キリンホールディングスは2024年3月27日、メルシャンのシャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤードで、農研機構との新たな共同研究を開始すると発表した。ぶどう畑の生物多様性評価の高度化と、気候変動の緩和策である炭素貯留効果の評価に取り組む。
キリングループは、2022年7月に「環境報告書2022」において、世界に先駆けてTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が提唱する「TNFD LEAPアプローチ」を踏まえた自然資本の試行的開示を実施。2023年7月には「環境報告書2023」を公開し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とTNFD案に基づいた統合的な環境経営情報を開示するなど、生物多様性を含む“自然資本に関する取り組み”を加速させてきた。
2014年からは、長野県上田市丸子地区陣場台地の椀子ヴィンヤードの生態系調査を農研機構と共同で行い、2023年10月に環境省から自然共生サイトに正式認定された。また、遊休荒廃地を垣根仕立て・草生栽培による日本ワインのためのぶどう畑にすることで、良質で広大な草原を創出。この草原で、環境省のレッドデータブックに掲載されている絶滅危惧種を含めた多様な生態系を育むことが明らかとなった。
これらの実績をベースとし、椀子ヴィンヤードで豊かな生態系が回復・維持されることによる生態系への貢献の分析・評価を進める。また、草生栽培が高品質なぶどうの安定した栽培に寄与できる可能性、ヴィンヤードで剪定した枝などの剪定残渣を活用したバイオ炭による炭素貯留効果の評価などにも取り組む。加えて、環境再生型農業の可能性についての知見も積み上げていく予定だ。