コラム

今さら聞けない「エシカル」とは? ワインで実現できるエシカルライフ ~エシカルライフ体験会

   

近年、耳にすることが多くなった「エシカル(倫理的な)」というキーワード。「自分(消費者)にとってメリットがあるか」というだけではなく、エシカルな目線で商品やサービスを選ぶ「エシカル消費」という考え方が広まりつつある。

ワインで実現できるエシカル消費にはどんなものがあり、どんなメリットがあるのだろうか。2020年2月26日にメルシャンが開催した「エシカルライフ体験会」から探ってみよう。

「エシカル」とは

まず登壇したのは、メルシャンの山田一幸さん。同社が掲げる「わたしにイイこと、みんなにイイこと。」の根本にあるエシカルライフについて語った。

「エシカル消費」とは

エシカルとは、本来は英語で「倫理的な」という意味。最近では「社会や環境などへの配慮」といったニュアンスで使われている。

地域の活性化や雇用なども含め、人や社会、環境にとってメリットがあるかを考えて、サービスや製品を選ぶことが「エシカル消費」だ。

《エシカル消費の例》
・地産地消
・リサイクル素材を使った製品を選ぶ
・フェアトレード商品を選ぶ
・障がい者の支援につながる商品を選ぶ
・オーガニック商品を選ぶ

オーガニックワインでエシカルライフを

自然環境に配慮したワインづくりに関わる人々が手掛けるオーガニックワインを選ぶことも、エシカル消費の1つだ。

オーガニックワインとは、農薬・化学肥料・除草剤を使わずに育てたぶどうを使用し、認証機関の審査を通過して承認されたワインのこと。醸造についても規定されている。

世界のオーガニックワイン消費量は順調に増加しており、2013年に4.4億本だった消費本数は、2023年には10億本近くまで増える見込みだ。フランスのトップワイナリーもビオディナミに取り組み始めており、オーガニックはワインづくりの流れの1つになってきている。

日本でも2019年の輸入スティルオーガニックワインの販売金額は、2014年と比べて117%と伸長。メルシャンでは、2019年度の販売数量が前年比164%と好調だったこともあり、2020年は2019年比で3倍の販売数量を目指している。

若い世代を取り込むキーワード

日本のワイン市場では、20代から30代をいかに取り込むかが課題となっている。若い世代は、教育をきっかけにSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が浸透し、エシカルでサステナブルなライフスタイルが好まれる傾向があり、オーガニックワインは若い世代がワインの魅力を知る入り口になるのではないかと期待されている。

ライフスタイルが美しさをつくる

続いて登壇したのは、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会(HBA)の岸紅子代表理事。

同協会では、高いレベルの健康や生命感を「美しさ」と捉えており、美しさを求めるのなら高いレベルの健康が大切だと語った。

高いレベルの健康や美しさを保つには、食べる、寝る、運動といったライフスタイルを自分でつくらなくてはいけないが、「忙しい」などの理由でつい後回しにしがちだ。そして、地球に対しても同じく、やらなくてはいけないことを後回しにしてしまいがちだが、「1人でも多くの方がエシカルや自分の健康に向き合ってほしい」とまとめた。

アウトドアブランドが食品を扱う理由

エシカルライフ体験会には、アウトドアブランドとして知られるパタゴニアの近藤勝宏さんも登壇した。

パタゴニアは、主にオーガニックを中心とした食品ビジネス「パタゴニア プロビジョンズ」を数年前にスタートさせている。同社の方針は「私たちは地球を救うためにビジネスを営む」というもの。

パタゴニアは、1996年に全ての製品をオーガニックコットン製に変えている。当時はまだオーガニックという言葉も広がっておらず、原材料を集めるのも大変だったそうだ。それでも地球を守りながらビジネスを営むために行った変更だった。

地球を守るための食品ビジネスは、パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナード氏から受け継がれた考えでもある。「新しいジャケットは数年に1度しか買わない人も、1日3度の食事をする。我々が本気で地球を守りたいのなら、それを始めるのは食べ物だ」という趣旨の言葉を彼は残している。

気候変動の4分の1は食品産業に原因があるといわれているが、土や空気、水をきれいな状態に保ち、野生動物を守るような方法を選べば、食品産業が問題を生み出すのではなく、環境問題の解決策になるのではないかとの考えから、同社は食品ビジネス「パタゴニア プロビジョンズ」をスタートさせた。

この体験会では、ビオディナミ農法でワインづくりをしているドメーヌ・カズのリオネル・ラヴァイユ代表取締役社長も登壇し、エシカルなワインづくりについて語った。

ドメーヌ・カズの語るワイン哲学について、そしてパタゴニア プロビジョンズの食品とのマリアージュの体験会も含むレポートは、別記事で紹介する。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ