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2021年1月18日、メルシャンは2021年の事業方針発表記者会見をオンラインで開催した。会見では2020年の市場や同社の取り組みを振り返るとともに、2021年の事業方針、マーケティング戦略が語られた。
本記事では、2021年度のマーケティング戦略について取り上げる。
2021年のマーケティング方針
2021年度の販売計画、戦略などのマーケティング方針については、同社マーケティング部長の前田宏和氏から発表があった。2021年はワインファンを増やす「間口拡大」と、同社のDNAとも言えるビジョン「日本を世界の銘醸地に」を具現化するための取り組みに注力するという。
ワインファンを増やす、間口拡大の取り組み
メルシャンでは、ワインファンを増やす、間口拡大の取り組みについて、2020年の3つの実績から手応えを感じているという。
1つ目は、2019年3月から販売を開始した「おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル」シリーズだ。若年層の支持を集め、2020年の販売数量は前年比で約1.5倍となる14.5万ケース(500ml×12本換算)を達成している。2つ目は「メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ホップ」で、2020年6月の発売以来、こだわりを持ってお酒を選ぶ20~30代の若年層から多くの支持を集め、累計販売数28万本(500ml×12本換算)を突破している。3つ目はオーガニックワインの「メスタ・オーガニック」。2020年1月~10月は、どの月も販売数量が前年比を上回る水準で伸張している。
こういった動きを踏まえ、2021年の間口拡大の取り組みとして「ワイン選びの新たな選択肢を提供する」というテーマを掲げた。昨年に引き続き、カジュアルスパークリングやオーガニックワインに注力するほか、新しい価値を提供できるよう検討を進めているという。
前田氏は、「平日飲むには覚悟がいる、複数人でないと飲めない、といったワインのイメージを変えて、ワインをより手軽にさまざまなシーンで楽しんでもらいたい」と新商品を紹介した。
人気のカジュアルスパークリングをさらに進化
新商品としてまず紹介されたのが、ボトル缶で発売する「おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル」「同 グレープフルーツシードル」だ。果汁100%を使用し、果実そのままのおいしさが楽しめる人気商品「おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル」シリーズは、これまで瓶ボトルで販売してきた。これをさらに手軽に試せるように、290mlのボトル缶入りをコンビニエンスストア限定で展開する。発売日は2021年3月30日。
また、同社の若手醸造家が手掛ける新感覚のクラフトスパークリングワイン「メーカーズレシピ」シリーズからは、第2弾となる「メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ピール」を2021年3月2日に発売する。初の試みとして生のレモン果皮(ピール)をワインに浸漬しており、今までにない香りとほろ苦さが加わり、爽やかでぜいたく感のある味わいに仕上がっている。
スパークリングワインの販売額のうち、カジュアルスパークリングが占める割合は、2019年1月~6月の約1.5%から2020年7月~11月には3.5%を超えるなど、急拡大している。メルシャンは2021年のカジュアルスパークリングの販売数量目標を、前年の約2倍となる26万ケース(720ml×12本換算)と見込んでいる。
オーガニックワイン飲用層の広がり
さらに近年、地球環境や人、社会、地域に配慮した消費行動「エシカル消費」が注目されている。2020年はコロナ禍の中で健康や環境への関心がより高まったこともあり、メルシャンでは「自分にも、地球にも優しいものを飲みたい」という消費者意識は今後も広がっていくと見ている。
オーガニックワインについては、全世代平均の飲用率が前年比140%と増えている。特に20代男性が同440%、20代女性が同150%と、若年層で顕著に伸びている。
また、オーガニックワインの2020年の販売増加率を見ると、市場は前年比112%、メルシャンは同187%だった。今後も飲用層や市場のさらなる拡大が見込まれることから、同社は2021年の販売目標を前年比約2倍の18万ケース(750ml×12本換算)としている。
日本を世界の銘醸地に ――2021年、メルシャンの3つの取り組み
シャトー・メルシャンのビジョンである「日本を世界の銘醸地に」。このフレーズは、元メルシャン藤沢工場長で“現代日本ワインの父”と呼ばれる故・浅井昭吾氏の想いを受け継いだものだ。浅井氏は、「メルシャン1社で良いワインをつくっても、地域全体でワイン産地として認められなければ、将来日本ワインの発展はない」と語っている。
2020年のコロナ禍の中、メルシャンはオンラインイベントやインスタグラム上でのキャンペーンを通じて、人と人、人と地域をつなぐ取り組みを実施してきた。2021年も「日本を世界の銘醸地に」をビジョンとして掲げ、そういった取り組みをさらに加速させていく。
地域や生産者と共生する取り組みを進化
2021年は東日本大震災の発生から10年目であるとともに、シャトー・メルシャンのぶどう産地の1つである福島県会津美里町新鶴(にいつる)地区での取り組みが45年を迎える。メルシャンでは、この2つの節目を念頭にした取り組みや、「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーフェスティバル」のさらなる進化、「ワールド・ベスト・ヴィンヤード2020」に日本初選出で世界第30位、ベストアジアを獲得したシャトー・メルシャン 椀子ワイナリーによる、千曲川エリア活性化への貢献といった計画がある。
日本ワインの魅力を世界に発信
メルシャンでは、これまでにもデジタルを活用した情報発信をしてきたが、2021年は「日本を世界の銘醸地に」というビジョンを踏まえて、日本人が自国のワインを誇りに思えるような施策に注力していく。例えば、SNSや海外向けコンテンツなど、グローバルへの発信力を強化したり、国内外でマスタークラスを開催する。
会員制のアンバサダークラブを始動
他に、日本ワインの情報発信強化を目的とした、シャトー・メルシャンの新たな施策「シャトー・メルシャン アンバサダークラブ」を始動。飲食店や小売店、ワイン業界関係者などを対象とした会員制クラブで、2021年1月21日から開始する。
同クラブでは、日本ワインに関する「栽培、醸造、研究」「世界のワイントレンド」といった幅広い情報を、シャトー・メルシャンの醸造家がメールニュースや同クラブ会員向けセミナーを通じて発信する。会員に「アンバサダー」として、日本ワインの情報を消費者に発信してもらうことにより、日本ワインの飲用機会を創出するのが狙いだ。
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会見の最後には、つくり手として、シャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘氏と、メルシャン藤沢工場長の大金修氏が登場。安蔵氏は日本ワインについて、「われわれのモットーは、“日本を世界の銘醸地に”ということ。世界のワインを語る時に、日本のワインが必ず入るような未来を目指している」とコメント。大金氏は、「1人当たりの年間ワイン消費量は3L程度と、まだまだ日本にワイン文化を発展させる余地はある。手頃な値段で安心安全なワインを届けることで、ワインファン、メルシャンファンを増やしていきたい」と語っていた。