『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』は、2018年9月に発売されてからAmazonの「ワイン」本の売れ筋ランキングで常に上位に入っている一冊だ。図書館で検索をしてみても、複数の予約が入っている。
シンプルなタイトルのこの本には、一体どんなことが書かれているのだろうか。
世界のビジネスエリート以外も楽しめる
この本で主に書かれているのは、ワインの産地についてだ。巻頭には、世界の主なワイン産地と特徴をまとめた「必ず押さえておきたい世界のワイン生産地」が収録されている。
ボルドーやブルゴーニュなどを生産するフランス、イタリア、スペインなどのオールドワールドから、アメリカやニュージーランド、チリなどのニューワールドまで、歴史や格付け、一流ワイナリーについて初心者にもわかりやすく書かれている。
ただし、ワインの基礎知識を系統立てて解説しているという本ではないので、「ワインの入門書」というよりも「コミュニケーションツールとしてのワインの知識が手に入る本」として手に取った方がいいだろう。また、イタリアの部では食事とイタリアワインの相性について触れられているが、マリアージュについて知識を深められるといった内容ではない。
「ゴールドマンサックスがワインを学ぶ理由」なども書かれているが、“世界のビジネスエリート”限定の本というわけではなく、「この格付けはいいワインのはず」「確かこのワイナリーや産地は、○○で有名だったはず」など、お店でのワイン選びに役立つような内容だ。
ワイン投資の現状について、そして約120億円もの被害額を出したといわれるルディーによる偽造ワイン事件については、クリスティーズで働いていた渡辺順子氏らしい視点で解説されている。また、最近のロゼワインブームが始まったきっかけやイタリアワインが世界的なブランドを多く残せなかったワケ、ビジネスの切り口から見たアメリカのワイン産業など、初心者でも愛好家でも読み物として十分楽しめる。
この本がお薦めな人とそうでない人
●お薦めな人
・ワインのことを学びたい初級者から中級者
・知識の再確認をしたい中級者から上級者
・ワインに関する本を楽しみたい人
・コミュニケーションツールとなるワインの知識が欲しい人
・ワイン投資の現状を知りたい人
●そうでない人
・系統立ててワインを学べる入門書が読みたい人
・マリアージュについての知識を深めたい人
目次
第1部 ワイン伝統国「フランス」を知る
-世界を魅了する華麗なるボルドーワインの世界
-神に愛された土地ブルゴーニュの魅力
-フランスワインの個性的な名脇役たち
第2部 食とワインとイタリア
-食が先か? ワインが先か?
-ヨーロッパが誇る古豪たちの実力
第3部 知られざる新興国ワインの世界
-アメリカが生んだ「ビジネスワイン」の実力
-進むワインのビジネス化
-未来を担う期待のワイン生産地
各章の最後には、ぶどうの品種解説(全6種類)、グラスの選び方、テイスティングの方法など初心者向けの基礎知識が計8つのコラムで解説されている。
元大手オークションハウスのワイン担当者が執筆
執筆者は、プレミアムワイン株式会社代表取締役の渡辺順子氏。2001年から2009年まで、世界で最も長い歴史を誇る美術品オークションハウス「クリスティーズ」で、アジア人初のワインスペシャリストとして勤務していた人物だ。2016年には、NY、香港を拠点とする老舗のワインオークションハウス Zachys(ザッキーズ)の日本代表に就任した。アジア地域における富裕層や弁護士向けのワインセミナー開催や、ワインオークションへの出品・入札および高級ワインに関するコンサルティングサービスを行っている。
著書に『日本のロマネ・コンティはなぜ「まずい」のか』(幻冬舎ルネッサンス新書)がある。
『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』
著者:渡辺順子
出版社:ダイヤモンド社
定価:本体1,600円(税別)
発行年月:2018年09月
読了までの所要時間:2~3時間