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メルシャンは2019年6月3日、「ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション」のワインメーカーズセミナーを開催した。
「プライベート・セレクション」は、カリフォルニアの名門ワイナリー「ロバート・モンダヴィ」のワインの中では中価格帯のワインシリーズだ。同年2月には、同シリーズから、熟成にバーボン樽を使用した「バーボン・バレルエイジド」を日本で発売している。
今回のセミナーには、プライベート・セレクションシリーズを担当するシニアワインメーカーであるジェイソン・ドッジ氏が参加。シリーズの魅力や新アイテムのバーボン・バレルエイジドについて語った。
ジェイソン・ドッジ氏は、醸造家として20年以上のキャリアを持ち、2015年からロバート・モンダヴィに参加している。現在は、プライベート・セレクションの最高責任者を務める。
「ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション」とは
ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクションは、“大切な人とのプライベートな時間を楽しむためのプレミアムワイン”として、1994年にリリースされたブランドだ。
カリフォルニア州セントラル・コーストのモントレー・カウンティで収穫したぶどうを中心に、同州のぶどうを厳選して使用。最高品質のワインをより手頃な価格で提供することを目指している。
同シリーズの参考小売価格は2640円。高品質のワインを中価格帯(1500円~3000円)で楽しむことができる。
セミナー冒頭に挨拶したメルシャン マーケティング部の山田一幸氏は、プライベート・セレクションの日本市場での展望について、次のように話した。
「成長過程の日本のワイン市場では、手頃な価格のワインから始めてもらうことも大切だ。さらに、ちょっと特別な機会に楽しんでもらえる中価格帯のワインを広めていくことで、ワインファンが増えるのではないかと思っている。ロバート・モンダヴィは、信頼できるブランド。今後さらに、プロモーションを強化していきたいと考えている」
新たなトレンドへ、バーボン樽で熟成する「バーボン・バレルエイジド」
近年最大のサクセスストーリーを生んだワイン
プライベート・セレクションでは、3年ほど前から新たな挑戦を開始している。それが、バーボン・バレルエイジドだ。その名の通り、ケンタッキー州のバーボンメーカーから入手した使用済みのバーボン樽を用いて、ワインを熟成させている。バーボン・バレルエイジドでは、より成熟して糖度の高いぶどうを使用しており、アルコール分はやや高めとなっている。
ただ単に、これまでの樽をバーボン樽に変えただけというわけではない。一部のワイン熟成にバーボン樽を使用し、オーク樽で熟成させたワインとブレンドしている。この際、バーボン樽がワインに与える影響を考えて、熟成期間やバーボン樽を使う割合についても注意深く見極める必要があるという。
アメリカでは長年、ウォッカなどのホワイトスピリッツの流れがあったが、2010年代中頃からバーボンなどのブラウンスピリッツ市場が好転し、バーボンブームが起きている。こうしたアメリカ南部のバーボンづくりの伝統とカリフォルニアのワインづくりの技術を融合させることで、新たなワイン愛好家を獲得することも目指している。
バーボン樽熟成のワインは、「近年、最大のサクセスストーリーを生んだワイン」だと評価されており、アメリカでは市場のトレンドとして確立しつつある。
新たなトレンドを生み出す、バーボン・バレルエイジドは、これまでアメリカ国内でしか展開されていなかったが、現在は日本をはじめとするアジア市場での提供もスタート。予想を超える高い需要が、海外にもあることを実感しているところだという。
「バーボン・バレルエイジド」の産地セントラル・コーストの特徴
プライベート・セレクションシリーズでは、主に、カリフォルニアワインの産地として知られるセントラル・コーストで栽培したぶどうを使用している。バーボン・バレルエイジドについては、セントラル・コーストの中でも特に冷涼なモントレー・カウンティ産のぶどうを使用する。
モントレー・カウンティは、日中は日当たりが良く気温も上がるが、夜になると海から吹く冷たい風がサリナス・バレーに沿って入ってくるため、1日の気温差が大きいのが特徴だ。さらに、冷涼な気候の影響でぶどうの生育期間が長く、ぶどうは時間をかけて色づき、味わいを深くする。このように、プレミアムワインをつくる条件に恵まれている。
現在では、冷涼な気候からワイン用ぶどうの産地として注目されているセントラル・コーストだが、プライベート・セレクションのリリース当時の1994年は、大量生産型の大きなワイナリーが次々と撤退するような場所だった。ロバート・モンダヴィはいち早くこの土地に着目し、畑ごとに適したぶどう品種を栽培して成功を収め、産地として確立させていった。
「プライベート・セレクション」シリーズのラインアップ
今回のセミナーでは、バーボン・バレルエイジドをはじめとするプライベート・セレクションシリーズのワイン6種類が試飲として提供された。
ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション バーボン・バレルエイジド シャルドネ 2017
100%オーク樽熟成となるが、一部をアメリカンオークのバーボン樽を使用して3カ月間熟成させている。バーボン樽でのワイン熟成は、カベルネ・ソーヴィニヨンでの前例はあったが、シャルドネに関してはアメリカで初の試みとなった。
キャラメルやバニラ、トーストしたココナッツなどの樽由来の香りと、パイナップル、シトラスなどより成熟したフルーツの香りがある。口当たりはクリーミーで、ボディもよりしっかりしている。
【おすすめのペアリング】
グリルしたヒラメのレモン・ケッパーバター添え、ローストポークなど。食前酒としても楽しめる。
ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション バーボン・バレルエイジド カベルネ・ソーヴィニヨン 2017
美味しいワインを提供したいという想いから、一番条件の良いぶどう畑で栽培したぶどうを使用する。100%樽熟成で、一部をバーボン樽で3カ月間熟成させている。
親しみやすさを残しつつ、しっかりとしたボディとタンニン、色合いを持つ。重さと濃厚さが感じられる1本。
アメリカで2016年にリリースしてから、米国市場におけるバーボン・バレルエイジドワインカテゴリーでは売上 第1位。またスーパー・プレミアム・カベルネ・カテゴリー第4位。(※出典: IRI統計 全米 2019年2月24日までの直近12週間)
【おすすめのペアリング】
バーボンで照りを付けたスペアリブのグリル、シャルキュトリー・ボード、ボリュームのあるパスタ料理、香りの強いチーズなど。
ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション シャルドネ 2017
典型的なカリフォルニアスタイルでつくられたワイン。70%のワインに酸味をまろやかにするマロラクティック発酵(MLF)を施し、70%をフレンチオーク樽で8カ月間熟成させ、残りをステンレス・タンクで熟成させている。
生き生きとしてフルーツ感が前面に感じられるシャルドネで、リッチでクリーミーな味わいが楽しめる。
【おすすめのペアリング】
ロースト・ターキー、チキン・コルドンブルー、フェトチーネ・アルフレドなど。
ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション カベルネ・ソーヴィニヨン 2017
プレミアムレンジのカベルネ・ソーヴィニヨンの中で、売り上げNo.1のワイン。アメリカンオーク樽とフレンチオーク樽で10カ月間熟成させている。
バーボン・バレルエイジドと比較すると、より柔らかく、飲みやすい1本。ボディも控えめだ。
【おすすめのペアリング】
ローストまたはグリルした肉、ボリュームのあるパスタ、香りの強いチーズなど。
ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション ソーヴィニヨン・ブラン 2017
同地区で栽培したぶどうでも、涼しい畑と暖かい畑では味わいが異なることを見極めた上で、こだわりを持ってブレンドしたワイン。爽やかで生き生きとしたキャラクターが楽しめる。オーク樽での熟成はしていない。
【おすすめのペアリング】
シーフードなどの料理。食前酒におすすめ。
ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション ヘイテイジ レッドブレンド 2017
シラーを中心に、メルロー、プティ・シラー、ジンファンデル、マルベック、カベルネ・ソーヴィニヨン、グルナッシュをそれぞれの品種の特性を生かしてブレンド。柔らかい味わいを持たせるために、これらの品種が選ばれている。
オーク樽で10カ月間熟成させる。甘いスパイシーな香りがあり、味わいがソフトで飲みやすく、料理に合わせてグラスで注文するのがおすすめだ。
【おすすめのペアリング】
スパイシーな料理、バーベキュー・チキン、カプレーゼ・サラダなど。
カリフォルニアワインの父「ロバート・モンダヴィ」
“カリフォルニアワインの父”とも呼ばれるロバート・モンダヴィは、1933年に禁酒法が廃止されて以降、ナパ・ヴァレーで最初に本格的ワイナリーを設立した人物だ。
革新的な発想で、カリフォルニアでこれまでにない高品質なワインをつくり、アメリカにワイン文化を根付かせた。
辛口のカリフォルニアワイン「フュメ・ブラン」の誕生
ロバート・モンダヴィが「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」を設立したのは、1966年のこと。2年後の1968年には、樽発酵・樽熟成の本格的な辛口のソーヴィニヨン・ブランのワインを「フュメ・ブラン」と名付けて世に送り出した。
それまでのカリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランは、甘口で主にブレンドに使われるぶどう品種だった。そのため、辛口で単一品種のラベルを冠した「フュメ・ブラン」は、画期的なものだった。
革新的なワイン醸造技術を開示
ロバート・モンダヴィは、低温発酵、ステンレス・タンクやフレンチオーク樽の使用など、ヨーロッパで学んだ技術を自身のワイナリーで積極的に実践していった。他のワイナリーにもそうした技術を開示したため、ナパ・ヴァレーは短期間で高品質なワインの生産地として確立していくこととなった。
「グレート・シェフ」プログラムの開始
1976年には、著名なシェフを招いて料理指導を行う「グレート・シェフ」プログラムをスタート。「食とともにワインを楽しむ」という文化を広めていった。
他にも、ワイナリーに試飲ルームなどを併設して、訪問客を楽しませる「ワイナリーツアー」を提供したり、ヨーロッパの名門ワイナリーとのジョイントベンチャーを設立するなど、ロバート・モンダヴィが起こしたイノベーションは数多い。