サッポロビールは2023年11月6日、グランポレール ワインバー トーキョー(東京都中央区)で、新商品テイスティング会およびトークセッションを開催した。
同会では、サッポロビールの日本ワインブランド「グランポレール」の新たな挑戦や、産地・北海道余市町の魅力が詰まった3種の新商品について紹介があった。また、グランポレール チーフワインメーカー工藤雅義氏と同ブランドアンバサダー大越基裕氏によるテイスティング、トークセッションが行われた。
前編となる本記事では、グランポレールの新たな挑戦や北海道余市町の栽培農家の取り組み、同月14日に新発売となった3種のワインのうち、ブランド初となる瓶内二次発酵スパークリングを紹介する。
「グランポレール」の新たな挑戦
同社が2003年に発売した日本ワインのブランド「グランポレール」は、2023年で20周年を迎えた。同年5月には、新ブランドコンセプト「想いをつなぐ日本ワイン」を掲げ、ポートフォリオやラベルデザインを刷新している。
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20周年の節目に「グランポレール」の新たな挑戦として誕生したワインが、北海道余市町のピノ・ノワールを使った、初の瓶内二次発酵スパークリングだ。
同社は、北海道の余市町と北斗市で収穫したぶどうでワイン醸造を行っている。同社マーケティング本部ワイン&スピリッツ事業部 マーケティング統括部長の柿内望氏は、サッポロビール発祥の地でもある北海道を強化していきたいと語った。
余市のピノ・ノワール
サッポロワイン(当時)が余市町の契約畑でワイン用ぶどうの栽培を始めたのは、約40年前の1984年のこと。ケルナー、バッカスなどドイツ系のぶどうを中心に栽培していた。
ピノ・ノワールは日本での栽培が難しいと言われていたが、サッポロワインはその栽培に取り組むことでブランド力や技術力が高まると考え、2006年に苗を植え付けた。その後、2016年にワイン事業はサッポロワインからサッポロビールに移管された。
現在では、ピノ・ノワールを栽培する契約畑の区画は2倍以上に拡張している。また、ピノ・ノワールでつくったサッポロビールのワインは、国内外の数々の賞を獲得し、「グランポレール」を代表するアイテムの1つになっている。
余市町の特徴
余市町は北緯43度に位置し、ワイン用ぶどうの栽培地としては冷涼な気候だ。また、北海道の中では温暖で凍害の心配が少ないこと、梅雨がなく雨が少ないことも好条件となっている。
2011年に道内で初めてワイン特区に認定された余市町は、日本ワインの新たな名産地として注目されている。
栽培家の情熱から生まれた工夫
余市町にある同社の契約栽培農家6軒の中で、ピノ・ノワールを唯一育てているのが余市弘津ヴィンヤードだ。余市弘津ヴィンヤードでは、ぶどうを全て手摘みで収穫するほか、病気にかかりやすいピノ・ノワールを病害から守るため、以下のような工夫をしている。
ピノ・ノワールの病害を招く原因の1つに「花かす」がある。ぶどうの花が枯れた後の花かすは、房に残り続けると、ぶどうの粒が大きくなったときにカビや果皮を傷付ける原因になってしまう。
余市弘津ヴィンヤードでは、コンプレッサーで1房1房にエアを吹き付けて花かすを飛ばし、病害を防いでいる。これは同ヴィンヤード独自のアイデアだという。これから紹介する「グランポレール 余市ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール<トラディショナル・メソッド>2020」のラベルには、飛ばした花かすが舞っている様子が金箔で描かれている。
初の瓶内二次発酵スパークリング
2023年11月14日に発売された「グランポレール 余市ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール<トラディショナル・メソッド>2020」は、グランポレール初の瓶内二次発酵スパークリングだ。
瓶内二次発酵はシャンパーニュで用いられている、スパークリングワインの中では最も手間と時間がかかる製法で、トラディショナル・メソッドの名はここからきている。
また、ブラン・ド・ノワールは、黒ぶどうのみでつくられた白のスパークリングワインで、ピノ・ノワールの果皮の色が出ないよう、ゆっくりと低圧で搾汁し、取り出した果汁に1回目の発酵を行って、ベースとなる白ワインをつくる。
その後、ベースワインを瓶詰めし、リキュール・ド・ティラージュと呼ばれる糖や酵母などを添加する。これにより瓶の中で2回目の発酵が始まり、炭酸ガスが発生する。二次発酵終了後、約20カ月間熟成させ、澱を取り除いて完成となる。今回はドライな飲み口を目指してドサージュ(加糖)はせずに仕上げたという。
「グランポレール 余市ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール<トラディショナル・メソッド>2020」
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
タイプ:白スパークリング、辛口
産地:北海道余市町 余市弘津ヴィンヤード
参考小売価格:オープン価格 ※840本限定販売
味わい:キンカンやオレンジのコンポートにブリオッシュやわずかなキャラメルのニュアンスを持つ、清涼感と複雑さの混在した豊かなアロマ、きめの細かいデリケートな口当たりで、フレッシュで凛とした酸味が味わい全体を引き締める。バランスの良いほろ苦さ、塩味と共に余韻長く風味を誘う。
(同社資料より引用)
後編では、グランポレール チーフワインメーカーの工藤雅義氏と同ブランドアンバサダー大越基裕氏によるトークセッションの内容とともに、余市町生まれの赤ワインと白スパークリングを紹介する。