コラム

注目される冷涼産地エルギンのパイオニア、ポールクルーバーのピノ・ノワール ~「DISCOVER SOUTH AFRICA TOKYO 2023」レポート⑩

南アフリカワイン協会(Wines of South Africa:WOSA)は2023年10月17日、年に一度の南アフリカワインの大試飲会「DISCOVER SOUTH AFRICA TOKYO 2023」を開催した。同日に2回開催したマスタークラスは、申し込み多数により抽選となるほどの大盛況となった。

同試飲会のレポートでは、19社のインポーターと6社の未輸入ワイナリーが一堂に会した中から、いくつかのワイナリーとそのワインをピックアップして紹介してする。

今回は、注目される冷涼産地エルギンのパイオニア、ポールクルーバー(Paul Cluver)だ。

ポールクルーバーとは

ポールクルーバーは、エルギン地区にある家族経営のワイナリーだ。海に近く、標高が高いエルギンは、南アフリカで最も冷涼なワイン産地の1つ。気候がフランスのブルゴーニュ地方に近いと言われており、ワイン産地として近年注目を集めている。

クルーバー家は、エルギンで4世代にわたって農業を行っていた家系だ。ワイン用ぶどうの栽培をスタートした後、1990年にファーストヴィンテージとなるリースリングをリリース。現在は、シャルドネとピノ・ノワールに注力し、“徹底した質にこだわるワインづくり”をコンセプトにワインを手掛けている。

ポールクルーバーのワイン

DISCOVER SOUTH AFRICA TOKYO 2023で出展されていたのは、「ポールクルーバー エステート・ピノ・ノワール」だ。

テイスティングコメントは、輸入元のマスダによるもの。

ポールクルーバー エステート・ピノ・ノワール 2021

マスター・オブ・ワイン(MW)のティム・アトキン氏が、2022年版レポートで93ポイントと高評価をしているワインだ。

酸を維持した果実を収穫するために、夜明け前の午前3時から収穫をスタート。発酵はナチュラルに始まり、発酵中は1日2回ほどパンチダウン(ピジャージュ。発酵中にタンク上部にたまった果皮、果肉、種などを液体に沈める作業で、発酵中のワインに空気を行きわたらせたり、色素やタンニン、香り成分などをもたらすなどの効果がある)を行っている。酸を和らげるマロラクティック発酵(MLF)後に、フレンチオーク樽(新樽率27%)で12カ月熟成している。

ブルゴーニュ産を思わせる香りと味わいで、ブルゴーニュ産のワインが高くなってしまったと嘆いている人にぜひおすすめしたい1本。

ポールクルーバーのピノ・ノワールは3種類あり、もっと深堀りしたい人には上位キュヴェの「セブンフラッグス」(参考小売価格9350円)、まずは手軽に試してみたい人には「ヴィレッジ・ピノ・ノワール」(同3080円)もある(いずれも税込)。

【テイスティングコメント】
赤系、黒系果実、土、スパイスなどの香り。フレッシュでな豊かな酸、渋み、ボディは柔らかく滑らか。果実のジュースはとてもきれいでシルキーなタッチ。心地良い滑らかさがこのヴィンテージの長所。土の風味が豊かでほんのりとオークの風味が漂う。開けたてより時間の経過を経て、よりきれいになっていく。開封から2~5日くらい時間をかけて飲むのをおすすめする。酸がしっかりしているので、牛肉(ローストビーフ)、鶏肉、豚肉、ジビエ、魚、ハード系チーズなど、さまざまな食材に合わせやすい。

Paul Cluver Estate Pinot Noir 2021
アルコール分:13.0%未満
品種:ピノ・ノワール100%
生産地:エルギン
参考小売価格:4070円(税込)
南アフリカワイン専門店マスダで見る

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ