世界をうならせるワインをつくる日本人を紹介する本シリーズ、今回はフランス・ブルゴーニュ地方のジュヴレ・シャンベルタンでワインづくりを手掛ける仲田晃司氏にスポットライトを当てたいと思う。
神が認めたブルゴーニュをつくる日本人
仲田晃司氏は、ワインマンガ『神の雫』にも登場したことがある醸造家だ。
1972年に岡山県で生まれ、大学生の時にアルバイト先のフレンチレストランでワインと出会い、ワインづくりを志すようになった。
1995年にフランスへ渡り、フランス語を学びながら各地のワイン生産者の下で醸造の修行を積む。1999年には、ボーヌの名門ワイン学校「CEPPA」で学位を取得したほどの努力家だ。
そして2000年7月7日に、ブルゴーニュ地方のニュイ・サン・ジョルジュにおいて、自身のワイナリー「メゾン・ルー・デュモン」を設立。自身で醸造を始めた。
2003年には、ジュヴレ・シャンベルタンにメゾンを移転。そのお披露目パーティーには、スペシャル・ゲストとして故アンリ・ジャイエ氏が招待されていた。ジャイエ氏は、「ブルゴーニュの神様」と呼ばれた天才醸造家で、1995年にワインづくりの一線から引退した後も、同氏の発言は大きな影響力を持っていた。
自身の影響力を考え、他人のワインについて評価をしないことで知られていたアンリ・ジャイエ氏だったが、そのパーティーで仲田氏のワインを大絶賛したのだ。
このことは瞬く間に知れ渡り、「神が認めたブルゴーニュ」として仲田氏のワインは世界中で知られるようになった。
アジアの架け橋に! アジア各国で販売されるルー・デュモンのワイン
仲田氏のワインづくりは日本の職人気質がよく表れていると評される。
徹底的に細部に至るまでこだわり抜き、テロワールなどを熟慮した上で、樽を選定したり熟成方法を工夫したりしてワインをつくり上げているからだ。そのため、仲田氏のワインは非常に繊細な味わいとなっている。
ルー・デュモンが産するワインのラベルには、「天 地 人」と漢字で描かれている。「ワインのおいしさは天候と土壌と育てる人によって育まれる」という仲田氏の理念とともに、「日本人であること」、「自然と人間に対する真摯な尊敬の念」を象徴するものとして、この3文字が描かれているという。
日本の職人気質な仕事ぶりで仕上げたワインを、自然と人間への畏怖の念を示したワインボトルに詰める仲田氏。
仲田氏は、そのワインを通じて「アジアの架け橋になれればと願っている」という。現在、仲田氏のつくるワインは、フランスや日本だけでなく、韓国や、台湾、中国、シンガポールといったアジア諸国を中心に販売されている。
「高級ワイン」ではなく「飲んでおいしいワイン」を!
2008年には念願であった自社畑も手に入れ、さらに自社カーヴも醸造所に併設した仲田氏。「神が認めたブルゴーニュ」として評価されてからもビオロジックを採用したぶどう栽培などさまざまな取り組みを試し、新進気鋭の造り手として世界で高く評価されている。
ワインの品質も、製造方法も高く評価されている仲田氏だが、同氏は「高級ワイン」ではなく「飲んでおいしいワイン」をつくることをモットーとしている。そのため、有名になり、高い評価を得るようになった今でも、みんなに飲んでもらえないような値段のワインはつくっていない。
フランスに拠点を持ちながらも日本人らしさを大切にし、その日本人らしさがつまった手頃なワインで、日本やアジア諸国の人たちを楽しませ架け橋になりたいという仲田氏。世界で活躍する日本人の1人として、覚えておいてもらいたい。