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昨今、空前ともいわれるロゼワインブームが続いている。そして、そのブームをけん引するのは、フランス・プロヴァンス地方のロゼだ。フランス国内で最も古いワイン産地であり、その生産量の90%がロゼというプロヴァンス。その裏には、品質向上に向けた熱心な研究、そしてつくり手たちの努力がある。
今回、ワインバザール編集部では、ソムリエの五鬼上泰樹氏とプロヴァンスワイン委員会広報担当・SOPEXA JAPONの恩田ひとみ氏に取材を行い、プロヴァンスのロゼワインについて、色々な角度からその魅力を紹介してもらった。
ワイン産地としてのプロヴァンス
プロヴァンスは、コート・デュ・ローヌの南部に位置し、一般的にアヴィニヨン以南を指す。フランスの代表的な港町であるマルセイユから、海沿いにイタリア国境近くのニースまで広がる。
典型的な地中海性気候により、ドライで温暖、かつぶどうが生育するのに十分な日照量がある。空気が乾燥していることからカビが発生しにくく、農薬を使う必要が少ないため、有機栽培にうってつけの産地だ。
プロヴァンスで生産されるぶどう
プロヴァンス地方で栽培されるぶどう品種は、北側に位置するコート・デュ・ローヌと似ている。最も多いのがグルナッシュ(37%)で、次にサンソー(17%)、シラー(17%)、カリニャン(8%)と続く。黒ぶどうの収穫量が大半を占めており、赤ワインも生産されている。ロゼワインについては、2種類以上のぶどうをブレンドしてつくることが義務付けられており、これがつくり手による味わいの個性を生み出している。
世界が追随する、プロヴァンススタイルのロゼ
プロヴァンスのロゼは、非常に爽やかで、飲み心地が軽いのが特徴だ。それは、淡い桜色、サーモンピンクといったワインの外観にもよく表れている。
世界にはもっと赤ワインに近い印象の色味・味わいを持つロゼワインもあるが、プロヴァンスワイン委員会の調査によると、ここ数年でプロヴァンス・ロゼワインの色調に近いロゼワインが、世界的に増えているという。
その背景には、プロヴァンス・ロゼワインの品質が飛躍的に上がり、結果として輸出量が増えたこと、またその味わいが世界で好評を博していることが見て取れる。
持続可能なワインづくりに向けた、プロヴァンスの試み
先に述べたように、プロヴァンスの気候は農薬を減らしたぶどう栽培に向いている。また、フランスの農業全般がよりサステナブル(持続可能)な栽培を目指していることもあり、プロヴァンスでも、環境重視のスタンスに立った施策が多く見られる。
サステナブルな取り組み
具体的には、次のような取り組みがなされている。
・生物の多様性の維持(ぶどうを生育させる畑、土壌などの生物を守る)
・殺菌・殺虫剤の戦略(科学的なものからハーブを主体としたプレパラート剤への移行)
・施肥の管理(動物を放し飼いにして雑草を食べてもらい、そのフンを堆肥として活用するなど)
・水源の管理(主に灌漑)
現在、プロヴァンスのぶどうの20%が有機栽培されており、その数値を2024年に60%、2030年には100%まで上げることが目標とされている。
ロゼワインブームをひもとく
世界のロゼワインの消費量は大きく増加しており、2002年~2017年までの15年間で増加した量は30%にもなる。また、全体のワイン消費量におけるロゼワインのシェアは、2002年に8.4%だったが、2017年には10.3%まで伸びている。
では、なぜそこまでロゼは、飛躍的にファンを増やしているのだろうか。そのあたりをひもといてみよう。
幅広い料理とのペアリングが可能
ロゼの強みは、その色合いからもうかがえるように、白ワインのようにも赤ワインのようにも使えることだ。フレッシュな酸味はビネガーを使った前菜に、程よいボリューム感は豚肉などの肉料理にぴったり。また、果実の程よい甘みは甘酸っぱいアジア料理に、フィニッシュに感じる苦味はルッコラや春菊など香りの強い野菜、山菜などにも合わせることができる。
繊細な味わいを楽しむ和食、スパイシーさを楽しむアジア料理にも寄り添えるロゼは、まさに万能選手といえよう。
SNS時代に“映える”外観
ロゼのかれんで華やかな外観は、どんなシーンにも花を添える。その外観により、アメリカを中心にロゼブームがさらに盛り上がっているのは事実だ。
アメリカでは、ロゼを外で楽しむ「ピンクニック」や、ロゼワインとロゼ色の肉を楽しむ「肉ロゼ」などがSNSで拡散され、大きなムーブメントとなった。イメージによる情報拡散が大きな宣伝となる今の時代、ロゼのチャーミングな見た目に心躍る人が多いということだろう。
このように、今やロゼワインは、ワイン愛好家にとって見逃せない存在になっている。そして、その市場の成長をけん引しているのは、フランス・プロヴァンスのロゼといえるだろう。「ロゼは甘い」「ロゼは女性っぽい」といった先入観にとらわれず、老若男女がロゼを楽しむ日も近い。