コラム

シャトー・ムートン・ロートシルト 1945年――誕生から半世紀以上経っても色あせない。終戦の年に生まれたワイン[20世紀を代表するワイン]

Wine Spectatorが1999年1月に発表した「Wines of the Century(20世紀を代表するワイン)」。20世紀にリリースされた数多くのワインの中から、厳選された12本のワインを1本ずつ紹介していく。

Wine Spectatorに選び抜かれた12本とは、一体どんなワインなのだろうか。第6回となる今回は、シャトー・ムートン・ロートシルト 1945年を紹介していく。

Ch. Mouton Rothschild 1992

「シャトー・ムートン・ロートシルト 1945年」はどんなワイン?

ボルドー5大シャトーの1つであり、最も華やかなイメージを持つシャトー・ムートン・ロートシルト。そのワインは「25年以上の熟成を経て真価が表われる」とも言われている。ファーストラベルは、とりわけ華やかでアーティスティックなイメージを持たれている。

シャトー・ムートン・ロートシルトはボルドー地方のAOCポイヤックに畑を保有する。ジロンド川に面したポイヤックの土壌は、川によって運ばれ沈積した肥沃な沖積土。水はけがよく、鉄分や泥灰土が多いことが特徴だ。

第2次世界大戦が終わりを告げた1945年は、ボルドー全体の当たり年となった。冬の寒さが収穫量を減少させた代わりに、濃縮な味わいを生み出した。

ぶどうの育成期の天候は、暖かくて日差しにも恵まれて乾燥していた。8月の終わりには、日中は32℃前後で、夜になると10℃程度まで冷え込む日が数日間続いた。収穫は早い時期にスタートしたという。

1945年は、シャトー・ムートン・ロートシルトのワインを彩るアートラベルが始まった年でもある。1945年のラベルは「Victory」のVの文字が目立つデザインだった。以降、ミロやピカソ、シャガールといった著名な芸術家たちが、ワインと引き換えにラベルのデザインを手掛けてきた。

Château Mouton Rothschild, Pauillac

「シャトー・ムートン・ロートシルト 1945年」に対する評価

シャトー・ムートン・ロートシルトの1945年ヴィンテージには、ロバート・パーカー氏が100点満点を付けた。他にもオーストリアの雑誌「Falstaff Magazin」が2006年に、ワイン情報サイト「The Wine Cellar Insider」のJeff Leve氏が2009年に、どちらも100ポイントを付けている。

ワインを1つの美術品として考えていた元オーナーのフィリップ・ド・ロートシルト男爵は、「このワインが飲みごろを迎えるのは2000年だ」と語ったという。

98ポイントを付けたWine Spectatorによると、その味わいは「独特なミントやカシスの香りと味わい、熟した果実と丸みを帯びたタンニンのバランスが程よい」とのこと。

1945年当時は、「当主がフランス人ではない」という理由でメドック2級にとどまっており、1級に格上げされたのは1973年だった。「この178エーカーほどのポイヤックのワイナリーは、常に最高のワインを生み出してきたことを、この1945年は証明している」とWine Spectatorは表現している。

「シャトー・ムートン・ロートシルト 1945年」にまつわるエピソード

フィリップ・ド・ロートシルト男爵は1995年、ボルドーで2年に1度開催されているVinexpoにて、数百人の記者やゲストを集めてこのボトルを開けている。

コルクが抜かれると、会場は魅力的な香りで包まれたそうだ。
Ch Mouton Rothschild

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ