ワインなどの日用品を積んだ船が航海の途中に海底に沈むと、当然のことながら積み荷も海の底に長い間、沈んだままになってしまう。
そんなワインが数十年、時には百年以上もの時を経て引き上げられることがあるのだが、いったい海底に沈んでいたワインの味はどんなものなのだろうか。
完璧な状態で発見されたシャンパン
1998年には、ある沈没船からワインなどの積み荷が引き上げられた。その船は、第一次世界大戦中の1916年、ロシア皇帝がフィンランドのロシア軍のために向かわせたものだという。
実に80年もの間、海底に沈んでいたワイン類は、ほとんどが不良品になっていたそうだ。だが、シャンパン「エドシック・モノポール」だけは、完璧に熟成された状態で発見されて話題になった。
保存状態が良いだけではなく、古酒にありがちな開栓後の早い劣化も見られなかったという。
世界最古のシャンパン
2010年にはフィンランド沖のバルト海にて、170年前に沈んだとされるシャンパンが発見された。世界最古とも呼ばれたそのシャンパンは、現在のものに比べると糖分が3倍も含まれており、かなり甘いものだったという。
泡もきめ細かく、甘さがおいしいシャンパンだったという。また、一緒に引き上げられたワインも、熟成度が高くおいしかったそうだ。
日本には「海底で熟成させたワイン」も
沈没船から引き揚げられたワインやシャンパンがおいしくなっているという事実から、伊豆近海の海底20mで、7カ月間も熟成させたワインが存在する。
そのワインの名前はSUBRINA 。2年間かけてワインや日本酒などを海底で貯蔵して実験してみた結果、最も素晴らしい熟成をみせた南アフリカのシラーズ種を使っているという。
ただし例外もあり……
2011年には5本のワインが、バミューダに沈んだ“マリーセレスティア号”から引き揚げられた。1864年のアメリカ南北戦争のころから150年間も海底にあったと考えられている。
5本のうちの1本の試飲会が、2015年3月に米ウェストバージニア州のチャールストンで行われたワイン・フード・フェスティバルで行われた。
そのワインはグレーに変色しており、コルクの栓が閉まっていたものの、ほとんどが海水だったという。しかし、アルコール分は37%もあったそうだ。
もちろん味も期待外れ。試飲したマスター・ソムリエのポール・ロバーツ氏は、「以前飲んだ沈没船のワインは素晴らしかったが、これは違う」とコメントしている。