開始された。
辛口白ワイン
辛口白ワインに使用するぶどうの収穫は、8月24日頃に開始され、最適に成熟したソーヴィニヨン・グリから始まった。その後、ソーヴィニヨン・ブランやセミヨンの摘み取りが9月22日まで行われた。
甘さと酸味のバランスが良く、素晴らしい新鮮さが放つ芳醇なアロマを感じられるという。
赤ワイン
赤ワインに使用するぶどうの収穫は、9月17日、早めに成熟したメルロから始まった。9月20~22日頃には広い地域にわたって本格的にメルロの収穫が始まり、9月下旬から10月10日頃にかけては、カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンが収穫された。
最初の醸造桶を見たところ、深い色合いのワインになっており、ぶどうを破砕して茎を取り除いた果醪(かもろみ)からは、熟した濃厚な果実味と凝縮されたタンニンが感じられたという。
甘口白ワイン
甘口白ワインに使用するセミヨンとミュスカデルの収穫は、10月初旬から始まった。
2018年ヴィンテージ総評
春から初夏にかけて、雨や雹、ウドンコ病による被害を受けたものの、幸いなことに、7月中旬から9月下旬にかけては、ぶどう栽培に非常に適した天候となった。そのため、ぶどう畑は健全な状態を取り戻し、平年通りの収穫量を確保できた。2017年は、春の記録的な霜により収穫量が約39%減少したが、2018年のボルドーワインの生産量は、過去10年間の平均近くまで回復すると見られる。
先述した通り、2018年のボルドー地区は、時に異常とも言える天候に見舞われ、非常に困難な状況だった。そのため、ワイン生産者は息つく暇もなかったのだが、彼らの努力は報われたようで、現在のところ2018年ヴィンテージは非常に良い特徴を示しているという。
ボルドーワイン委員会は、2018年ヴィンテージを「細心の注意を払って生産されたヴィンテージ」だと評し、同委員会会長のアラン・シシェル氏も「ぶどう畑の手入れに注がれたすべてのエネルギーが、この新しいヴィンテージの特徴として現れた」と述べている。
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ボルドーの2018年ヴィンテージ