コラム

シャトー・ディケム 1921年――世界最高の貴腐ワインの中でも“間違いなく最高”[20世紀を代表するワイン]

   

Wine Spectatorが1999年1月に発表した「Wines of the Century(20世紀を代表するワイン)」。20世紀にリリースされた数多くのワインの中から、厳選された12本のワインを1本ずつ紹介していく。

Wine Spectatorに選び抜かれた12本とは、一体どんなワインなのだろうか。第2回となる今回は、シャトー・ディケム1921年を取り上げよう。

「シャトー・ディケム1921年」はどんなワイン?

フランス・ボルドーのソーテルヌ地区にあるシャトー・ディケムは、世界最高の貴腐ワインのつくり手として知られている。ソーテルヌの格付けにおいて、「プルミエ・クリュ・シュペリュール(特別第一級)」にランクされている唯一のワイナリーだ。

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ロバート・パーカー氏はボルドー第4版の中で、シャトー・ディケムの貴腐ワインは飲み頃になるまで15~20年の年月がかかり、偉大なヴィンテージであれば、50~75年以上も「新鮮で退廃的な芳醇さを備え続けるだろう」としている。

1921年のヴィンテージは、厳しい日照り続きの天候に見舞われ、さらに発芽期間中の霜は、収穫高に影響を与えた。9月1日に38mmの雨が降ったことがボトリティス・シネレア(貴腐菌)の繁殖を引き起こし、通常よりも1カ月ほど早い時期から長期間かけて収穫されたという。セパージュはセミヨン80%、ソーヴィニヨン・ブラン20%。

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「シャトー・ディケム1921年」に対する評価

Wine Spectatorは、シャトー・ディケムには素晴らしいヴィンテージがいくつもあり、その中でも「1921年が間違いなく最高」と結論付けた。

「濃縮されて厚みがあり、たっぷりとした甘さが口の中に広がるワイン。今飲んでも素晴らしいが、50年もしくはそれ以上経ってから飲んでも、間違いなく素晴らしいだろう」とシャトー・ディケム1921年を表現している。

ロバート・パーカー氏も100点をつけており、著書『世界の極上ワイン』の中で次のようにコメントしている。

私がかつて飲んだことのある最も偉大なイケムは1921年だった。驚くほど新鮮で生き生きとしており、その賛沢さと豊かさは決して忘れることはないだろう。

ただし、Wine Spectator編集主任のハービー・ステイマン氏は、1921年ヴィンテージに対する評価を97ポイントにとどめている。

同じシャトー・ディケムでも、1929年のヴィンテージには100ポイント、1847年には99ポイント、1874年には98ポイントを付けている。また、1989年ヴィンテージにも同様に97ポイントを付けている。

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「シャトー・ディケム1921年」にまつわるエピソード

発売当初は5ドルだったという、シャトー・ディケム1921年。2018年1月時点でのWine Searcherの平均価格は8112ドル(約91万円)となっている。

1921年のヴィンテージに限らず、シャトー・ディケムに“安い”という言葉は似合わない。その理由は、1本のぶどうの木からグラス1杯のワインしかできないとされるほど、妥協を許さないワインづくりをしているからだ。

高い品質を保つため、通常6~8週間かけて150人もの摘み手が完全に熟したぶどうのみを収穫。摘み手が収穫のために畑を見る回数は、4~11回ほどだという。

ワインは新樽で、3年以上をかけて熟成されるのだが、この時点で20%が蒸発してしまう。また、ぶどうの出来によっては、1910年、15年、30年、51年、52年、2012年のように、ワイナリーの名前でワインが販売されないこともある。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ