キアンティ・クラッシコ協会は2021年3月15日、ザ・ペニンシュラ東京(東京都千代田区)にて、プレスイベント「キアンティ・クラッシコの産地を360度俯瞰する」を開催した。
黒い雄鶏がシンボルのキアンティ・クラッシコは、サンジョベーゼ主体でつくられるワインだが、産地によってかなり表情が変わる。産地を360度見渡せる写真を見ながらその要因を探る今回のイベント内容を、全4回にわたって紹介する。
キアンティ・クラッシコとは
イタリアで最も有名な呼称と言える「キアンティ」は、イタリア・トスカーナ州の中部にあるキアンティ地方で生産されるワインだ。1716年にトスカーナ大公コジモ3世がキアンティ産地の境界線を定めたが、人気の高さからその生産エリアはどんどん拡大し、現在はトスカーナ州の5県にまたがっている。
その中でも、伝統的にキアンティワインをつくり続けてきた地域が、「キアンティ・クラッシコ地区」として、1984年にイタリアで最も厳しい制約のある「D.O.C.G.(統制保証原産地呼称)」に格付けされた。キアンティ・クラッシコの産地は、フィレンツェとシエナの間に位置する8つのコムーネ(村)で構成されている。1996年、キアンティ・クラッシコはキアンティから独立して、単独でD.O.C.Gに認定された。
また、1970年代から始まった「イタリアワイン・ルネッサンス」と呼ばれるイタリアワインの改革をけん引したのは、キアンティ・クラッシコ地区の生産者たちだ。その自由な発想でつくられたワインは「スーパータスカン」として注目された。
キアンティとの違い
キアンティは、黒ぶどう品種サンジョベーゼを70%以上使用し、白ぶどうは10%まで、その他は15%までブレンドが許可されている。
キアンティ・クラッシコは、サンジョベーゼを80%以上使用することが定められており、推奨または許可された黒ぶどう品種を20%までブレンドできる。
会長が語るキアンティ・クラッシコの魅力
キアンティ・クラッシコ協会のジョヴァンニ・マネッティ会長は、イベント前の挨拶の中で、キアンティ・クラッシコの魅力を次のように説明した。
北から南まで延びているキアンティ・クラッシコ地区は、さまざまなタイプのテロワールが混在しており、偉大なワインをつくることができる地域です。また、森林が多くて自然に恵まれており、ぶどう畑は15%しかありません。
自然を尊重しているので、有機栽培やサステナブルにも力を入れており、キアンティ・クラッシコの40%以上が、有機栽培またはビオデナミ栽培となっています。
生産者に情熱があり、高い品質を実現しようと努力していることも、キアンティ・クラッシコの特徴です。
今回のイベント内容
高品質ワインにおいては、単においしいだけではなく、いかにテロワールを表現するかが大きなカギとなる。キアンティ・クラッシコ協会では「グラスの中にテロワールを表現するためには、飲む人もテロワールの特徴をある程度知っていなくてはいけない」という考えから、土壌の調査を経て、今回のイベント実施に至ったという。
産地がどんな自然に囲まれているのか、どのくらいの傾斜があるのかを見ると、ワインをより理解しやすくなる。360度俯瞰できる写真を見ながらワインをテイスティングすることで、産地とワインの結びつきを明確にするというのが今回の目的だ。
「おいしいワインをつくるのは簡単ですが、テロワールの刻印を再現しているワインをつくるのは難しいものです。テロワールの刻印があるワインは、そこでしかつくれないので貴重です」と、マネッティ会長はコメントしている。
キアンティ・クラッシコ協会は、同年3月16日に日本では初となる公式ウェビナー「キアンティ・クラッシコ:唯一の個性を持つワインと産地」を開催しており、テロワールの魅力を精力的に発信している。
講師は「マップマン」こと、アレッサンドロ・マズナゲッティ氏
今回の講師であるアレッサンドロ・マズナゲッティ氏は、物理学者としての視点を持つワインジャーナリストだ。2000年代初めまで、『L’Espresso(レスプレッソ)』の編集長を務め、その後は今までにないタイプのニュースレター「ENOGEA(エノジェア)」を立ち上げている。
2007年以降は、ワイン産地の地図製作に注力。物理学者らしく細部まで土地を再現した地図は大いに注目されており、マズナゲッティ氏は「マップマン」とも呼ばれている。
宮嶋勲氏による解説も
会場でマズナゲッティ氏の講義を通訳しながら、解説を付け加えてくれたのは、日本におけるイタリアワインの第一人者であり、キアンティ・クラッシコ・アンバサダーの宮嶋勲氏だ。
宮嶋氏は、先述のウェビナー「キアンティ・クラッシコ:唯一の個性を持つワインと産地」では、講師を務めている。
次回からは、マズナゲッティ氏と宮嶋氏による講義の内容を紹介していきたい。