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メルシャンは2020年2月26日、日本ホリスティックビューティ協会との共催イベント「エシカルライフ体験会」を開催した。このイベントでは、フランスのルーション地方で代々ワインづくりをしている「ドメーヌ・カズ」の代表取締役社長リオネル・ラヴァイユ氏が登壇した。
ラヴァイユ氏は、自身のワイン哲学、そして「パタゴニア プロビジョンズ」のオーガニック食品とのマリアージュへの総評を、情熱たっぷりに披露した。
オーガニック発祥の地・ルーション地方
ドメーヌ・カズのあるルーション地方は、フランスの最南端にあり、スペイン国境と接しているワイン産地だ。三方を山に囲まれており、東部は地中海に面している。その中心地リヴザルトに、1895年に創立されたのがドメーヌ・カズだ。
晴れの日が多く乾燥しており、風が強いというルーション地方の気候は、ぶどう栽培に適している。また、オーガニックやビオディナミに向いており、ルーションはフランスオーガニック発祥の地ともいわれている。
土地に対するラヴァイユさんの思い入れは強い。「私たちはワイナリーである前にファーマーである。なので、家族や土地のことを考えていかなくてはいけない」と語った。
そもそも、ドメーヌ・カズがビオディナミを取り入れたのも、ぶどう畑で働く人への影響を懸念し、人にも環境にも優しい農業が必要であると考えたからだ。
ビオディナミとは
ビオディナミ(生力学農法)とは、化学肥料を使わず、有機肥料を使用する(または、無農薬でぶどうを育てる)ビオロジック農法に、「月と地球の位置関係を記したカレンダーに合わせて、農作業を行う」「自然由来のプレパラシオン肥料を使用して土壌を活性化する」という条件を加えた農法だ。「シュタイナー教育」の創始者であるルドルフ・シュタイナー博士による「農業講座」が基礎となっている。
ラヴァイユさんはビオディナミについて、「月と地球との位置関係を利用した農業と聞くと、神秘的なものだと考える人もいるかもしれない。難しいものではなく、ぶどうの樹の生命力をいかに強くするかがビオディナミの基本的な考え方だ」と語る。
ぶどう畑の周辺に、コウモリにとって良い環境をつくり、ぶどうに悪影響を与えるクモなどを食べてもらうなど、ドメーヌ・カズでは自然と共生したぶどう栽培を行っているそうだ。
フランスで最大級のビオディナミ畑
祖父の世代がぶどう畑を取り仕切っていた1970~80年代までは、ドメーヌ・カズでも農薬を使用していた。90年代に入って土の状態を調べると、かなり状態が悪くなっていることが判明。農薬を使い続けると、孫たちに確かな品質のぶどうの樹を残せないと考えた。
ビオディナミに転向した当初は、そのような考え方がまだ浸透しておらず、変な目で見られることや批判されることもあったそうだ。それでも土や周りの環境を大切にしながら続けてきたことで、次第に質の良いワインをつくれるようになったという。
現在では、ドメーヌ・カズが所有するビオディナミの畑は220ha。フランスで最大級の規模となった。
ビオディナミのワインをリーズナブルに
ドメーヌ・カズのワインは、フランスのビオディナミワインの中では比較的安い価格で購入できる。それには、「ビオディナミの良さをリーズナブルな価格で提供することで、消費者に“環境に優しく高品質なビオディナミワイン”という選択肢を広げたい」というカズの思いが表れている。
ドメーヌ・カズは、大規模なワイナリーではなく、自分たちの畑で栽培したぶどうでワインをつくるクラフトワイナリーであり、今後も「顔の見える生産者」であり続けるつもりだという。
ドメーヌ・カズ×パタゴニア プロビジョンズ
エシカルライフ体験会では、ドメーヌ・カズのワインとパタゴニア プロビジョンズが提供するオーガニック食品とのマリアージュも紹介された。
ビオディナミでつくられた2本のワイン
合わせたワインは次の2本だ。ワインの解説はラヴァイユさんによるもの。
■カノン・デュ・マレシャル ブラン(白)
マスカット・オブ・アレキサンドリア60%、ミュスカ・ア・プティ・グラン20%、ヴィオニエ20%
食前酒やタパスと合わせるのにぴったりのワイン。フルーティで酸もしっかりしている。樽を使わず、シンプルな味わいに仕上げたビオディナミワインがオーガニックフードに良く合う。シンプルな味わいをつくるのはなかなかできないことだ。
地球温暖化が進むと、しっかりした酸を持つワインをつくるのは難しいが、酸のあるワインに仕上がっているのはビオディナミのおかげかもしれない。
■カノン・デュ・マレシャル ルージュ(赤)
シラー50%、グルナッシュ50%
ソフトなタンニンを持ち、スパイシーで果実味が豊かな飲みやすいワインだ。
マリアージュしたメニュー
今回、ドメーヌ・カズのワインに合わせたのは、パタゴニア プロビジョンズのオーガニック食材を使用したメニューだ。プロサーファーであり、小田急線の片瀬江ノ島駅近くでカフェレストラン「Natural Law」を経営する大野裕史シェフが手掛けた。
●サントーニャ・サバのオリーブオイル漬け+レモンケイパー+ポテトのオープンサンド(写真上)
●ムール貝のオリーブオイル漬け+レモンハーブ+ライスサラダ(写真中央左)
●オーガニック・レッド・ビーン・チリ・カナッペ(写真中央右)
●いちじく(写真下)
上の2つは白ワインと、3つ目は赤ワインとのマリアージュを狙ったメニューだ。
海に近いルーションでつくられる白ワインには塩っぽさがあり、シーフードとの相性は抜群。さらにオーガニック・レッド・ビーン・チリ・カナッペは赤ワインと水を使って戻しているので赤ワインと合わせやすい。
いちじくについては、マリアージュを狙ったものではなかったが、ラヴァイユさんは「いちじくと甘口のワインを合わせることはあるが、辛口の赤ワインとはあまり合わせない。しかし、塩みと深い味わいや香りがある赤ワインに甘いいちじくがよく合う。どちらもフルーティなのがいい」と、意外な組み合わせを堪能したようだ。