お店などでボトルを注文すると、卓上用の容器に移してくれることがある。この卓上用の容器を「デキャンタ」と呼び、移し替える行為を「デキャンタージュ」と呼ぶが、自宅でワインを楽しむときにもデキャンタージュした方がいいのだろうか?
デキャンタとは
「デキャンタ」とは、主にガラスでつくられたフタ付きの食卓用瓶のこと。ワインの澱の除去や酸化を促す目的で、ワインを飲む前にデキャンタグラスに移し替えておくことがある。
日本語では「デキャンタ」ではなく「デカンタ」と表記されることもある。ただし、英語表記でのスペルはどちらもdecanterとなり、同じものを指している。
比較的若くて安いワインでは、蓋のついていない食卓用瓶「カラフェ」で提供されることもある。カラフェはいわゆるピッチャーのように使う容器だ。ワイン以外にも使えるため、自宅にあっても重宝するだろう。
デキャンタージュすべきワインとその理由
デキャンタージュする理由・意味は、ワインの種類によって異なってくる。
≪成熟したワイン≫
成熟したワインをデキャンタージュする理由・意味は、澱(おり)を除去して心地よいタンニンにするためだ。
澱(おり)とは、主にヴィンテージの赤ワインやポートワインが熟成を経て生じるもの。色素成分やタンニンが結合してできる。
赤ワインだけでなく、ヴィンテージの白ワインでもミネラル成分が結合してできることがある。
≪若い赤ワイン≫
熟成感が足りない若い赤ワインをデキャンタージュする意味としては、空気に触れさせることで熟成を促進できる点が挙げられる。香りを華やかにして、味の複雑さやまろみを引き立たせる効果がある。
特に10年経っていない若い赤ワインは、デキャンタージュした方がよりワインの魅力を味わえるようになるだろう。
≪ボルドータイプのワイン≫
赤ワインの中でも特にボルドータイプは、デキャンタージュすることで味わいもマイルドになり、香りもよくなると言われている。
また、2016年3月27日付のDecanterの記事「When to decant white wine – ask Decanter 」では、ボルドーの人々はドライな白ワインをデキャンタージュすることを紹介している。
≪冷やし過ぎたワイン≫
また、デキャンタに移すことで、ワインの温度を上昇させる効果も期待できる。ただ、「冷やし過ぎたから」とデキャンタに移し替える場合には、次項の「デキャンタージュしてはいけないワインではないか」と確認すること。さらに酸化し過ぎないためにも、その日のうちに飲み切ることがポイントだ。
デキャンタージュに向いていないワイン
ここまでに紹介したワインはデキャンタージュに向いているワインだが、向いていないワインもある。デキャンタージュしない方がいいワインとは、酸味の強いワインだ。
一般的にブルゴーニュタイプのものは、デキャンタージュに向いていないと言われている。特にピノ・ノワールは、デキャンタージュすることで魅力を失ってしまうので要注意だ。
デキャンタの使い方
デキャンタに移し替えるのにも、ちょっとしたコツがある。いずれのタイプの場合も、開栓した後に、ボトルのネックをきれいに拭いてからデキャンタージュするのがポイントだ。
≪若い赤ワインの場合≫
若い赤ワインの場合には、澱を気にしなくていい。できるだけ空気に触れられるように、デキャンタにボトルを立てるようにして、一気に注ぐようにしよう。注いだ後にはスワーリング(デキャンタの中でぐるぐるとワインを回すこと)して、空気と触れ合わせよう。
≪熟成したワインの場合≫
熟成したワインをデキャンタージュする場合には、あらかじめボトルを1日程度立てて置いておこう。澱をボトルの底にあるくぼみに貯めておくのが目的だ。
そう考えると、パーティなどにデキャンタージュした方がいい成熟したワインを手土産として持参する場合には、当日持ち込むのではなく、事前に送っておいて保管をお願いした方がより快適にワインを楽しめるだろう。
熟成ワインを扱うときには、できるだけ静かに抜栓しよう。デキャンタに澱が入らないようにゆっくりと、途中でネックを上げ下げせずに注ぎ入れるのだ。ボトルの中のワインが残り半分になったら、より慎重に注ぐようにしよう。
ボトルのネック部分に澱(おり)が見えたら、そこが注ぐのをやめるポイントだ。澱がはっきり見えない場合には、色が濃くなったり濁ったりするのが目安となる。
ソムリエでも澱にすぐ気づけるようにネック部分を下からライトで照らし、注意しながら注ぐ、なかなか神経を使う作業だ。
デキャンタージュすることで温度が上がるので、必要に応じてアイスバケツを用意しておくといいだろう。
飲むタイミングは?
注ぐのより難しいのは、デキャンタに注いだ後に飲むタイミングの測り方だ。
一般的には年代が新しいものは長くて2時間程度、古いものなら20分程度経ったら飲みごろだと言われている。なかなか判断は難しいだろう。
始めのうちはそれほど堅苦しく考えず、飲んでいくうちに表情を変えるワインを楽しむつもりで、あまり飲むタイミングにこだわらず、いろいろと試してみてもいいかもしれない。
特に若いワインの場合には酸化が進み過ぎてしまいがち。デキャンタージュをしたその日のうちに飲み切るのもポイントだ。
デキャンタの選び方
デキャンタにはいろいろな形やサイズがある。
若いワインを飲むことが多いのなら、空気と触れ合わせやすいデキャンタを選ぶといいだろう。スワーリングしやすい下ぶくれのデキャンタがお薦めだ。
成熟したワインを飲むことが多いのなら、逆に空気との接触面積が小さくなる縦長のデキャンタを使うといいだろう。
レストランなどでは面白い形のデキャンタを使用しているところもある。しかし家庭で使うとなると、洗いにくく収納もしにくい。家庭で使うのなら、スタンダードな形のものを選ぶのが賢明な判断だと言える。