知識がなくても味わえる。でも、知識が増えれば楽しみの幅がさらに広がるワイン。ワインについて学ぶには、本を読むのが一つの手だが、たくさん出ているワイン本の中から選ぶのは大変だ。
今回は、ワイン初心者にも楽しめるワイン本として、ワインのプロ・境徳子氏が推薦してくれた、『10種のぶどうでわかるワイン』を紹介したい。境氏は「田辺由美のWINE SCHOOL」東京校の主任講師であり、J.S.A.認定シニア・ワインエキスパートという立場でワインの魅力を発信している。境氏によると、「ワインを識るには、ぶどう品種を知るのが近道」とのこと。
著者は日本を代表するトップソムリエ
『10種のぶどうでわかるワイン』の著者は、日本を代表するトップソムリエの石田博氏。1990年にホテルニューオータニに入社し、1994年に同ホテルのレストラン「トゥールダルジャン」に配属されてソムリエとしての道を歩み始めた。2000年には、ソムリエのオリンピックと呼ばれる世界最優秀ソムリエコンクールで3位に入賞。田崎真也氏(1995年優勝)に続き、日本人として2人目の入賞を果たした。現在は、日本ソムリエ協会の副会長を務めている。
品種ごとに経験を交えて解説
この本では、主要なワイン用ぶどう10品種を取り上げ、それぞれの特徴や産地などについて分かりやすく解説している。初心者がワインの知識を深める最初のステップとして手に取ると、ワイン用ぶどうへの理解と愛着を深めることができる。
例えば、リースリングの独特な香りはペトロール香(重油香)と表現されるが、それを「プラスチックの香り」、ソーヴィニヨン・ブランの麝香(じゃこう)を「カクテルのキールが近い」とするなど、他にはない表現で説明してくれるため、分かりやすい。また、味わいや香りについては、なぜその特徴が出るのかも説明してくれているので、ワインエキスパートの二次試験(テイスティング)対策にも重宝する。
ぶどう品種以外にも、ワイングラスの選び方、料理とワインを合わせるときの二大原則についてなど、ワインの知識を深められるコラムも充実している。石田氏自身の経験に基づいた記述も多く、学ぶための本としてだけでなく、読み物としても楽しめる。石田氏によると、ワインのテイスティングをしていても「ピンと来たような、来ないような」時期があったそうで、トップソムリエにもそんな時期があったのかと、ワインエキスパートを目指す人にとっては、勉強する励みにもなるだろう。
取り上げられている10品種
この本では白ワイン用5品種、赤ワイン用5品種が取り上げられている。
【白ワイン用品種】
・シャルドネ
・リースリング
・ソーヴィニヨン・ブラン
・シュナン・ブラン
・甲州
【赤ワイン用品種】
・カベルネ・ソーヴィニヨン
・メルロー
・ピノ・ノワール
・シラー
・グルナッシュ
『10種のぶどうでわかるワイン』
著者:石田博
出版社:日本経済新聞出版
定価:1650円(税込)
発行年月:2013年8月