スペインのガルナッチャ・オリヘン協会とフランスのルーションワイン委員会は2024年11月7日、東京都港区の八芳園で「ガルナッチャ/グルナッシュ プレゼンテーション&テイスティング」を開催した。
同イベントでは、両団体がEUの協力のもと共同で展開する「ガルナッチャ/グルナッシュ ヨーロッパの高品質ワインプロジェクト」の一環として、スペインではガルナッチャ、フランスではグルナッシュと呼ばれるぶどう品種についてのセミナーと、同品種でつくられたワインの試飲会を実施した。
セミナーでは、ガルナッチャ・オリヘン協会マネジャーのカロリーナ・ド・フーネス氏とルーシヨンワイン委員会ディレクター代理兼エクスポートマネジャーのエリック・アラシル氏が、それぞれの産地における特徴などを解説。また、試飲会には両国から各5ワイナリーが出展し、同品種を使ったワインの魅力をプロモーションした。
今回は、セミナー「ガルナッチャ/グルナッシュの分布や特徴」で紹介された、ガルナッチャ/グルナッシュの歴史や産地について解説する。
栽培面積の9割がフランスとスペイン
ガルナッチャ/グルナッシュは、最も古いぶどう品種の1つで、その歴史は紀元前153年にスペインの北東部、現在のアラゴン地方で栽培されたことから始まる。12世紀ごろから栄えたアラゴン王国の王フェルナンドは、ガルナッチャのワインをこよなく愛したという。ガルナッチャ/グルナッシュは同地方から東や南へ広まり、フランスの南部やコルシカ島、サルデーニャ島、イタリア南部でも長い歴史を持つ。その後、シチリア島、クロアチア、ギリシャへと伝わっていった。
乾燥した暑い気候条件でよく育つため、地中海性気候に適しており、栽培されている地域の大部分がヨーロッパの地中海沿岸に集中している。それ以外ではアメリカのカリフォルニアが最も多く、北米で2%弱、メキシコ、南アフリカ、アフリカ北部、オーストラリアなど幅広い地域に分布。さらには中国でも、同品種から派生したマルスランが栽培されている。
ガルナッチャ/グルナッシュは1990年までは世界で最も広く栽培されていたが、現在の生産量は世界で7番目、赤ワイン用の品種としては5番目となる。栽培面積の約93%がフランスとスペインに集中しており、ヨーロッパ全体の生産量の54%をフランス、46%をスペインが占める
世界で最も環境に優しいぶどう品種
ガルナッチャ/グルナッシュの樹は幹が非常に太く強いが、ゴブレまたはブッシュ・ヴァインと呼ばれる株仕立てを採用することで、強い風や日照りからぶどうを守っている。根が深く張っているため、乾燥して暑い環境でもよく育ち、病害にも強い。さらに、粘板岩、粘土と小石、花こう岩、石灰岩などさまざまな種類の痩せた土壌でもテロワールそのものを表現したワインを生み出すことができる。
樹齢が上がるにつれて自然に収量も減ることから、特にスペイン北東部やフランスのルーション(ラングドック・ルーション)地方で多く栽培されているオールド・ヴァイン(古樹)の場合、1本の樹からつくられるワインはわずか20mlという樹もあるほどだが、その分、凝縮度の高い高品質なものができる。現在はスペインやフランスを中心に、さまざまなワインメーカーがその土地ならではのテロワールの個性をしっかりと表現し、新しいアプローチでワインづくりに取り組んでいる。
次回は、ガルナッチャ/グルナッシュのもう1つの特徴である多様性について紹介する。