2022年3月1日にメルシャンが発売した、「メルシャン・ワインズ ブレンズ パーフェクト・ブレンド」。スーパーなどでも購入できるお手頃なワインでありながら、商品名の通りに“パーフェクトなブレンド”で、「日本のお客様が感動するおいしさ」を追求したワインだという。
実はこのワイン、原産国の異なる2つの国、3つのワイナリーのワインをブレンドしてつくられている。従来のワインの価値観では、産地が重視されるため、国を超えたブレンドは非常に珍しい。
このワインがどのようにして誕生したのか、その開発秘話を同年2月22日に開催された「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)体験会」の内容から紹介したい。
国を超えたブレンドの新しさ
「パーフェクト・ブレンド」では、「華やかなスペインワイン」と「ふくよかなオーストラリアワイン」がブレンドされている。
そもそもブレンドワインとは、一般的に複数のぶどう品種をブレンドしたワインを示す言葉だ。1つの品種でつくられたワインは土地や品種の特徴が出しやすいのに比べて、複数の品種をブレンドすることで、味わいに広がりを出すことができる。
「日本のお客様が感動するおいしさ」を追求した結果、ぶどう品種だけではなく、原産国の異なる2つの国のワインをブレンドするという結論にたどり着いたという。
2つの国のブレンド
ワインの原料となるぶどうにはいくつかの品種があり、品種ごとに味わいの特徴がある。しかし、同じぶどう品種でも、栽培される地域(大きく分類すると、北半球や南半球)により、味わいに特徴がある。
ワイン用のぶどうの栽培に適しているのは、北半球は北緯30~50度、南半球は南緯30~50度の「ワインベルト」といわれる地域。産地によって、標高の高さや気温の違いはあるが、赤道に近いとアルコール度数が高く、酸は弱めのしっかりとした果実味のワインとなり、赤道から離れるほど、しっかりとした酸を持つ辛口ワインが多くつくられる。
ワインの味わいを決める主な要素には、「ぶどう品種」「土地や気候(テロワール)」「つくり手の個性(ワイナリーの思想など)」の3つがある。特にワインにおいて産地は、昔から重視されてきた事柄の1つだ。その産地のワインであることをラベルに表示するために、厳格な法律を決めているところも多い。
こうした要素を踏まえ、ワインを選ぶのも楽しみの1つではあるが、ワインにあまり詳しくない人には「ワインは難しい」だけの飲み物になっている面もある。そのため、もっと気軽に安心してワインを選んでほしいという思いから、日本のお客様にとっておいしいワインを「メルシャン」のブランドで展開することにしたという。
メルシャンは、産地の特長は大切にしながらも、それを超えて産地に縛られないということで目指す味わいを実現するため、2つの国をブレンドすることで、この垣根を超えた表現ができるのではないかと考えた。
国が異なるワインを使ってブレンドワインをつくるのは非常に珍しい。メルシャンが把握しているのは、アメリカ・カリフォルニアのナパ・バレーのカベルネ・ソーヴィニヨンに、南オーストラリアのシラーズをブレンドした、ペンフォールズの「クアンタム」のみだという。
メルシャンでは、ブレンド・スタイルの表現だけではなく、土地の特徴を大切にしながら、日本のお客様がおいしいと感じる味わいをつくっていくことを目指したそうだ。
18カ国729ワイナリーを飲み比べ
今回、2つの国の3つのワイナリーを選ぶにあたり、18カ国にわたる729のワイナリー候補が挙げられた。メルシャン藤沢工場技術課の赤宗行三氏によると、半年をかけて185種類の原酒を飲みまくり、約300回に及ぶ試作を実施。サステナブルの取り組みも含めて厳選していった。
そして決まったのが、スペインのペニンシュラ、オーストラリアのアンドリュー・ピースとアンゴーヴだ。3つのワイナリーのワインの特徴を掛け合わせ、日本人が好む「フルーティーで調和の取れた味わい」を実現した。
北半球と南半球のメリット
実は、スペインとオーストラリアという、北半球と南半球の国のワインを使用することにメリットがある。
フルーティーさを実現するには、常にフレッシュなワインが必要になる。季節が逆になる北半球と南半球では、ぶどうの収穫時期が異なるため、フレッシュでフルーティーな香りのワインを年に2回、届けることが可能だ。2つの国をブレンドすることで、天候にも左右されない安定した味わいを届けられる。
日本人が好む味わいの探し方
「メルシャン・ワインズ」のキーワードでもある「日本のお客様が感動するおいしさ」とはどのようなものなのだろうか。
調査で探った日本人の好み
日本人がおいしいと感じる味わいを探すために、商品の名前を出さずにお客様に飲んでもらったり、売れている輸入ワインを集めて味わったりと、地道な調査を行ったそうだ。
その結果、日本のお客様がおいしいと感じるワインの特徴として、以下の3点が挙げられた。
・少し甘さ(残糖)を残したワイン(後味にやや甘みが感じられる程度に)
・香りに特徴があるワイン
・酸味や渋みなどの強いくせがないワイン
その結果として、「フルーティーな香りと味わい、全体のバランスが良い調和が取れた味わいが、日本のお客様に好まれるのではないか」という仮説でワインづくりをスタートさせた。
コロナ禍での味の決め方
味わいのコンサルタントを務めたのは、MW(マスター・オブ・ワイン)という世界的なワインの権威ある称号を持つ2人だ。ニュージーランド出身のサム・ハロップ氏がワインメイキング・コンサルタント、日本の大橋健一氏がブランド・コンサルタントを務めている。
味わいを決めるには、同じ条件でテイスティングをする必要がある。同じ会場で同時にテイスティングを行うのが理想的だが、コロナ禍でそれは難しい状況だ。そこで、オンラインで会議をしながら、同じワインを同じタイミングで開けて、同じ分量だけ注ぐ……という方法で味わいを決定していったという。
2つの国の3つのワイナリーのワインを使用して、「日本のお客様が感動するおいしさ」をつくり出した「パーフェクト・ブレンド」。今回は開発秘話を紹介したが、次回は実際の味わいについて紹介する。