コラム

サッポロビールの日本ワイン「グランポレール」発売20周年の挑戦(後編) ――ワイン産地・北海道の可能性

サッポロビールは2023年11月6日、グランポレール ワインバー トーキョー(東京都中央区)で、新商品テイスティング会およびトークセッションを開催した。

同会では、サッポロビールの日本ワインブランド「グランポレール」の新たな挑戦や、産地・北海道余市町の魅力が詰まった3種の新商品について紹介があった。また、同社グランポレール チーフワインメーカーの工藤雅義氏と同ブランドアンバサダー大越基裕氏によるテイスティング、トークセッションが行われた。

後編となる本記事では、トークセッションの内容とからめながら、同月14日に新発売となった3種のワインのうち、赤と白スパークリングを紹介する。

トークセッション

左:グランポレール ブランドアンバサダー大越基裕氏、右:グランポレール チーフワインメーカー工藤雅義氏

トークセッションで大越氏は、まずグラスについて言及した。同会では、スパークリングワインが白ワイン用グラスで提供されたが、スパークリングワインは今や泡立ちだけでなく香りを楽しむものになっており、従来使われていたフルートグラスよりも白ワイン用グラスの方が、香りをより楽しむのに適しているのだという。

前回の記事で紹介した「余市ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール<トラディショナル・メソッド>2020」も香りが特徴的なスパークリングワインだ。同ワインについて、大越氏は「長期熟成からくるキャラメル的な複雑な雰囲気とフレッシュな香りが共存しており、期待感が上がる。また、凛とした酸味が最も大事な骨格となり、それが余韻まで伸びている。黒ぶどうからつくるブラン・ド・ノワールの特性からくるポジティブな塩気や苦みが、しっかりとした飲み応えにつながっている」とコメントした。

大越氏は、軽やかで華やかな飲み口のスパークリングワインに合う料理として、口の中ですぐに溶けるムースやタルトやシュー生地を使った料理を挙げた。香ばしさと相性が良いため、軽く揚げた揚げ春巻きやゴマを使った白和えなどにも合うそうだ。

鴨肉(右下)やパイ生地を使った料理(左下)とも好相性

「グランポレール」のブランド誕生から20周年にして、素晴らしいスパークリングワインがいきなり登場したことについて、大越氏は工藤氏にその経緯を尋ねていた。

工藤氏によると、瓶内二次発酵用の設備を導入したのは2019年で、思ったより早く良いワインが出来上がったという。醸造メンバーがシャンパーニュへ研修旅行に行き、瓶内二次発酵について学んできたこと、酸を重視して余市町のぶどう、瓶内二次発酵にするならピノ・ノワール、と選択してオーセンティックなスパークリングを目指したことが、今回の成果につながったようだ。

余市町産ぶどうの良さを込めた赤と白スパークリング

「余市ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール<トラディショナル・メソッド>2020」と共に、同社は2023年11月14日に「グランポレール 余市ピノ・ノワール<登町selection>2018」と「グランポレール 余市ぶどうのスパークリング」を発売する。

グランポレール 余市ピノ・ノワール<登町selection>2018

ワイン名にある「selection」は、余市弘津ヴィンヤードが栽培するピノ・ノワールで早く糖度が上がるクローンのうち、果実味が豊かな小ぶりの房を分けて、早めに収穫することに由来する。

その後、パンチダウン主体でマセレーションし、フレンチオーク樽で13カ月熟成する。通常、余市町産のピノ・ノワールは新樽比率10%で醸造するが、木の香りをより強めに付けて、香り全体に複雑さを出すために、このワインは60%と高比率にしている。

大越氏はこのワインについて、「酸味、タンニンが強過ぎることなく軽やかで、余韻まで果実感がある。ここに北の地域の特性、クール・クライメット(冷涼な気候)の特性が良く出ている。ピノ・ノワールはタンニンを主張しなくてもキャラクターを存分に発揮できる品種で、香りのアロマティックさが特徴。このワインは北海道らしさと熟成感が共存しており、一番飲み頃の状態」とコメントしている。

また、このワインは熟成からくる、うま味を思わせる味わいがあるため、鶏大根のように薄めの醤油で煮込んだ料理と相性が良いそうだ。ピノ・ノワールに合わせることが多い鴨は薄切りがおすすめとのこと。

「グランポレール 余市ピノ・ノワール<登町selection>2018」
ぶどう品種:ピノ・ノワール 100%
タイプ:赤、ミディアムボディ
産地:北海道余市町 余市弘津ヴィンヤード
参考小売価格:オープン価格 ※500本限定販売

味わい:ドライクランベリー、紅茶の茶葉に軽い腐葉土のニュアンス、軽やかでクリーン、きれいな熟成感が行きわたったアロマ。フレッシュな酸味と共にタイトでエレガントなテクスチャーのミディアムライトボディ。タンニンは控えめで、終始芳醇でセイヴォリーな風味が口中に広がる。
(同社資料より引用)

グランポレール 余市ぶどうのスパークリング

このワインは、同社の契約栽培農家が育てた、余市を代表するぶどう3品種をブレンドしてつくった白スパークリングだ。

ケルナーは、マスカットの香りが主体でミントやかんきつ系の爽やかな香りを含む。穏やかな酸味でフルーティーな印象。バッカスは甘い花のような香りで、糖度が上がりやすく、完熟するに伴って香りの主張が強くなる。ミュラートゥルガウは青リンゴ、ナシ、マスカットのような爽やかでみずみずしいフルーツの香りを持つ。

「グランポレール 余市ぶどうのスパークリング」
ぶどう品種:ケルナー 59%、バッカス22%、ミュラートゥルガウ19%
タイプ:白スパークリング、やや辛口
産地:北海道余市町
参考小売価格:1650円(税込) ※数量限定販売

味わい:青リンゴ、白桃、白い花の柔らかいアロマ。はつらつとしたきめ細かい泡でぶどう由来のコク、うま味がお料理の味わいを引き立てる、オフドライのスパークリングワイン。
(同社資料より引用)

ワイン産地・北海道の可能性

トークセッションの終盤では、ワイン産地として人気が高まる北海道について、その可能性や「グランポレール」ブランドがどう関わっていくべきか、工藤氏が大越氏に見解を求めた。

大越氏は、北海道が近年最もワイナリーが増えている産地であること、そして北海道のクールクライメットがポイントだろうと語った。地球温暖化の影響が懸念される中、ワイン生産国はどこも自国の中で最も涼しい産地に注目しており、日本の場合は北海道が候補に挙がる。

ただ、北海道は広いため、地域によってそれぞれ特徴が異なる。「グランポレール」のぶどうの産地となっている余市町と北斗市も、気候帯や特徴が全く違うという。次のステップとして、冷涼な北海道の中でも余市町と北斗市それぞれのテロワールの特徴を明確化する段階がくるだろうと、大越氏は見ている。

最後に大越氏は、「ワイナリー1、2軒では産地特性は出てこないが、ワイナリーが増えていけば、その産地らしさが表れ、それぞれの地域の面白さが出てくるだろう。それが今後の楽しみであり、その産地でしかつくれない味をつくっていってほしい」と述べた。

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