コラム

ピノタージュ・ファミリーとは? 代表する8本のワイン ~中村僚我ソムリエ×高橋佳子氏ミニセミナー「Uniquely South Africa」レポート③

WOSA JAPAN(南アフリカワイン協会)は2024年10月、東京(22日)と大阪(24日)にて南アフリカワインの試飲商談会「DISCOVER SOUTH AFRICA 2024」を開催した。

当日は、南アフリカワインをよりよく知るためのミニセミナー「Uniquely South Africa」を3回開催。東京会場では、銀座ロオジエの中村僚我ソムリエとWOSA JAPANプロジェクトマネジャーの高橋佳子氏が登壇した。

WOSA JAPANのInstagramより

今回の記事では、ピノタージュ・ファミリーについて解説された第3回の内容を紹介する。

ピノタージュ・ファミリーとは

ピノタージュは、1925年にステレンボッシュ大学のアブラハム・アイザック・ペロード博士によって、南アフリカで誕生した品種だ。両親であるピノ・ノワールと当時はエルミタージュと呼ばれていたサンソーを含めて、ピノタージュ・ファミリーとしている。

ペロード博士が目指したのは、ピノ・ノワールのエレガントさと、サンソーの熱に強くて水を必要とせず、病害に強い性質を足した品種。実際に生まれたのが、皮が厚くてしっかりとしたタンニンのある、どちらにも似ていないピノタージュだった。

大量生産されていた時期があり、イギリスの評論家から低い評価を受けた不遇の時代もあった。しかし近年は、その個性を見直す動きがあり、質が高まってきているとのこと。

ピノタージュ・ファミリーの南アフリカワイン8本

WOSA JAPANのInstagramより

セミナーでは、ピノ・ノワールとサンソー、そして3品種のブレンドワインが1本ずつ、中村ソムリエが「原点回帰し、さまざまなスタイルのワインが生まれている」としたピノタージュのワインが5本紹介された。

ラ・ヴィエルジュ アフェア ピノ・ノワール2022

このワインが生まれたヘメル・アン・アードは、「ヘブン・アンド・アース(天国と地球)」という意味を持つエリアだ。海の影響を強く受ける産地であり、ブルゴーニュ品種の産地として注目を集めている。高橋氏は「エレガントなブルゴーニュと間違えるようなワイン」と表現した。このピノ・ノワールは、内陸の少し標高が高いところで栽培されたものとのこと。若いエリアだからこそ、テロワールを重視してつくられているそうだ。

【中村ソムリエのコメント】
ブルゴーニュを感じさせるエレガントな香りで、果実味ののり方は南アフリカらしいです。17世紀からワインがつくられている南アフリカのワインは、ニューワールドとオールドワールドの間のような味わいがあります。コストパフォーマンスでも群を抜いているワインです。

La Vierge,The Affair Pinot Noir 2022
品種:ピノ・ノワール100%
生産地:ヘメル・アン・アード・リッジ
参考小売価格:5000円(税別)
輸入元サイト

Bヴィントナーズ ローンウルフ サンソー 2023

世界的にも珍しいサンソー100%のワイン。Bヴェントナーズ(B Vintners)は、南アフリカを代表するワインメーカーの1人である、ブルーワー・ラーツ氏が立ち上げたワイナリーだ。ステレンボッシュの単一畑のぶどうが使用されており、高橋氏は「南アフリカのサンソーの中でもトップクラス」と説明している。

【中村ソムリエのコメント】
色合いも香りも、第一印象はピノ・ノワールかと思えますが、そこに隠れているワイルドさや地中海のローズマリーのようなハーバルさがサンソーらしいです。

B Vintners Lone Wolf Cinsault 2023
品種:サンソー100%
生産地:ステレンボッシュ
参考小売価格:5800円(税別)
輸入元サイト

アタラクシア セレニティ2020

ピノタージュ・ファミリーの3品種がブレンドされた、高橋氏が“親子丼ワイン”と表現するワイン。ワインメーカーから、「グラスに注いだ瞬間に自己主張するようなワインではなく、ささやくように語りかけてくるワイン」と説明を受けたそうだ。高橋氏は、「南アフリカのピノタージュを見直すきっかけとなった1本です」と話していた。

【中村ソムリエのコメント】
このセミナーをすると聞いて、ぜひ紹介したいとリクエストしたワインです。まさに品種を足して割ったようなワインですが、ピノタージュが入ることで輪郭が加わっています。

Ataraxia Serenity 2020
品種:ピノ・ノワール、サンソー、ピノタージュ
生産地:ケープ・コースト
参考小売価格:5100円(税別)
輸入元サイト

KWV カセドラル・セラー ピノタージュ2020

2025年で生誕100周年を迎えるピノタージュ。その1本目のワインとして紹介されたのが、KWVのワインだ。ピノタージュの生みの親であるペロード博士は、その後KWVでチーフワインメーカーを務めている。セミナーでもこのワインは“元祖”として紹介されていた。

【中村ソムリエのコメント】
クラシックなピノタージュです。香ばしくて火を入れたようなトースティな味わいで、ピノタージュの皮の厚さを感じます。

KWV Cathedral Cellar Pinotage 2020
品種:ピノタージュ100%
生産地:ウエスタン・ケープ
参考小売価格:2510円(税別)
輸入元サイト

ロングリッジ ピノタージュ2022

ロングリッジは、ステレンボッシュで早くからオーガニックに取り組んでいたリーダー的存在とのこと。KWVのピノタージュと対極のスタイルであり、個性的で南アフリカらしさやピノタージュらしさ、ピノタージュの多様性を感じるワインとして紹介された。

【中村ソムリエのコメント】
ピノタージュのイメージを覆したワインです。KWVのワインと同じぶどう品種とは思えませんが、どちらにもネガティブなイメージはありません。お肉よりも、カツオのたたきとシソとポン酢のジュレなどの魚介に合わせたいピノタージュです。

Longridge Pinotage 2022
品種:ピノタージュ
生産地:ステレンボッシュ
参考小売価格:3500円(税別)
輸入元サイト

アルダリン ピノタージュ2020

こちらもステレンボッシュのピノタージュ。航空会社や高級レストランでの採用実績がある。

【中村ソムリエのコメント】
色合いは濃いめで、タンニンも骨格もしっかりしています。フィンボス(南アフリカに自生する植物)のようなハーブを感じます。アルコールもあるのに重たさはありません。

Aaldering Pinotage 2020
品種:ピノタージュ
生産地:ステレンボッシュ
参考小売価格:4800円(税別)
販売サイト
※輸入元の都光によると、定番採用アイテムだが輸入量は多くないため、気になる方はオンラインでのご購入が便利とのこと

ケージ・ワイン ミラージュ2023

日本人醸造家の佐藤圭史氏が手掛けるワイン。スワートランドの特別な畑でつくられているとのこと。セミ・マセラシオンカルボニック(全房をつぶしていない状態でタンクに入れ、下の方だけつぶれた状態で発酵させることで二酸化炭素をタンクに満たす方法)でつくられている。マセラシオンカルボニックは、ボージョレ・ヌーボーなどで使われている醸造方法だ。

高橋氏は、「ピノタージュの親がピノ・ノワールとサンソーだと思い出させてくれるワインだと感じました」と説明している。

【中村ソムリエのコメント】
チャーミングな香りです。セミ・マセラシオンカルボニックからくるキャンディのような甘やかさと、全房由来のスパイシーさが特徴だと思います。最近のトレンドを感じるピノタージュです。ピノ・ノワールのエレガントさとサンソーのワイルドさのいいとこ取りをしたようなワインです。

Cage Wine Mirage 2023
品種:ピノタージュ100%
生産地:スワートランド
参考小売価格:1万円(税別)
輸入元サイト

ヴァン・ロヴェレン・クリスティーナ・トルソー・ピノタージュ2020

ロバートソンは、ウェスタン・ケープの中では内陸に位置している産地だ。より乾燥していて、夏の気温が高くなるため、凝縮感やメリハリのあるワインが生まれる。南アフリカでは珍しい、土壌に石灰岩が含まれている産地でもある。

【中村ソムリエのコメント】
温暖で乾燥した産地であることが分かります。ぶどうの成熟感があり、熟成させても面白いです。

Van Loveren Christiena Trousseau Pinotage 2020
品種:ピノタージュ100%
生産地:ロバートソン
参考小売価格:6500円(税別)
輸入元サイト

このセミナーはWOSA JAPANのインスタグラムにて閲覧が可能だ。


【関連リンク】中村僚我ソムリエ×高橋佳子氏ミニセミナー「Uniquely South Africa」レポート
キャップクラシックの特徴と代表的な8本のワイン
南アフリカのシュナン・ブランの特徴と代表的な8本のワイン

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ