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イタリアワインを語る上で欠かせない「スーパータスカン(スーパートスカーナ)」と呼ばれるワインたちがある。
「スーパータスカン」とは、ワイン法の枠にとらわれず本当においしいワインを追求するため、1970年代以降にイタリア・トスカーナ地方で起こったムーヴメントの中でつくられたワインを指す。
そんなスーパータスカンの代表格とも言えるのが、トスカーナ州におけるカベルネ・ソーヴィニヨン栽培の可能性を大きく前進させた偉大なワイン「サッシカイア」だ。
スーパータスカンを取り上げていく本シリーズ、第1回目はサッシカイアが生み出された経緯や特徴についてご紹介していこう。
無類のボルドー好きオーナーがもたらした奇跡
サッシカイアはトスカーナ州ボルゲリにあるワイナリー「テヌータ・サン・グイド」が手掛けるワインだ。サン・グイドの先代オーナー、マリオ・インチーザ侯爵と、ボルゲリ領主の娘が結婚したことで、インチーザ家はボルゲリの広大な畑を引き継ぐこととなった。
マリオ・インチーザ侯爵は、ボルドーワインに心酔するワイン好き。1944年にはシャトー・ラフィットを所有するロスチャイルド家からカベルネ・ソーヴィニヨンの苗を譲り受け、栽培を始めて自家用ワインに利用するようになった。
この自家消費用ワインが、1960年代に大評判となった。そこで侯爵は、イタリアの有名なワイナリー「アンティノリ」から醸造家ジャコモ・タキス氏を招き、このワインの生産を拡大する。こうして販売用のサッシカイアが誕生したのだ。
1978年、英デキャンタ誌のブラインド・テイスティングにおいて、シャトー・マルゴーなど名だたるワインを抑えてサッシカイアが「ベスト・カベルネ」の座に輝いた。1985年には、イタリアワイン初のパーカーポイント100点を獲得する。
サッシカイアの快進撃はその後も続いたが、トスカーナの規定から外れたワインであったため、長い間、格付ではDOC外の下位ワインとして販売されてきた。しかし1994年、「ボルゲリ・サッシカイア」というDOC呼称を得ることになる。単独のワイナリーがDOCとなった初めてのケースだった。
カベルネ・ソーヴィニヨンに最適な土地
「サッシカイア」とは、方言で「石の多い土地」という意味を持つ。石が多く水はけの良いボルゲリ・マレンマの土壌は、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に理想的だ。
温暖な気候と十分な日照量があり、昼夜の気温差も大きい。起伏に富む広大な土地の中にはさまざまなミクロクリマが発生するが、その中のベストな区画のみをいくつかチョイスして栽培している。
飲み頃の長さが特徴
サッシカイアはリリース直後でも、また10~20年と熟成させてもおいしく飲めるワインだ。
赤・黒果実のはつらつとした果実感や芳しさと、肉厚ながらもしなやかなタンニンのバランスが素晴らしい。ボルドー・メドックの赤をほうふつとさせる骨格やゴージャスさに加え、トスカーナらしい明るさを感じる味わいだ。
サッシカイア(テヌータ・サン・グイド)のおすすめワイン銘柄
サッシカイア
「スーパータスカン」というトスカーナ新時代の扉を開けた偉大なるパイオニア。若い時期も飲めるが、熟成によりさらに深遠な世界をのぞき見ることができる。
グイダルベルト
「早くから飲むことができるサッシカイア」というコンセプトでつくられるセカンドワイン。カベルネ・ソーヴィニヨン4割に対してメルローを6割使用。なめらかな口当たりが特徴だ。
レ・ディフェーゼ
こちらはカベルネ・ソーヴィニヨンにサンジョヴェーゼをブレンドし、トスカーナらしさを感じさせるサードラベル。ふんだんな果実味により、親しみやすい味わいを実現している。