コラム

なぜメルシャンが? 駐在員が現地のワイナリーとつくったボルドーワイン ~Mercian Wines体験会③

ボルドーと言えば、ワインに詳しくない人でも知っているフランスの銘醸地だ。世界で最も有名なワイン産地の1つと言っても良いだろう。そのボルドーで「新しいボルドーワイン」づくりに挑戦したのが、日本のワインメーカーであるメルシャンだ。同社は2022年3月8日に「メルシャン・ワインズ ボルドー」を発売した。

メルシャンがボルドーにこだわる3つの理由

なぜ、メルシャンはボルドーワインを手掛けたのだろうか。同年2月22日に開催された「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」の体験会の中で、メルシャン マーケティング部輸入グループの小泉麻衣氏が説明してくれたところによると、その理由は3つあるという。

理由1:伝統産地の新しい価値を発信したいから

ボルドーは誰もがよく知るワインの産地だが、伝統的なイメージが強く、新しさが感じられない人もいるのではないだろうか。実際は、環境への取り組みに関して、フランスで最先端を走っている地域でもある。

味わいについても、ボルドーワインに対して「重たい」「渋みが強い」といった印象を持っている人も多いと思うが、ぶどう本来の果実感を生かしたワインづくりにシフトしてきているという。

理由2:メルシャンとゆかりのある地域だから

メルシャンは、過去にボルドーのワイナリー、シャトー・レイソンを所有し、品質向上に努めた経験がある。また、メルシャンのワインメーカーの中には、ボルドーでワインを学んだ人がたくさんおり、ボルドーはメルシャンにとって縁の深い産地だ。

理由3:パリのオフィスでの経験があるから

メルシャンはパリに欧州事務所があり、何十年にもわたって、ヨーロッパのパートナーとワインビジネスに携わってきたため、現地の駐在員は豊富な経験を持っている。特にパリ駐在員の矢野聖明氏は、葡萄酒技術研究会認定のエノログ(ワイン醸造技術管理士)を保有しており、世界的なワインの権威であるMW(マスター・オブ・ワイン)の称号を持つサム・ハロップ氏から、「ボルドーは君の方が分かっている」と言わしめた人物だ。

現地のワイナリーとの共創

メルシャンが新しいボルドーワインを手掛けるにあたり、矢野氏は、パートナーとなる優れた生産者を探し出した。

そして選ばれたのが、ヴィニョーブル・マンゴーだ。3世代にわたる家族経営ワイナリーで、3代目のジュリアン・マンゴー氏は、チリやスペインでワインづくりを経験した人物。ボルドーの伝統は大切にしながらも、複数の品種をブレンドしてワインをつくるのが常識であるボルドーで、マルベック100%などの単一品種のワインにも挑戦している。

新しいことに柔軟に取り組んできたこと、一緒につくろうという姿勢を見せてくれたことがきっかけで、ジュリアン氏が今回の共創のパートナーとなった。

選んだ品種はマルベック

これまでのボルドーワインを飲んだ人の中には、「重たい、渋みが強くて飲みづらい」という印象を持っている人もいるだろう。ボルドーで多く見られるブレンドは、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー主体のものだが、渋み(タンニン)やピーマン香(青さ)が生まれ、飲みづらさにつながることもある。

そこで、マスター・オブ・ワインのサム・ハロップ氏を監修に迎えて、より果実感があり、良い意味で飲みやすい味わいのワインを目指した。

ジュリアン氏のワインから、マルベックとメルロー、樽熟成のメルローの3つのワインを選び、ベストバランスはどこかを探った。

初めてテイスティングした時から、全員の気持ちが一致したのが「マルベックが骨格になる」ということ。マルベックはボルドー原産の品種だが、今ではアルゼンチンワインの赤ワインを代表する品種として知られている。ボルドーではブレンドの補助品種として使われることが多いが、ジュリアン氏は以前からマルベックを使ったワインづくりに取り組んでいた。

マルベックには、スミレの花やハーブのような香り、適度な酸味とタンニン、凝縮感のある果実味といった特徴がある。

ボトルにもこだわり

メルシャンの「新しいボルドーワイン」への思いは、ボトルにも込められている。

「メルシャン・ワインズ ボルドー」のラベルには、つくり手であるヴィニョーブル・マンゴーのジュリアン氏とメルシャンの矢野氏のサインを配置。つくり手の思いとして、「私たちの新しいスタイルのボルドーワインの世界へようこそ」とフランス語で書かれている。

また、ボトルも環境に配慮した軽量瓶だ。軽い方が運搬時に排出される二酸化炭素が抑えられるというメリットがある。

どんなワインが出来上がった?

香りや味わいの特徴

小泉氏によると、「メルシャン・ワインズ ボルドー」は、輝きのある美しい赤紫の色合い。モダンなボルドーワインらしく、ピュアな果実の香りが主体で、ほのかに樽の香りが感じられる。口にすると、ボリューム感としっかりとした飲み応えがありながら、タンニンは滑らかで、スムーズな口当たりが楽しめる。最初から最後までフレッシュな果実味があり、非常にエレガントな印象のワインだという。

また、この記事を執筆中に入ってきたニュースだが、「メルシャン・ワインズ ボルドー」が、ドイツ国際ワインコンクール「MUNDUS VINI(ムンドゥス・ヴィーニ)」(※)で金賞を受賞したのだそう。メルシャンの新しい取り組みが、世界からも注目されている。
※MUNDUS VINI(ドイツ国際ワインコンクール「ムンドゥス・ヴィーニ」)
2001年設立。出版社のMeininger Verlagが主催する国際ワインコンクール。2014年以降は年に2回テイスティングを実施しており、今回30回目を迎える。毎年1万2000種類以上のワインが出品されている。世界で活躍するワイン専門家のブラインドテイスティング(OIVの100点法)によって評価され、受賞区分はグランド・ゴールド、ゴールド、シルバー。

料理との相性

相性の良い料理は、チーズ(コンテなどのドライなもの、熟成期間は短め。過度にクリーミーなタイプはNG)、鶏肉や豚肉などのホワイトミートを使った料理(鶏肉の香草焼き、塩豚の野菜蒸し焼きなど)で、日本料理との相性も良いそうだ。

「メルシャン・ワインズ ボルドー」は、ワインについての経験値が高いユーザーにも感動のおいしさを届けることを目指したワインで、参考小売価格は3120円(税別)。日本でワインづくりを続けるメルシャンが、日本のワインユーザーのために手掛けたボルドーワイン。好奇心がくすぐられる1本であることは間違いない。

【Mercian Wines体験会】
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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ