コラム

瀧田昌孝ソムリエが解説! 進化するドイツワインの“今” ~「進化するドイツワインとモダンインディアンキュイジーヌのハーモニー」①

   

Wines of Germany日本オフィスは2024年6月、SPICE LAB TOKYO(東京都中央区)にて「進化するドイツワインとモダンインディアンキュイジーヌのハーモニー」を開催した。

当日は、パレスホテル東京 グランドキッチンのアシスタントマネジャー&ソムリエの瀧田昌孝氏が講師として登壇。ドイツワインとインド料理とのペアリングを楽しみながら、ドイツワインの最新情報について解説があった。今回の記事では、そのイベントの概要を紹介していく。

<瀧田昌孝ソムリエ>

<登壇者:瀧田昌孝ソムリエ>
2019年にGerman Wine Instituteが主催する「Sommelier Summer Class」に参加。ドイツの醸造学で最も権威のあるガイゼンハイム大学にて、世界14カ国から参加した50人のソムリエと共に1週間の研修を受けた。現在は、German Wine Academy(ジャーマン・ワイン・アカデミー)の公認講師としても活動している。

世界でも好調なドイツワイン

ドイツワインの輸出販売は好調に売れ行きを伸ばしており、2024年第1四半期(1~3月)は、前年の同時期と比べて9%増加。特に中国への輸出金額は47%増加し、オランダ、ポーランド、デンマークのほか、日本でも売上高と販売が前年同月比で2桁増を達成している。

日本で最もドイツワインを取り扱っている輸入卸のヘレンベルガー・ホーフでは、2024年は1~5月まで好調で、卸の販売量が5%ほど伸長。特に好調なのが、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)だ。同社ではその理由を、フランスのブルゴーニュワインの価格が高騰しており、また温暖化によって味わいが変化しているため、ブルゴーニュに比べてアルコール度数が控えめなドイツのシュペートブルグンダーが選ばれているからだと考えているという。

温暖化で変化していくドイツワイン

地球温暖化が進むまで、ワイン生産地の北限だったドイツ。冷涼な地域のため、完熟させてぶどうの糖度を上げることが課題とされた。しかし、ここ20年ほどの温暖化と気候変動の影響により、ドイツワインは変化しているという。

瀧田氏はお客様と接している中で、ドイツワインについて「甘い」「ちょっとカジュアル」という印象を受けている人が多いと感じているそうだ。しかし現在では、生産されるドイツワインの約50%が辛口ワインだという。

甘口ワインから辛口ワインへ

ドイツは2000年を超えるワインづくりの歴史を持っているが、2度の世界大戦によりワイン産業は大きな打撃を受けている。そのため第2次世界大戦後に目指したのは、早く収穫できて病害が少ないぶどうを使い、熟成の必要がないカジュアルなワインを輸出して外貨を獲得すること。その結果、「マドンナ」などの甘口の白ワインが、アメリカ市場を中心に世界中でヒットすることとなった。

1980年代以降は、温暖化による生産条件の変化を受けて、食事に合うワインづくりに変わっていった。ぶどうの栽培面積も、1964年から2021年までに578%も増加している。

特に生産量が増えているのが、ドイツ最南部に位置するバーデンだ。戦後に大量消費型のバルクワインをつくっていた地域だが、近年ではワイン生産者が高品質なワインを自社で瓶詰めして出しており、盛り上がりを見せている。

温暖化への対策

ドイツは、北限のワイン生産地としてぶどう栽培に苦心していた地域のため、研究熱心な生産者が歴史的に多いという。そのため、温暖化の課題にもしっかりと取り組んでいる。

かつてはぶどうの葉を切り、果実に太陽の光が当たるようにしていたが、現在では糖度の上がり過ぎや果実の日焼けを避けるために、ぶどうの葉をあえて残して影をつくる生産者も増えている。

また、ぶどうの畝の間にあるカバークロップ(下草)を除去してしまうと、土壌に日光が直接当たって地中の微生物の活動が難しくなり、地表の温度が上がり過ぎるといった問題が生じる。そのためカバークロップを残し、温度のコントロールや土壌の保水性を高めている。生産者は状況によってカバークロップを残したり除去したりしながら、温暖化や気候変動に対応しているそうだ。

また、カビ耐性があり、地球に与える影響の少ないPIWI(ピーヴィー)というぶどう品種の栽培も進めている。

進化するドイツワイン×モダンインディアンキュイジーヌ

今回のイベントでは、会場となったSPICE LAB TOKYOのシェフによるモダンインディアンキュイジーヌとドイツワインのペアリングを楽しんだ。

ペアリング1:ゼクト×前菜
ペアリング2:ジルヴァーナ×ショルバ
ペアリング3:ソーヴィーニャグリ(PIWI)×ペサラットゥ
ペアリング4:リースリング×ラッサム
ペアリング5:シュペートブルグンダー×タンドリー
ペアリング6:ロゼ×ビリヤニ

瀧田氏は今回の企画について、「われわれソムリエは、ドイツワインは日本食と合いますよ、という表現をすることがあります。それは、日本食とドイツワインが持つ繊細さやエレガンスさが同調しているからです。今回の企画は、日本食とは対極にあるスパイスがしっかり効いた料理と、繊細でエレガントなドイツワインを合わせるという内容が非常に面白いと思いました」とコメントしている。

次回の記事では、それぞれの料理とドイツワインのペアリングの詳細について、スパイスとドイツワインのペアリングのコツと共に紹介する。

また、瀧田氏により解説のあった、ドイツワインの“今”を知るのに欠かせない4つのキーワード「ゼクト」「リースリング」「シュペートブルグンダー」「ピーヴィー」についても、第3回以降の記事で紹介していく予定だ。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ