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2019年2月に6回目の開催を迎えた「NAGANO WINE FES in 東京」。長野には、ワインコンクールで数多くの受賞歴を誇るワイナリーも多い。
国内外で高い評価を受けているワイナリーの1つが、楠わいなりーだ。代表の楠茂幸氏は、2018年6月にマスター・オブ・ワイン協会がスペインのリオハで主催した国際シンポジウムに、ゲスト・スピーカーとして招待されるなど、海外からも注目されているつくり手だ。
NAGANO WINE FES in 東京には、そんな楠わいなりーも出展。ブースを訪れたワインファンの様子からも、高い注目を集めていることが伺えた。
用意したワイン6種類すべてが売り切れに
楠わいなりーがNAGANO WINE FES in 東京で提供したワインは、事業者向け3種類と一般向け3種類の計6種類。いずれも「食事に合うワインをつくる」というコンセプトで品種と土地の特性に向き合い、丁寧につくられたワインだ。
【事業者向け】
・シャルドネ樽熟成2016(4000円・税抜)
・楠R 2016(3200円・税抜)
・カベルネ・ソーヴィニオン 2015(3600円・税抜)
シャルドネ樽熟成2016
事業者向けのワインの中で一番に売り切れていたのが、「シャルドネ樽熟成2016」だった。楠わいなりーのフラッグシップワインだ。
複数の畑で栽培されたシャルドネをブレンドし、バリック(小樽)で熟成させて複雑さをまとわせた一品。来場者からは、「香りが開くとすごいね」「まだ早い」「大きいグラスで飲みたい」などと評価されたそうだ。
2018年には、パリで開催された女性だけのワインコンクール「フェミナリーズ世界ワインコンクール」で金賞を受賞した。
おすすめのマリアージュ:帆立のグラタン、バターやクリーム系のソースで調理した白身肉
楠R 2016、カベルネ・ソーヴィニオン 2015
「楠R 2016」「カベルネ・ソーヴィニオン 2015」も、開始から1時間もしないうちに売り切れていた。
「楠R 2016」は、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランをブレンドしたワイン。同社の「パッサージュ・ルージュ2013」とブレンドしている品種は同じだが、味わい・香り・余韻がより強く引き出されている。
おすすめのマリアージュ:出汁を引いた和食、キノコのテンプラなど
「カベルネ・ソーヴィニオン 2015」は、カベルネ・ソーヴィニヨンの魅力を十分に引き出すだけでなく、きれいな酸・余韻の複雑さという“楠わいなりーらしさ”も備えた1本。酒販店や百貨店バイヤーからの評価が高く、「楠さんがつくるとカベルネもエレガントだね」との声もあったそうだ。長野県原産地呼称管理制度(NAC)認定ワイン。
おすすめのマリアージュ:飲茶などの優しい味付けの中華料理、餡かけ料理
吉祥ブラン・ド・ブラン
続いて、NAGANO WINE FES in 東京の一般参加者向けの回で提供された楠わいなりーのワインを紹介しよう。
【一般向け】
・吉祥ブラン・ド・ブラン(4000円・税抜)
・リースリング2017(3000円・税抜)
・ピノ・ノワール2016(3600円・税抜)
一般部門で一番人気が高かったのが、スパークリングワインの「吉祥ブラン・ド・ブラン」だ。
吉祥ブラン・ド・ブランは、2017年に「フェミナリーズ世界ワインコンクール」で銀賞を受賞。IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)、日本ワインコンクールでも受賞歴のあるワインだ。
瓶内2次発酵で長期熟成させており、トーストやブリオッシュのような香りが心地よく、複雑な味わいが楽しめる。どんな料理にも合わせやすい万能さも魅力だ。
リースリング2017
続いて売り切れとなったのは、華やかな香りに綺麗な酸が味わえる「リースリング2017」「日本にもこんなリースリングがあったのか」という声が多くあがっていたそうだ。
おすすめのマリアージュ:新鮮な海産物、イタリアンやスペイン料理(特にトマトソースベースのパスタやピザ)、寿司・刺身・天ぷらなどの和食
ピノ・ノワール2016
「ピノ・ノワール2016」は、果実香を超える熟成感が楽しめる、クラシックなスタイルの1本だ。
「日本のピノとしては非常に良い出来で個性が感じられる」という評価が、ワインの専門家から出ていたという。このスタイルを好む人も多い一方で、まだやや硬く、タニックだと感じる人もいるそうだ。
おすすめのマリアージュ:肉料理、懐石料理
2018年ヴィンテージはピノ・ノワールに期待
楠わいなりーの楠茂幸代表とソムリエの岩崎正知氏に、2018年ヴィンテージについて伺うと「非常に難しい年だった」との答えが返ってきた。
3月中旬以降、急激に気温が上昇。梅と桜が同時に咲くような異質な春を迎えると、4月には15mを超える強風が吹いた。その影響で、果樹によっては花ぶるい(花が落ちる現象)の被害が出てしまった。
5月から夏の猛暑の兆しがあらわれた。梅雨は空梅雨に終わり、7~8月には局地的な豪雨と30℃を軽く超える猛暑が続いた。
こうした天候は、ぶどうの成長スピードを速めた。ぶどうの糖度は早くから上昇し、皮が厚くなった。夜になっても20℃を下回る日は数日しかなく、ワインにシャープな酸味を与えるリンゴ酸の消費が進んでしまった。
さらに9月は、秋雨前線の影響で晴天日が10日に満たなかった。さらに、2つの台風が上陸し、成熟の進んでいた数品種のぶどうが病気になり傷んでしまった。悪天候は10月になっても続き、長雨が原因でぶどうに病気が出て、収量は大幅に減ったという。
「収穫の早い白ぶどうには、まずまずといえる品種もありましたが、秋に収穫を迎える黒ぶどうはかなり厳しいヴィンテージとなりました」と、お二人は語る。ただし、「ピノ・ノワールが比較的健全なうちに収穫できて仕込め、期待ができそうです」とのこと。
困難を乗り越えた2018年ヴィンテージの仕上がりが楽しみだ。
最後に読者へのメッセージを伺うと、このような答えが返ってきた。
四季の彩が美しい北信エリアは東京から新幹線で90分。地物と食材を生かした温泉宿も多数ございます。
春のワインフェアや秋の収穫会など人気イベントのほか、ワイナリー見学(要予約)も受付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
ぶどうの花が咲いてからワインができるまで、さまざまなドラマが生まれている現地で味わうワインは、きっと格別に違いない。