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現在日本で製造されているワインには、国産ぶどうのみを使用したものと、輸入濃縮果汁や輸入ワインを原料としたものが混在している。
そこで国税庁では、消費者が適切にワインを選べるようにするため、2015年10月30日にワインラベルの表示ルールを策定した。
そのうちのひとつが、国産ぶどうのみを原料とするワインに許される「日本ワイン」という表示だ。輸入濃縮果汁や輸入ワインを原料としたものは、裏ラベルの原材料名に「濃縮還元果汁」などの表示が義務付けられることとなる。
ラベルの変更は2018年10月30日までという猶予期間が設けられているが、このルール策定を受けて国税庁が行った「国内製造ワインの概況」に関する調査結果によって、“国産ワイン”の意外な現状が明らかになった。
4.4%の業者でシェア85.7%を占める
同調査に回答したのは、2016年3月末時点でワインを製造している261業者のうち247業者だ。
回答した247業者を見ると中小企業の割合が高く、239業者(96.8%)となった。製成数量が1000klを超えている業者数は、全体の4.4%にすぎなかった。だが、その4.4%でシェアの85.7%を占めている。
「日本ワイン」と名乗れる国内製造ワインはわずか18.4%
同調査を詳しく見ると、2015年度に国内で製造されたワインの総量は、約10万921kl。そのうち「日本ワイン」に当てはまるワインは、約1万8613kl(18.4%)にとどまった。
原料使用状況を見ると、全体の8割に当たる100kl以下の業者では、国産生ぶどうの使用割合は99.3%。製成数量が多くなるほど輸入濃縮果汁の使用割合が高くなり、5000kl以上の業者では、輸入濃縮果汁の使用割合が95.1%となっている。
5000kl以上の業者は5社で全体の2%でしかないが、シェアは74.6%を占める。こうした大手メーカーが「日本ワイン」に関する国税庁のラベル表示基準で影響を受けることになりそうだ。
「日本ワイン」は国内流通量の4%未満
また、国内市場におけるワインの流通量の構成比の推計を見てみると、輸入分は全体の70.3%を占める。国内分は全体の29.7%となり、そのうち「日本ワイン」の基準に当てはまるものは、3.7%にとどまっている。
ラベルも国際基準へ
今回策定されたラベルの表示基準は、国際的なルールを踏まえたものでもある。他にも次のようなルールが定められることになった。
地名を表示できるケース
・日本ワイン(国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒)であること
・地名が示す範囲で収穫されたぶどうを85%以上使用していること
ぶどうの品種名を表示できるケース
・単一品種を85%以上使用した場合は、単一品種の表示OK
・二品種合計で85%以上使用した場合は、二品種の表示OK
・三品種合計で85%以上使用した場合は、三品種の表示OK
ヴィンテージを表示できる場合
・その年に収穫されたぶどうを 85%以上使用していること
一連のルール策定により、日本ワインの国際的な認知度向上が見込めるようになるのではないかと期待されている。
「国産ワイン」表示は姿を消すことに
今までは業界の自主ルールしかなく、国産生ぶどうを使ったワインも、輸入原料を使ったワインも「国産ワイン」として販売できていた。現在は、すでにワインのラベルを新基準にしている業者もあれば、未対応の業者もある状態だ。
2018年10月30日以降は、「国産ワイン」という表示は姿を消し、「国内製造ワイン」へと統一される。
消費者にとっても、「日本ワイン」を製造している多くの中小企業にとっても、今回のラベル基準の策定は、ありがたいものだと言えるかもしれない。
まとめ:「日本ワイン」と「国産ワイン」の違いとは
一見違いの分かりにくい「日本ワイン」と「国産ワイン」だが、主に異なっている点は次のとおりだ。
「日本ワイン」
・国産ぶどうを100%使用して、国内で製造したワイン
・表ラベルに「日本ワイン」と記載可能。また、条件に合えば「地名」「ぶどう品種」「ぶどうの収穫年」を記載できる
「国産ワイン」
・「日本ワイン」の他に、輸入したバルクワインや濃縮果汁などの海外原料を使用して、国内で製造したワインも「国産ワイン」と名乗れる。製造の過程で国産ぶどうなどとブレンドされることもある
・2018年10月30日以降は、「国内製造ワイン」表記に。「濃縮果汁」または「輸入ワイン」を使用している場合は、表ラベルにその旨を必ず記載する
・「酸化防止剤無添加」「ポリフェノールたっぷり」「低アルコール」など、特徴のあるワインも多い
2018年10月30日以降のワインのラベル表示の区分は、下記の3つに分かれることになる。
1. 日本ワイン
2. 国内製造ワイン:日本ワイン+海外原料を使用して国内で製造されたワイン
3. 輸入ワイン
区分を明確にすることで、「日本ワイン」のブランド力を高めていく狙いだ。一方で、海外の原料を使用して国内で製造するワインの需要も高く、今後も日本ワインと同様に「国内製造ワイン」に力を注いでいく国内メーカーは少なくないだろう。
<関連リンク>
果実酒等の製法品質表示基準について(ワインのラベル表示のルール)