「カナール・デュシェーヌ(Canard Duchene)」というフランスのシャンパーニュ・メゾンをご存じだろうか? フランス最北のワイン産地モンターニュ・ド・ランス地区のプルミエ・クリュに格付けされたリュード村で、1868年に設立されたメゾンだ。2018年には150周年を迎えており、2019年に150周年を迎える「モエ・エ・シャンドン」とほぼ同じ歴史を誇っている。
日本での知名度はあまり高くないが、本国のフランスでは、知らない人はいないほど有名だ。今やカナール・デュシェーヌのワイン生産量は年間400万本ほどあり、フランスでは10位にランクインしている。
このカナール・デュシェーヌのワインを味わう試飲会が、2019年10月29日にANAインターコンチネンタルホテル東京で開催された。当日は、カナール・デュシェーヌの醸造責任者を務めるローラン・フェドゥ氏が来場。新製品の「ブリュット・ミレジメ 2012」のほか、「ブリュット」「キュヴェ レオニー ブリュット」「キュヴェ レオニー ブリュット ロゼ」などの自信作を披露した。
ローラン・フェドゥ氏とメゾンの躍進
1985年からシャンパーニュとボルドーワインをつくり始め、2003年にカナール・デュシェーヌに参画したフェドゥ氏。実は、他のメゾンでも採用されている「ジェッティング」という、瓶詰め後のワインの酸化を防ぐ手法を開発した才気あふれる人物である。
【関連記事】シャンパーニュの奥深さに製法から迫る! 味を決めるアッサンブラージュとドサージュについて老舗メゾン醸造責任者が解説
カナール・デュシェーヌの躍進に、フェドゥ氏が果たした役割は大きい。フェドゥ氏の就任時、メゾンの年間生産本数は220万本ほどで、2019年の年間生産本数の半分程度しかなかった。今では約35%が輸出されているが、当時は生産したワインの99.9%が、フランス市場向けだったという。
“最高のヴィンテージ”と絶賛する「ブリュット・ミレジメ 2012」
そんなフェドゥ氏の手で生み出されたワインが、今回の試飲会で試供されている。その1つが、新製品の「ブリュット・ミレジメ 2012」だ。
「ブリュット・ミレジメ 2012」は、ピノ・ノワールを46%、シャルドネを41%、ピノ・ムニエを13%ブレンドしている。
フェドゥ氏は、「『ブリュット・ミレジメ 2012』は最高のヴィンテージだ。ピノ・ノワールとシャルドネのバランスが良く取れている。最初に香りを感じた時には、どちらのぶどう品種が中心になっているのかが、全く分からないくらいだった」と言う。
さらに、香りと味わいについて、「焼きたてのパンのような香ばしさもあるが、それよりも柑橘類、グレープフルーツやコンフィのようなニュアンスが感じられる。味わいは非常にまろやかで、余韻がびっくりするほど長く感じられる」とその特徴を語った。
ブラインドテイスティングで割合を決める「ブリュット」
カナール・デュシェーヌのブリュットは、ブラインドテイスティングを行い、毎年ブレンドを決める。そのため、年によって割合は違うという。
ただし、ピノ・ノワールが約4割、ピノ・ムニエが約4割、シャルドネが約2割と、およその目安となる比率はあるとのこと。また、最低でも60のクリュ、4種のヴィンテージをブレンドしてつくっている。
ブリュットに使うリザーブワインの率も年によって変わる。基本的には30%くらいが多いが、40~50%のリザーブワインを入れる年もあるという。例えば、最近の2017ヴィンテージのブリュットは、リザーブワインが50%含まれている。
フェドゥ氏はブリュットについて、「カナール・デュシェーヌのワインの中では、フランスで1番売れている。スタイルは食前向けだが、フルーティーなフレッシュ感があり、食中でも楽しめる。いろいろな楽しみ方ができるシャンパーニュだ」と語っている。
なお、記者の感想としては、今回試飲したワインの中では、「ブリュット・ミレジメ 2012」が群を抜いておいしいと感じた。柑橘系が香る辛口の中に、ほんのりとバニラの甘さと樽の香りが溶け込んでいて、すっきりと飲みやすいのに、後味がまろやかに残る。そんな「ブリュット・ミレジメ 2012」だが、2019年12月中旬の販売開始、百貨店などで取り扱われる予定。ぜひ試してみていただきたい。