アルザスワイン委員会(CIVA)とローヌワイン委員会(INTER-RHÔNE)は2024年10月23日、東京都港区の八芳園にて、アルザスとコート・デュ・ローヌワインのセミナー&試飲商談会を開催した。
ワインビジネス従事者に向けたこの会では、ワインの知識やワインと出会う機会を提供するため、「コート・デュ・ローヌの白とアルザスの赤ワイン」「調味料から探るアルザス&コート・デュ・ローヌワインのペアリングポテンシャル」という2つのセミナーを用意し、アルザスとコート・デュ・ローヌワインの新たな楽しみ方を伝えた。
また、同時に行われた試飲商談会では、インポーター40社がそれぞれ自慢のワインを紹介し、その魅力をアピールした。
本記事では、試飲会に出品されたワインから、コート・デュ・ローヌでつくられる「フリュイ・ドゥ・リュンヌ(FRUIT de LUNE)」を紹介する。
土壌や植物の生命力を引き出すビオディナミ農法
「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」は、フランス語で「月の果実」を意味する。これは、月の満ち欠けに深い関わりを持つ「ビオディナミ」に由来する。
ビオディナミ(バイオダイナミックとも呼ばれる)はオーガニックワインの中で最も厳しい基準による農法で、1924年にオーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した。農薬や化学肥料を一切使わず、「プレパラシオン」という独自の調合剤を使用し、月の満ち欠けのカレンダーを基準に種まきや収穫のタイミングを決める。
この方法により、土壌の質が改善したり、ぶどうの樹の抵抗力が高まったりする上に、ぶどうの酸味やフレーバーのバランスが調い、より生き生きとした風味を持つワインができることが知られている。
「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」をつくるドメーヌ・デ・カラビニエ
「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」をつくるのは、南ローヌのロックモール(Roquemaure)村にあるドメーヌ・デ・カラビニエ(Domaine des Carabiniers)。現在5代目のマガリとファビアンが経営する。
このドメーヌでは1990年から有機栽培に取り組んでおり、1997年に世界最大規模のオーガニック認証機関である「エコセール(ECOCERT)」の認証を取得した。
また、2006年にドメーヌ全体をビオディナミ農法に転換し、2009年にはビオディナミの認証である「デメテール(DEMETER)」を取得している。
おすすめワイン「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」の味わい
インポーターのネクストレードEC事業部の臼井健人氏に話を聞いた。
――「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」について教えてください。
平均樹齢40年のぶどうの樹から、新鮮さや香りを保つために夜間に実を収穫し、天然酵母をベースに発酵させたワインです。
ドメーヌが複数の農家から買い集めたぶどうでつくるワインは、ぶどうの確保が容易となるため、コストパフォーマンスが良いというメリットがあります。ただし、自然派ワインの場合は、各農家への指導が必要となるため、品質の管理が難しくなります。こうした手間をかけてつくられたのが「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」です。
ビオディナミは最近のトレンドとはいえ、比較的高価なワインが多いローヌワインの中で、「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」は珍しく手頃な価格帯であるといえます。
――「フリュイ・ドゥ・リュンヌ」はどんな味わいでしょうか。
スミレやリコリスのアロマを持ち、赤い果実とスパイスのニュアンスを感じる力強いワインで、ベルベットのような滑らかな舌触りが特徴です。軽やかな飲み口ですが、グルタミン酸のようなうま味があります。
このうま味は、畑に養分としてカモミールの花をまくことから生まれるもので、これもまたビオディナミの一環として行われています。
グリルした肉やリゾット、サラダなどのほか、カツオだしを使った和食にも合うと思いますので、ぜひお試しください。
「フリュイ・ドゥ・リュンヌ 2021」(コート・デュ・ローヌ ルージュ)
生産者:ドメーヌ・デ・カラビニエ
産地:フランス、コート・デュ・ローヌ地方
色・タイプ:赤・辛口
品種:グルナッシュ50%、シラー25%、ムールヴェードル15%、サンソー10%
参考価格:3850円(税込)
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