コラム

家庭用ワインが伸張、特に若年層で間口が拡大 ――サントリーワイン2021年事業方針記者会見から

サントリーワインインターナショナル(SWI)は2021年1月20日、2021年の事業方針記者会見を開催した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、会見はサントリーホールでの発表と併せて、オンラインでも配信した。

会見では、2020年の国内ワイン市場やSWIの実績、2021年に実施する新たな取り組みについて発表があった。本記事では、主に2020年のサントリー国内ワイン事業の実績について取り上げる。

コロナ禍で酒類市場が家庭用へとシフト

はじめに、サントリーBWS代表取締役社長の鳥井信宏氏から、コロナ禍での酒類業界や消費者の動向について話があった。

サントリーBWS代表取締役社長の鳥井信宏氏

鳥井氏は、コロナ禍を背景に酒類市場が業務用から家庭用へとシフトしたこと、消費者の健康志向の高まり、酒類商品の多様性が急加速していることを挙げ、「お酒が持つ価値や、人々の暮らしを豊かにする生活必需品としてのお酒の役割を再認識している」と述べた。

また、コロナ禍では外出自粛により家で料理をする人が増え、献立が多様化したことで、お酒についてもさまざまなカテゴリーを試す傾向が顕著になった。こうした流れから、ワインを飲む年齢層が広がったことについて、鳥井氏は「改めて可能性を感じている」という。

締めくくりとして、サントリーグループの創業事業であるワイン事業を担うSWIの新たな代表取締役社長として、吉雄敬子氏を紹介。2021年1月1日に代表取締役社長に就任した吉雄氏について、「ビール、飲料などさまざまな商品について経験が豊富で、これからも常にお客さま視点で物事を考え、新たな価値を提案していってくれると期待している」との言葉を寄せた。

2020年国内ワイン市場とサントリーの実績

続いて吉雄氏から、2020年の国内ワイン市場と同社の実績について報告があった。

2020年の国内ワイン市場について、同社では数量ベースで前年比93%と推定しており、前年を下回る結果となった。内訳は、業務用の影響を大きく受けた輸入ワインが同89%、伸張した家庭用ワインが多くを占める国産ワインは同101%となっている。

サントリーの2020年の国内ワイン事業については、「SWI(国内単体)」「ファインズ」「モンテ物産」「岩の原葡萄園」の4社の売り上げが419億円だった。

SWI、2020年の振り返り

この会見では、2020年の振り返りとして、4社のうちSWI単体の実績が発表された。

2020年は、国産カジュアルワインが473万ケース(前年比112%)とさらなる拡大を見せ、新需要創造への取り組みとして「赤玉パンチ缶」が35万ケース(同183%)と好評だった。輸入ワインは191万ケース(同83%)と伸び悩んだものの、ポートフォリオの強化が功を奏し、輸入オーガニックワインは5万ケース(同203%)と大きく伸張。これらに岩の原葡萄園を含む日本ワインの5万ケース(同88%)を合わせて、SWI国内単体の販売数量実績は666万ケース(同102%)となった。

国産カジュアル、輸入デイリーを入り口にユーザーが増加

家庭用ワインはここ数年、前年を下回るトレンドで推移していたが、2020年は金額ベースで前年比107%と大きく伸張した(出典:インテージSCI 酒類市場2014年1月~2020年12月購入規模)。吉雄氏によると、購買データを基にした金額ベースの同社推定値は、ヌーボーを除いた全てのカテゴリー、全ての価格帯で伸張しているという。

また、2015年から減少傾向にあったワイン購入者が、2020年は20~30代の若年層、40代、50代で増加し、間口が拡大に転じた。特に20~30代は122%と顕著に増加している(出典:インテージSCIワイン市場 2015年1月~2020年12月 購入者数)。

新しくワインユーザーとなった消費者が、どのようなカテゴリーのワインを購入したかについて、同社が購買データを基に調べたところ、75%が入り口のワインとして「国産カジュアル」「輸入デイリー」を選んでいることが分かった。内訳は、国産カジュアルワインが49%、低価格のチリワインが13%、その他の輸入デイリーワインが13%となっている。

同社では、国産カジュアルや輸入デイリーから入った消費者が、よりワインらしい味わい、嗜好品感を求めて、輸入スタンダードワイン、プレミアム・スパークリング、日本ワインへ移っていくと考えており、今後は既存領域の強化を図っていく。

その一方で、気軽なワインを試してみたい、あるいはワインに興味はあるが飲み続けられないという層に向けて、気軽に飲める缶タイプを提案するなど、新たなポテンシャル領域にも力を注ぐとしている。

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