新しいワインと出会ったとき、ラベルに書かれている情報をチェックして購入するかどうかを決めることになるだろう。中には、その場でワイナリーのホームページまでチェックする人もいるかもしれない。
そうして収集したワインに関する情報の量が、消費者の行動を左右することはあるのだろうか。
そんなことを調べた調査結果が、5月25日付の学術誌「Food Research International Australia」にて報告されている。
与えられた情報量による影響を調査
豪アデレード大学のSchool of Agriculture, Food and Wineの研究チームは、日常的に白ワインを飲んでいる126人に、3種類(シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン:いずれもオーストラリア産)の白ワインを試飲してもらった。そして事前に与えた情報量によって感情や好み、支払意思額(willingness-to-pay:WTP)が影響を受けるかを調査した。
事前に与えた情報量は次のとおりだ。
試飲第1回目:情報なし
試飲第2回目:基本的な情報(官能の説明)/詳細な情報(基本的な情報に加え、ワインの品質やワイナリーについて)
試飲第1回と第2回の間は、最低でも1週間以上あけている。
情報量が多いほど高評価に
情報のない状態で試飲をした第1回目と比べて、詳細な情報を与えられた第2回目の方が、支払意思額が高く、より多くのポジティブな感情が挙げられたという。
また試飲第2回目では、試飲の前、情報を提供した段階で、「好きそうかどうか」を聞いてみた。すると、情報量が多いほど、好意的な反応を示す人が多くなった。
つまり事前に与えられる情報が多いほど、試飲の前から好印象を抱きやすく、試飲後にポジティブな感情を抱えやすいことが判明した。さらに消費者の「支払ってもいい」と思う金額が高くなるという結果になった。
同研究チームは「詳細で正確な説明が重要であるということだけではなく、情報が消費者の経験や行動に影響を与えることが強調された」と締めくくっている。
また、研究チームの一員であるLukas Danner博士は、6月7日付のアデレード大学のプレスリリースにて、「味わいについての説明以上の情報が必要だと分かったことは、ワインの生産者や提供者にとって重要な意味合いを持つ」と、コメントしている。
オーストラリアらしい調査?
ワイン新興国として知られているオーストラリア。アデレード大学のある南オーストラリア州はオーストラリアの一大ワイン産地でもある。
アデレード大学では、ワインビジネスで学位を取ることも可能だ。今回の発表は、ワインの醸造学だけではなく、ワインビジネスにも力を入れているオーストラリアらしい調査報告だといえるかもしれない。