メルシャンは2021年5月18日、2021年のシャトー・メルシャン戦略説明会を開催した。
同社マーケティング部長の山口明彦氏と、シャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャーである安蔵光弘氏から、シャトー・メルシャンの事業計画、そして「日本を世界の銘醸地に」を合言葉にした取り組みについて発表があった。
今回は、安蔵氏によって語られた、日本を世界の銘醸地にするためにシャトー・メルシャンが取り組んでいる「欧州系品種の挑戦」についてまとめた。
欧州系品種の挑戦
シャトー・メルシャンの欧州系品種は、1989年に「リュブリアーナ国際コンクール」にて、「桔梗ヶ原メルロー1985」が大金賞を受賞し、海外から長年にわたって高い評価を受けている。
シャトー・メルシャンでは、甲州、マスカット・ベーリーAなどの日本固有品種に加えて、欧州系品種のワインを世界的なレベルにしていこうと取り組んできたという。
シャトー・メルシャンのワイン用ぶどう産地は、主に秋田県の大森、福島県の新鶴(にいつる)、長野県、山梨県だ。大森ではリースリング、新鶴ではシャルドネ、長野県ではシャルドネやメルローなど、山梨県の城の平ヴィンヤードではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの欧州系品種に挑戦している。
ぶどう産地としての「塩尻」
今回の戦略説明会でフォーカスされたのは、桔梗ヶ原ワイナリーのある長野県塩尻市だ。塩尻のテロワールをエリア分けすると、次のようになる。
奈良井川と田川の2本の川に挟まれている桔梗ヶ原は、川の規模は違うものの、いわゆるボルドー地区のアントル・ドゥー・メールのような場所だ。岩垂原(いわだれはら)、洗馬(せば)、柿沢にもいくつかのヴィンヤードがあり、これらの地区では他社も評価の高いワインを生み出している。
そして、シャトー・メルシャンが2015年に開園し、2017年から植樹を開始したエリアが、田川の東側斜面にある片丘地区だ。
桔梗ヶ原と片丘は、4~5kmしか離れていないが、標高も含めてテロワールが違う。そのため、桔梗ヶ原とは違う完成度のメルローがつくれるのではないかと期待しているという。
桔梗ヶ原ヴィンヤード
桔梗ヶ原ヴィンヤードの標高は、660~735mほど。柔らかい粘土で水はけが良い。表面はふわふわした土で、その下は岩石だ。写真で見ても分かる通り、ほぼ平坦な盆地となっている。
同ヴィンヤードでは、一部区画に植えられているカベルネ・フランが、だんだんと成木になってきたところだという。カベルネ・フランは、同じ長野県の上田市にある椀子(まりこ)ヴィンヤードのアイコンワイン「シャトー・メルシャン 椀子 オムニス」に使われており、ワインにエレガントさを与えている。
メルローとカベルネ・フランの組み合わせが多いボルドーの右岸のように、桔梗ヶ原のカベルネ・フランも、メルローにブレンドすることで複雑さが加わり、「桔梗ヶ原メルロー シグナチャー」とは違ったアイコンワインがつくれるのではないかと期待しているそうだ。
片丘ヴィンヤード
片丘ヴィンヤードの標高は、750~805mほど。表面に薄い粘土の層があり、掘ってみると砂利が多い土壌で、水はけが良い。松本平盆地を望む景色の良い斜面に位置しているヴィンヤードだ。
大部分がメルローで、他にはカベルネ・フランやいくつかの白ぶどう品種、グリ品種を植えている。最初のメルローを植えたのが2016年ということもあり、まだ数回しかワインを仕込んでいないが、どんな味わいのワインができるのかが分かってきたところだという。
片丘ヴィンヤードのワイン
シャトー・メルシャンでは、片丘ヴィンヤードのぶどうを使用した2019年ヴィンテージのワインを3本発売する予定。
①シャトー・メルシャン 片丘ヴィンヤード メルロー&カベルネ・フラン 樽選抜 2019(5500円)
②シャトー・メルシャン 片丘ヴィンヤード メルロー 樽選抜 2019(6000円)
③シャトー・メルシャン 片丘ヴィンヤード 2019(5500円)
※価格はワイナリーでの販売価格(税込)
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片丘のワインは、桔梗ヶ原に比べて果実味が豊かなのが特徴だ。ただし、樹齢が若いのでこの特徴は変わる可能性があるという。今後どのように変化していくのかが楽しみなシリーズだ。
次回以降は、シャトー・メルシャンの「日本固有品種の挑戦」について紹介していきたい。