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毎年11月の第3木曜日に解禁され、ワイン市場に華を添える、ボージョレ・ヌーボー。
今や、季節のイベントの1つとして日本でもすっかり定着しており、解禁日にはさまざまなボージョレ・ヌーボーが市場に出回る。今回は、そのつくり手の中から、ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス(Domaine Roux Pere et Fils)を紹介する。
家族経営の老舗ドメーヌ
全長25kmの丘陵地帯に広がるコート・ド・ボーヌ南部のサン・トーバンに拠点を置く、ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス。その歴史は、1885年に始まっている。
わずか4haの畑からスタートしたが、徐々に所有畑を拡大していき、現在ではコート・ド・ボーヌを中心にコートドニュイ、コートシャロネーズなど13の村に70haの自社畑を持つ、大規模な老舗ドメーヌに成長した。
大手企業の資本が入るケースが多いブルゴーニュでは珍しく、5代続く家族経営だ。現在は5代目のセバスチャン・ルー氏と栽培・醸造を担当している弟のマチュー・ルー氏が中心となって経営している。代々受け継がれてきた畑やワインづくりの理念、伝統を守りながら、醸造、栽培、販売方法に新たな手法を取り入れるなど、若く新しい風を吹き込んでいる。
ドメーヌ以外にもネゴシアン業を行っており、合わせて70以上の銘柄を生産している。
1998年にはフランス南部ラングドックのシャトー・ド・サンセリー、2000年にはドメーヌ・サンクロワのオーナーになるなど、ブルゴーニュ以外にも徐々に進出。手掛けるワインは58カ国に輸出され、世界中で広く愛飲されるまでになった。
味わいへの評価も高く、受賞歴も多数あり、有名ホテルやレストラン、航空会社のファーストクラス、ビジネスクラスでも採用されている。
創業から代々築いた信頼
現在は70haもの自社畑を持つドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィスだが、ワインの質を保つために無理な開拓はせず、創業当時から地元の畑の所有者たちと信頼関係を築きながら、毎年少しずつ増やしていったという。所有する畑には、白ワインの名産地ムルソーのプルミエ・クリュ(一級畑)でも人気の高いポリュゾに単独で所有するクロ・デ・ポリュゾも含まれる。
また、区画の知名度にとらわれることなく、土壌の特性を調査し、ぶどうの樹の状態を確認しながらポテンシャルの高い区画だけを選んできた。細かいものも合わせると、所有区画は120区画以上にも及ぶ。大きな区画を所有する方が畑での作業は効率的だが、土壌に敬意を払い、手間をかけても小さな区画がそれぞれ持つテロワールを表現することにこだわっている。
ネゴシアン業では47の栽培農家と契約を結び、その年の作柄に左右されることなく、長期にわたって定期購入し続けている。そうすることで強い信頼関係が生まれ、ドメーヌと同じくらい高品質なぶどうの入手が可能になっている。
独自のメソッドでつくり出すワイン
ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィスの醸造法は、伝統的なブルゴーニュ手法で、全てオーク樽で発酵・熟成させている。
100%除梗しているため、果実そのものの純粋さが味わえる。新樽比率は約30%で、樽由来の香りやタンニンは極力避けているという。熟成期間は、区画やヴィンテージによって調整している。
70年代には大規模な設備投資をし、的確な品質管理ができるような環境を整えた。代々伝わる昔ながらの醸造法を守りつつ現代的な技術も取り入れることで、より質を高める独自の「ルー・メソッド」と呼ばれる理念で、世界中に愛されるワインをつくり続けている。
ルー・ペール・エ・フィスのおすすめワイン
ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス ボジョレー・ヌーヴォー
2017年から生産を開始した、実力派ヌーボー。ラズベリーやチェリーなどのピュアなアロマと、口に含んだ時にあふれる赤系果実のジューシーさが魅力の1本。口当たりもまろやかで、繊細かつ上品な仕上がりになっている。
ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォー
「シャルドネの故郷」といわれる、マコン地区のシャルドネを100%使用した白のヌーボー。すっきりとしたかんきつ系のアロマに白い花やハーブのニュアンスが加わる。辛口ながら滑らかな口当たりで、新鮮な果実味と酸味のバランスが良い1本。
ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス レ・コティーユ・ピノ・ノワール
サン・トーバンやコート・ドールなどでつくられたピノ・ノワールをブレンドした赤ワイン。伝統的な手法で発酵・熟成され、ブルゴーニュのスタイルを存分に堪能できる1本だ。フレッシュなベリー系の果実味と、穏やかなタンニンと酸で飲みやすく、どんな料理とも合わせやすい。
<【ボージョレのつくり手】シリーズ>
トロフィー・リヨンで大金賞を獲得した実力派、アルベール・ビショー
ブルゴーニュの至宝、ルロワ
テロワールを尊重したヌーボーを手掛ける、ルイ・ジャド