カリフォルニア州を代表する品種の1つである、ジンファンデル。濃厚な赤ワインのイメージがあるが、凝縮感とともにエレガントさを感じるものや、豊かな糖分を生かしたロゼワインまであり、多様性を楽しめる品種だ。
今回は、カリフォルニアワイン協会(CWI)が2020年10月27日に開催した、プロ向け試飲会「カリフォルニアワイン・グランドテイスティング2020」に出品されていたワインを中心に、ジンファンデルのおすすめワインを紹介したい。
ジンファンデルとは
2018年のカリフォルニア州におけるぶどう品種ごとの栽培面積を見ると、ジンファンデルは、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、ピノ・ノワールに続いて第4位となっている(USDA「CALIFORNIA Grape Acreage Reports」)。
ワイン用ぶどうの栽培が早くから行われていたローダイやソノマには、樹齢100年を超えるジンファンデルの樹があり、凝縮感とエレガントさを楽しめるワインがつくられている。また、パソ・ロブレスでも、禁酒法以前からジンファンデルが栽培されていた。
ピノ・ノワールと同じように、冷涼な地域や温暖な地域での栽培に適しており、カリフォルニア大学の教授が作成した気候と品種のマッチング表では、ジンファンデルはシャルドネやリースリングに次いで、冷涼な地域に適した品種群に振り分けられている。
30年近い議論の末、ジンファンデルのDNAは、イタリアの黒ぶどうであるプリミティーヴォと同種であることが1990年代に判明した。プリミティーヴォは、イタリアでは南部のプーリアやサルディニアで広く栽培されており、クロアチアにルーツがあることが分かっている。
<関連記事>
ジンファンデルとは――味の特徴、おすすめワイン、主な産地をチェック
カリフォルニアのジンファンデルは、イタリアのプリミティーヴォに比べると酸味が少なく、サクランボや黒すぐりのような香りに、クミンやコショウのスパイス香を合わせたような強い芳香がある。アメリカンオークとの相性が良く、少量のプチ・シラーやメルローがブレンドされることも多い。
力もありタンニンもしっかりしていることから、肉料理にぴったりだ。しっかり味付けしたバーベキュースタイルの肉や、ローストしたラムなどにもよく合う。また、ビターで濃厚なチョコレート・ケーキとも相性が良い。
また、ホワイト・ジンファンデルと呼ばれる明るいピンク色のロゼワインは、ジンファンデルの黒い果皮を取り除いて、白ワインの製法で醸造したワインだ。
ジンファンデルでつくったワインは力強い味わいを持つものが多いが、ホワイト・ジンファンデルは柔らかな味わいでやや甘口。軽く冷やして楽しむワインだ。中華料理やタイ料理などアジア料理との相性が良く、お手軽な価格帯のものが多い。
ジンファンデルの特徴
ジンファンデルは、1つの房で粒の成長スピードが違うのが特徴だ。
まだ成熟していない緑色の粒を残すかどうか、一部が干しぶどう状になっても全てが成熟するのを待つかなど、どの状態のジンファンデルを収穫するかは、生産者によって判断が異なる。
全ての粒の成熟を待って収穫すると干しぶどう状の粒が多くなることから、糖度が上がり、アルコール度数も高くなる。その結果、長期熟成にも耐えられ、より色が深くなって力強さと凝縮感のある高品質ワインができる。青い粒がまだある状態で収穫すると、酸が残ったエレガントな仕上りになる。
収穫時期によって味わいが変わる品種なので、どの時期に収穫されたものが自分の好みなのかを知ると、ジンファンデルをより楽しめるだろう。
ジンファンデルワインのトップメーカー、リッジ・ヴィンヤーズ
カリフォルニア州でジンファンデルワインを手掛ける偉大な生産者の1つとして挙げられるのが、リッジ・ヴィンヤーズだ。ジンファンデルの他に、カベルネ・ソーヴィニヨンを使用したワインづくりを得意としている。
天然酵母にて発酵し、マロラクティック発酵も天然の乳酸菌のみで行う。酸化防止剤に使われる亜硫酸を可能な限り減らすなど、人為的介入を最小限に抑えたワインづくりをしている。
リッジ・ヴィンヤーズが展開するジンファンデルワインは、テロワールを重視した4銘柄。いずれも「カリフォルニアワイン・グランドテイスティング2020」に出品されていた。
リッジ・ヴィンヤーズ リットン・スプリングス2016
代表銘柄の1つ。ジンファンデルの凝縮感を堪能したい人におすすめの1本だ。天日乾燥させたアメリカンオーク樽を100%(新樽率15%)使用して、14カ月熟成させている。
Ridge Vineyards Lytton Springs 2016
品種:ジンファンデル主体、プチ・シラー、カリニャンなど
アルコール分:14.4%
産地:ドライ・クリーク・バレー
参考小売価格:8800円(税別)
リッジ・ヴィンヤーズ ガイザーヴィル2017
こちらも代表銘柄の1つで、酸味としなやかなボディが楽しめる。アメリカンオーク樽を100%(新樽率15%)使用して、14カ月熟成させている。
Ridge Vineyards Geyserville 2017
品種:ジンファンデル主体、カリニャン、プチ・シラー、マタロなど
アルコール分:14.5%
産地:アレキサンダー・バレー
参考小売価格:8800円(税別)
リッジ・ヴィンヤーズ イーストベンチ ジンファンデル 2017
輸入元の大塚食品が「この品種の魅力を十分に伝える、リッジ・ヴィンヤーズの入門的ジンファンデル」と表現する1本。有機栽培を行っている自社畑のシングルヴィンヤードワインで、品種の個性と共に区画の個性も味わえる。
Ridge Vineyards East Bench Zinfandel 2017
品種:ジンファンデル100%
アルコール分:14.7%
産地:ドライ・クリーク・バレー
参考小売価格:6000円(税別)
リッジ・ヴィンヤーズ パソ・ロブレス ジンファンデル 2016
上記3銘柄はソノマ郡で栽培されたぶどうを使っているが、このワインはソノマ郡の中心地から360キロほど南にある、パソ・ロブレスの樹齢90年の樹から収穫したぶどうを使用している。
アメリカンオーク樽を100%(新樽30%)使用して12カ月熟成。赤いフルーツの華やかな香りがあり、滑らかな渋みと豊かな果実味のバランスの良さを楽しめる。
Ridge Vineyards Paso Robeles Zinfandel 2016
品種:ジンファンデル100%
アルコール分:14.6%
産地:パソ・ロブレス
参考小売価格:7200円(税別)
その他のおすすめワイン5本
ガーギッチ・ヒルズ ジンファンデル エステート・グロウン ナパ・ヴァレー 2014
1976年の「パリ・テイスティング(パリスの審判)」にて、フランスの数々の名門ワイナリーを抑えて、カリフォルニア産の「シャトー・モンテレーナ シャルドネ 1973」が白ワインのトップに立った。カリフォルニアワインの品質の高さが世界に知れ渡るきっかけとなったこのワインを手掛けたのは、マイク・ガーギッチ。彼が設立したワイナリーが、ガーギッチ・ヒルズ・エステートだ。
クロアチア移民であるガーギッチは「祖父がつくっていたぶどうだ」と、ジンファンデルの栽培をスタートさせた。今でこそジンファンデルは、クロアチアを起源とする品種であることがDNA解析で明らかになっているが、ガーギッチはずっと前からそのことを確信していたという。
2014年ヴィンテージということもあり、少しこなれた印象を受ける。豊かでしっかりしたボディを、エレガンスさや繊細さと同時に楽しめる。高級感のあるジンファンデルを味わいたい人に、特におすすめしたいワインだ。ソーセージのピザやグリルしたシシケバブなどとの相性が良い。
Grgich Hills Zinfandel Estate Grown Napa Valley 2014
品種:ジンファンデル97%、プチ・シラー3%
産地:ナパ・バレー
アルコール度数:14.8%
参考小売価格:6300円(税別)
フロッグス・リープ ジンファンデル ナパ・ヴァレー 2018
ナパ・バレーのラザフォードで有機栽培されたぶどうを使用。土壌や気候を反映させた伝統的なワイン・メイキング技術でつくられている。半分をアメリカンオーク樽、もう半分をコンクリートタンクで13カ月熟成させて、穏やかなアルコールでエレガントな深みを表現したワインだ。
Frog’s Leap Zinfandel Napa Valley 2018
品種:ジンファンデル82%、プチ・シラー14%、カリニャン4%
産地:ナパ・バレー
アルコール度数:14.3%
参考小売価格:5700円(税別)
フランシス・フォード・コッポラ ディレクターズ・カット ジンファンデル2017
ソノマ・カウンティの、比較的温暖なドライ・クリーク・バレーにある、2つの畑で栽培されたぶどうを使用。1つの畑では、ゴブレット仕立てにした樹齢の高いぶどうの樹をかんがいなしで栽培し、もう1つの畑では、ぶどうを垣根仕立てにし、かんがいや葉を取り除くなどのキャノピーマネジメントをしている。この2つの異なる畑から収穫したぶどうで、凝縮された華やかさのある味わいをつくり出している。熟成にはフレンチオークとアメリカンオークの樽を使っており、アメリカンオークの香りと合わさった甘い香辛料の香りが心地よく感じられる。
Francis Ford Coppola Director’s Cut Zinfandel Dry Creek Valley 2017
品種:ジンファンデル
アルコール分:14.5%
産地:ドライ・クリーク・バレー
参考小売価格:4480円(税別)
オールド・ソウル オールド・ヴァイン・ジンファンデル 2017
オールド・ソウルは、オーク・リッジ・ワイナリーの代表的なブランドの1つ。オーク・リッジ・ワイナリーはローダイで80年以上の歴史を持ち、世界で最も広いジンファンデルの畑を持つことでも知られている。平均樹齢60年の樹から収穫したジンファンデルからつくるワインは、奥行きのある複雑な風味が特徴だ。
オールド・ソウルの全てのボトルには、“古い魂(オールド・ソウル)”を示すジンファンデルの古樹が描かれている。同ブランドではカベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールのワインにもジンファンデルがブレンドされており、ジンファンデルはラベルだけではなく、オーク・リッジ・ワイナリーがつくるワインにおいても重要な存在となっている。
アメリカンオーク樽60%とフレンチオーク樽40%を使用して6~8カ月熟成したこのワインは、濃縮した果実味があるものの、重くないため食事にも合わせやすい。
コストパフォーマンスも非常に良く、輸入元のフイルコンサービスによると、ネット通販での売れ行きも好調で、リピーターが増えてきていることを実感しているそうだ。
OldSoul Old Vine Zinfandel 2017
品種:ジンファンデル77%、カベルネ・ソーヴィニヨン16.5%、プチ・シラー6.5%
アルコール分:13.5%
産地:ドライ・クリーク・バレー
参考小売価格:2800円(税別)
ジョエル・ゴット ジンファンデル 2018
人気のカジュアルレストラン「Gott’s Roadside」を、ナパ・バレーを中心に6店舗展開するジョエル・ゴット氏が、妻であり醸造家のサラ・ゴット氏と共に手掛けるワイン。レストランと同様に、ワインもコストパフォーマンス抜群だ。
ローダイやボーデン・ランチ、アマドール、ソノマ・カウンティなど、冷涼な地域と温暖な地域のジンファンデルをブレンドして、高品質な味わいをつくり出している。フレンチオークの古樽80%、アメリカンオークの新樽20%で熟成させており、アメリカンオークの香りがアクセントとして感じられる。
Joel Gott Zinfandel 2018
品種:ジンファンデル
アルコール分:14.4%
産地:カリフォルニア
参考小売価格:2700円(税別)
カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、シャルドネと共に、カリフォルニアを代表する品種であるジンファンデル。カリフォルニア州の多くのワイナリーが、つくり手やテロワールの個性を表現したジンファンデルワインを生産しているので、好みに合った1本を探してみてはいかがだろうか。