INDEX
山梨県甲州市の勝沼エリアは、明治時代からぶどう栽培とワインづくりが盛んな日本のワイン銘醸地だ。このシリーズでは、勝沼エリアのワイナリーを紹介していく。
第4回目は、「白百合醸造(ロリアンワイン)」。家族連れでも楽しめるワイナリーの1つで、世界最大の国際ワインコンクールDecanter World Wine Awardsでは、2018年と2019年の2年連続で金賞を受賞するなど、勝沼エリアでもトップクラスの受賞歴を誇る。
勝沼トップクラスの実力派ワイナリー
ロリアンワインは、イギリスのDecanter World Wine AwardsやSommelier Wine Awardsをはじめ、国内外のワインコンクールで数多くの受賞歴を持つ。その実績は、勝沼エリアでもトップクラスを誇っている。
現在、3代目の内田多加夫代表取締役社長を中心に、勝沼に根差したワインづくりに情熱を注いでいる。グルメ漫画の『美味しんぼ』や『神の雫』にも取り上げられ、その実力は折り紙付きだ。
ワイナリーの歴史
共同醸造組合からのスタート
1938(昭和13)年に共同醸造組合として創業。2代目の内田四郎氏は、観光客が立ち寄れるワイナリーを目指し、1985年にそれまで山梨市の自宅敷地内にあった工場を勝沼町に移転した。そうした功績が認められ、1998(平成10)年には「業務に奨励し衆民の模範たるべき者」として、「黄綬褒章」が授与されている。
1995年には3代目の内田多加夫氏が社長に就任し、「味わって体験し、思い出に残るワイナリー」の系譜を引き継いだ。2013年には、外観とショップをリニューアルしている。
“東洋”から世界で評価されるワイナリーへ
“ロリアン(L’ORIENT)”とは、“東洋”を意味するフランス語だ。ヨーロッパに負けない高水準のワインづくりを目指して名付けられたものだが、その名が示すとおり、2010年には「ロリエント甲州2009」がInternational Wine & Spirit Competitionで奨励賞を受賞。これを皮切りに、国際コンクールで多くの賞を受賞している。
勝沼に根差したワインづくり
3代目の内田多加夫社長のもと、ロリアンワインが情熱を注いでいるのは、勝沼に根差したワインづくりだ。
筆者がワイナリーを訪問した際に、多加夫社長は「これから先、気候条件が変わって大手のワイナリーが勝沼を去ることがあっても、私たちはこの土地でワインをつくり続けていく」と、ワインづくりへの思いを語ってくれた。
シャルドネやメルローなどの欧米品種にも力を入れているが、最も注力しているのは日本ならではのぶどう品種でつくるワインだ。甲州やマスカット・ベーリーAを使用して、バラエティ豊かなワインを生み出している。ワイナリーのショップで注文できる「飲み比べセット」で、同じ品種が産地や醸造方法の違いでどのように味わいを変えるのかを確かめてみるのもオススメだ。
ワインはぶどうの出来でその8割が決まるため、ワインづくりは農業であるという信念のもと、自社畑でのぶどう栽培や一貫性のあるワインづくりを追求する。「風土に合ったぶどうづくり」に取り組み、収穫期には糖度と酸度が高いベストなタイミングで収穫できるよう、機械による数値の管理と経験によって慎重に収穫時期を見極めている。
おすすめワイン
国内外で高い評価を受けているロリアンワインだが、お値段はかなりリーズナブル。品質の高さ、そしてコストパフォーマンスの高さが魅力だ。
ロリアン 勝沼甲州
勝沼町産の甲州を100%使用し、シュール・リー製法でつくられた1本。『美味しんぼ』や『神の雫』でも取り上げられた、ロリアンワインのフラッグシップワインだ。特に2016年ヴィンテージは、Sommelier Wine Awards 2018とDecanter World Wine Awards 2018でそれぞれ銀賞を受賞している。
和食だけでなく、洋食にも合わせやすい。魚料理の他に、ジューシーな肉料理にも合わせられる万能な1本。ワイン初心者でも親しみやすい味わいだ。
価格:1850円(税別)
ロリアン セラーマスター マスカット・ベーリーA
厳選したマスカット・ベーリーAを使用し、丁寧に醸造した1本。マスカット・ベーリーAらしいイチゴやフランボワーズの香りがあり、鮮やかな赤色が華やかだ。
やや甘口で程よい酸味と果実味があって飲みやすく、豚肉のソテーや焼き鳥(たれ)、煮物料理など、濃厚な料理にも負けない味わいのあるワインだ。
2017年ヴィンテージ(2019年7月時点で完売)は、ジャパン・ワイン・チャレンジ2018で金賞、女性が審査員を務める日本のワインコンクール”SAKURA” JAPAN WOMEN`S WINE AWARDS 2019(サクラアワード2019)でダブルゴールドを受賞している。
価格:1800円(税別)
ロリアン セラーマスター 甲州
山梨県産の甲州を使用。フルーティでやや甘口の柔らかい口当たりで、酸味とのバランスが良いワイン。
2017年ヴィンテージは、ジャパン・ワイン・チャレンジ2018で金賞、Decanter World Wine Awards 2019とSommelier Wine Awards 2019でそれぞれ銀賞を受賞している。
価格:1750円(税別)
ワイナリーを楽しむ
ロリアンワインで感じたのは、訪れた人をもてなすワイナリーだということだ。おいしいワインでワイン愛好家を楽しませるだけでなく、ワイナリー見学には多彩なコースがあり、ボトル詰めやぶどう踏み体験、ガラス工房での宙吹き体験などがあり、親子連れで楽しめる。
●白百合醸造(ロリアンワイン)
電話:0553-44-3131
住所:山梨県甲州市勝沼町等々力878-2
営業時間(ショップ):9:00~16:30 ※土日は状況により早く閉店する場合あり
定休日:年中無休 ※年末年始などに臨時休業の場合あり
アクセス:JR中央本線勝沼ぶどう郷駅、同線山梨市駅から車で約10分
※徒歩10分圏内に、中央葡萄酒(グレイスワイン)、大和葡萄酒、あさや葡萄酒(麻屋葡萄酒)などがある。
ワイナリー見学
ぶどう畑の見学からワイン工場の見学、数種類のテイスティングまで、時間をかけてたっぷりと楽しめる「スペシャルワインツアー」は、「ベーシックコース」「作り手コース」「オーナーズコース」という3つのコースから選ぶことができる。
どんな話を聞きたいのかによってコースが選べるため、ワイン初心者から愛好家まで楽しめるのがうれしいポイントだ。
【スペシャルワインツアー】
開始時間:10:00、14:00
所要時間:60分程度
定員:2~15人(3日前までに要予約)
■ベーシックコース
開催日:平日(除外日あり)
参加費:1300円(税別)
■作り手コース
開催日:2月下旬~6月の平日(除外日あり)
参加費:2000円(税別)
■オーナーズコース
開催日:スケジュール要確認
参加費:3000円(税別)
予約は当月のみ可能で、こちらのページから申し込みができる。
この他に、無料のワインツアーも開催されている。ぶどう畑からスタートし、10分間でコンパクトにワインが完成するまでを学ぶことができる。日本初のグラッパ蒸留機の見学も含まれている。
【無料ワインツアー】
開催日:平日
開始時間:10:00、14:00
所要時間:10分程度
ワイナリーでの試飲システム
ロリアンワインでは、グラス1杯からプレミアムワインの試飲ができる。手軽にロリアンワインのこだわりを味わえる、テーマごとの「飲み比べセット」も豊富だ。
「山梨の赤白飲み比べセット」(300円)では、ロリアンワインのフラッグシップワイン「ロリアン 勝沼甲州2017」と、サクラアワード2019でダブルゴールドを受賞した「ロリアン セラーマスター マスカット・ベーリーA」がそれぞれ30mlずつ楽しめる(2019年6月時点)。
他にも「山梨の赤ワイン3種飲み比べセット」「辛口甲州3種飲み比べセット」など、さまざまなセットが用意されている。休日には、テイスティングできるワインの種類がさらに増えるという。
2つの体験コース
■ワインのボトル詰め体験
ショップの奥では、ワインのボトル詰めからコルクの栓打ち、キャップシール貼り、そしてラベルづくりまで体験できるコースを用意している。
とても簡単な作業なので、子どもも楽しめる体験コースだ。ラベルは現地で用意されている既存ラベルに文字やイラストを入れるか、あらかじめ自分で作成したオリジナルラベルの持ち込みも可能。旅行の記念やプレゼントづくりにぴったりだ。
ただし、生ワインを詰めるため熟成には向かず、賞味期限は1週間ほどとなっている。
開催日:毎日
参加費:2000円(税別、ワイン代含む)
所要時間:20分程度
予約:前日正午までに要予約
【ぶどう踏み体験】
かつては足で踏んで行われていた「ぶどう踏み」。タイムスリップした気分で、桶に入ったぶどうを実際に踏む体験ができる。踏んで出た果汁は試飲させてもらえるので、ワインになる前のぶどう果汁を味わう貴重な機会でもある。こちらも家族で楽しめるコースだ。
実施期間はぶどうの収穫に合わせて変動するので、冬季から収穫の始まる7月中旬ごろまでは実施されていない。詳細は要確認。
開催日時:期間中の平日10:30(お盆休みを除く)
参加費:1グループ5000円(税別)、人数が増えるごとに1000円(税別)追加
所要時間:20分程度
1グループ実施人数:最小5人(3人でも5000円で実施可)、最大30人(団体)
※どちらの体験も、予約はメール(reserve@shirayuriwine.com)または電話(0553-44-3131)、FAX(0553-44-3133)で前日正午まで受け付ける。
※土日祝、前日正午以降の予約はTEL(0553-44-3131)で受け付けとなる。
※予約時に、名前、日時、参加人数、作成するボトルの本数、当日連絡が可能な電話番号が必要となる。
これらの体験コースの他にも、ガラスの宙吹き体験や農作業体験なども実施しており、家族でワイナリーを楽しみたい。