ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)は2024年4月18日、B to Bのブルゴーニュワイン試飲会「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」を開催した。
ハイアットリージェンシー東京(東京都新宿区)で開催した同試飲会では、12社のワイン生産者と23社のインポーターの計35社が製品の魅力をアピールした。
今回はその中から、シャブリ地区の北西部に位置するベイネ村のドメーヌ・ド・ピス・ルー(Domaine de Pisse-Loup)を紹介する。
ドメーヌ・ド・ピス・ルーとは
ドメーヌ・ド・ピス・ルーは、3世代にわたって続く家族経営のドメーヌだ。前当主のジャック・ユゴー氏は地質学者でもあり、シャブリに最適な土壌を知り尽くした、こだわりのぶどう栽培を行っている。
2020年にジャック氏の長男ロミュアルド氏が当主となり、その思想を受け継ぐ。所有する14haの畑には、シャブリとプティ・シャブリの2つのAOC(Appellation d’Origine Controlée、原産地統制呼称)が含まれる。シャブリは2つのキュヴェがあり、1つ目は手摘みのぶどうを使った「シャブリ キュヴェ・アントワーヌ」、2つ目は機械で収穫したぶどうでつくるノーマルの「シャブリ」だ。
ドメーヌ・ド・ピス・ルーのワインづくり
試飲会では、来日したジャック氏に話を伺った。
――ドメーヌの特徴を教えてください。
ぶどうの栽培から醸造、販売まで、全て自分たちの手で行っています。畑から醸造所までが近いので、収穫後すぐにプレスして醸造に取り掛かることができます。その分、ぶどうのフレッシュさを保つことができるのです。
減農薬などの自然農法を心掛けていて、薬を使う場合もなるべく環境や自然に負担のかからないものを選んで使っています。そして、ぶどうからワインになるまでの全ての製造工程で、“何も足さない、何も引かない”ことをモットーとし、ありのままの姿を引き出すことにこだわっています。
例えば、マロラクティック発酵(MLF)では、発酵が始まった後にいったん冷ましてから、再度本来の20~21℃程度まで温度を上げます。そうすると自然のマロラクティック発酵が始まります。こうやって自然の力に任せるのです。
発酵後は澱(おり)引きをして別の槽に移し、3~6カ月ほど寝かせます。取り除いた澱を味見し、非常に状態が良い場合のみ、ほんの少しだけワインに混ぜます。すると自然の酸化防止にもなり、風味も良くなるんですよ。
――おすすめのワインについて教えてください。
その時の気温や、どんな料理に合わせるかによって変わってきます。例えば「シャブリ」なら、ソースをかけた魚料理などに合います。辛口でキリッとしているので、特に夏にはぴったりです。
「シャブリ キュヴェ・アントワーヌ」はそれよりも口当たりが丸くて柔らかいので、冬ならこちらが合いますね。「プチ・シャブリ」なら、カキやエスカルゴなどと合わせるのがおすすめです。
おすすめワイン3本
シャブリ キュヴェ・アントワーヌ
手摘みしたぶどうでつくるキュヴェ。ワイン名は、現当主ロミュアルド氏の息子アントワーヌ氏から取っている。リンゴや洋ナシ、白桃などのフルーティーなアロマとフレーバーノートが特徴で、食前酒としても、カキやエビ、ホタテなどのシーフードと合わせるのもおすすめ。
タイプ:白・辛口
ぶどう品種:シャルドネ100%
参考小売価格:2890円(税込)
シャブリ
リヨンの3つ星レストラン、ポール・ボキューズやジョエル・ロブションなどで提供されている、究極の自然農法シャブリ。ぶどうを収穫後、すぐに搾って果汁の状態で置き、分離した上澄みのみを使用する。ノーマルながら、シャブリ・プルミエ・クリュ(1級畑)と同格、もしくはそれ以上のクオリティで長期熟成も期待できる。シャブリらしい酸とキレがありながらも、果実感はふっくらとしている。
タイプ:白・辛口
ぶどう品種:シャルドネ100%
希望小売価格:3800円(税別)
プチ・シャブリ
基本的な仕立てと醸造はAOCシャブリと同じだが、より石灰岩の多いポートランディアン(ジュラ紀後期)層で収穫したぶどうでつくられている。AOCプティ・シャブリならではのドライな果実感を特徴とし、ミネラルあふれる香りを持つ。
タイプ:白・辛口
ぶどう品種:シャルドネ100%
参考小売価格:3200円(税別)
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