コラム

シャトー・ル・パン|超高級! “シンデレラワイン”を生み出すボルドーのシャトー ~解説:フランスのワイナリー

魅力的なワインを生産するフランスは、世界最高峰のワイン生産国だ。ボルドーとブルゴーニュの2大生産地はあまりにも有名だが、そこだけに限らず、フランス全土でワインづくりが行われている。

歴史あるワイナリーも多く、「ロマネ・コンティ」などの高級ワインも世界中で知られている。厳しい品質管理と恵まれた環境から生み出されるフランスワインは、知れば知るほど奥深い。

個性と実力を兼ね備えたフランスワインを生み出すワイナリーの中から、今回はボルドーを代表するシャトーであり、最も高価なワインのつくり手でもあるシャトー・ル・パン(Chateau Le Pin)を紹介する。

シャトー・ル・パンとは

シャトー・ル・パンは、フランスワインの生産地として名高い、ボルドーのポムロール地区を代表するシャトー。年間の生産平均本数は約7000本と少量で、そのワインにはなかなかお目にかかれない。運良く見つけたとしても、価格はかなり高価な場合が多い。シャトー・ル・パンのワインは、ボルドーで最も高い1本でもあるのだ。

所有する畑も、約2haと小さい。譲り受けた畑が痩せていたにもかかわらず、その状態こそが実は高級ワインづくりに最適だったことから、数年間で価値が上昇。さらに1982年には、ワイン専門誌『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』で100点満点を獲得し、一気に躍進したことで価格も高騰した。

現在では、ボルドーで最も高いワインの1つに挙げられ、“シンデレラワイン”や“ガレージワインブームの火付け役”とも言われている。

偶然からマロラクティック発酵を実現

シャトー・ル・パンの歴史は、1979年にさかのぼる。同年、オーナーであるジャック・ティエンポン氏は、この地に畑とメゾンを購入した。当時、畑やメゾンは貧弱な状態で、再建の必要があった。

しかし、大きな投資ができる資金がなかったため、ティエンポン家が他に持っていたワイナリーの中古の樽で熟成を行ったのである。そして、二次発酵にもこの樽を使用したため、自然発生的なマロラクティック発酵が実現した。

この方法は意図して行ったものではなく、偶然のたまもの。しかし、これによってシャトー・ル・パンは、ボルドー右岸でマロラクティック発酵を実現した初の生産者となった。

シャトー・ル・パンの生産方法

シャトー・ル・パンの生産地は、ポムロールの丘の中心にある。土壌は、酸化鉄が堆積した砂利と、砂を多く含む粘土。ぶどうの樹は密植していて、1haあたり6000本ある一方で、平均収穫量は30~35hlと低めに設定している。そのため、シャトー・ル・パンのワインは「果実味に肉厚が感じられる」とも評される。

収穫は全て手摘み、発酵はステンレスタンクで行う。熟成は新樽で約18カ月間かけて行い、その後に無ろ過でボトリングするというこだわりをもって仕上げられている。

“シンデレラワイン”と称される「シャトー・ル・パン」とは

高額なワインとして知られ、入手が困難ながら多くのファンを魅了する「シャトー・ル・パン」。その中でも特に高値で取引されているのが、「シャトー・ル・パン 1990」だ。

“シンデレラワイン”の1990年ヴィンテージ

先述したとおり、1982年に『ワイン・アドヴォケイト』で100点を獲得したことで、一躍有名となったシャトー・ル・パン。ワイン評論家のロバート・パーカー氏が「このワインの右に出るものはない」と絶賛し、また生産量の少なさもあって、高値で取引されるようになった。

中でも1990年の「シャトー・ル・パン」は、パーカー氏が「これまでにつくられた2つの最上のル・パンのうちの1つだ」と称賛。1990年はぶどうの当たり年で、もともと需要が高いヴィンテージだったが、さらに人気が高まり、“シンデレラワイン”と称されるまでになった。

稀少で高価なワインだからこその取り組み

生産量が極めて少ないシャトー・ル・パンのワインは、ボルドーワインの中でも最も高価なワインの1つだ。特に人気のある年代のヴィンテージともなると、ほとんど市場に出回らない。もし見つけたとしても、100万円はくだらないとも言われるほどだ。

そんな高価で稀少なワインだからこそ、偽造ワインも多く出回っており、シャトー・ル・パンでも対策を余儀なくされている。現在では偽造を防止するために、エチケットはスイス製の紙に印刷。UVライトを当てると特殊な模様が表示されるようにしている。なお、この模様は毎年変更している。

シャトー・ル・パンは信頼できるルートや店舗で購入を

高価で希少価値も高いシャトー・ル・パンのワインは、最低でも1本数十万、人気の年代のヴィンテージともなると100万円はくだらない逸品だ。投機目的で購入する人も多く、偽造ワインも多く出回っている。

購入希望者は、信頼性の高いルートや店に相談しながら見極めることをおすすめする。

シャトー・ル・パン 2004

2004年ヴィンテージの赤ワイン。『ワイン・アドヴォケイト』誌では、1982年ヴィンテージの満点に次ぐ、95点の高評価を獲得した。

品種:メルロー、カベルネ・フラン
参考小売価格:42万8000円(税別)
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シャトー・ル・パン 2017

極めてエレガントといわれる、2017年ヴィンテージの赤ワイン。ベルベットのような滑らかな飲み口と、エキゾチックで華やかな味わいが特徴的。

品種:メルロー
参考小売価格:43万8700円
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About the author /  KYOKO
KYOKO

出版社勤務を経てフリーランス編集ライターに。旅、グルメ、美容を中心に執筆や編集を行っている。大酒飲みで、旅先でご当地酒を飲むのが好き。最近はビオワインにハマリ中。